スペイン紀行(前編)

      2017/01/11

10数年来の夢がかなったスペイン行

 セゴビアにあるローマ時代の水道橋に魅せられて10数年が経つ。行くチャンスは2回あった。1度は、マドリッドで高速鉄道の爆破テロがあってキャンセル。1度は、航空ストでツァーの日程が1日短縮され、セゴビア観光が犠牲になった。ようやくこの4月下旬、念願の旅が実現した。
 21日朝5時に我が家を発って、伊丹から羽田、ドイツのミュンヘンを経由し、バルセロナのホテルに着いたのは夜10時半。時差は7時間。24時間半の長旅であった。

 未完のサグラダ・ファミリアがついに完成?

 翌22日、観光客が押し寄せる前の9時半、サグラダ・ファミリア(聖家族教会)へ。ゆっくり写真を撮ることができた。134年前にビヤールが着工し、ガウディが引き継いで、今なお建築中。工期はあと150年と言われていたが、コンピュータの発達と3Dプリンターの誕生で大幅に短縮された。10年後の2026年に完成する。

◆サグラダ・ファミリア内のステンドグラス

◆サグラダ・ファミリア外観

◆キリストの生誕を描いた「生誕のファサード」

 18本の鐘楼の1つ受難の塔にエレベーターで昇る。前日は大雨で閉鎖されたという。展望台からはバルセロナの市街が一望できる。7~8年前に来た友人は、教会内は建築資材が散乱し、土埃まみれで落胆したと言っていたが、今は、きれいに整備され、多くのステンドグラスが嵌め込まれて、人々はその美しさに感嘆の声をあげる。石で聖書を刻むというガウディの構想のもと、現在、日本人が主任彫刻家として手仕事で彫刻群を彫り続けている。
 スペインの北東部カタルーニャ地方に位置するバルセロナは、スペインで最も人気のある芸術の街。ガウディの彫刻群、ピカソやダリ、ミロなどの作品が揃う美術館がひしめく。中世から変わらない街並みと自由さは世界中の観光客をひきつける。ローマ時代に起源をもつゴシック地区にある13~5世紀に建てられたカテドラル(大聖堂)の荘厳さと内部の美しさには脱帽。カタルーニャ音楽堂の華麗さといいスペイン建築を見直さざるを得ない。コロンブスがアメリカ大陸発見後、イサベル女王に謁見した王の広場にも感動。

 長寿で底抜けに明るいスペイン人

 スペインは、国土が日本の1.33倍、人口4700万人。カタルーニャ州は、ベルギー並みの面積とスイス並みの人口750万人を擁し、デンマーク並みの経済規模を誇る。1977年に自治権を獲得し、その後も独立運動が続いている。平均寿命が83歳の長寿の国。①よくしゃべり、②他人の話は半分も聞かずにストレスをためず、③オリーブオイルをよく食べるからだという。物価が安く、LCC(格安航空)を利用すれば、ロンドンから来てもバルセロナの方が安く週末を過ごせる。経済危機もどこ吹く風、スペインの人々は抜ける青空の如くどこまでも明るい。

◆左:スペインの居酒屋「バル」

◆上:生ハム料理

 妻の笑顔が輝いた「サンジョルディの日」

 3日目は、ガウディのグエル公園へ。色鮮やかな破砕タイルのベンチやトカゲの噴水などが美しい。グラシア通りには、ガウディ設計の世界遺産ミラ邸、バトリョ邸が街並みに溶け込んですばらしい景観を呈している。
4月23日は、男性が女性にバラの花(愛)を、女性が男性に本(知)を贈る日とあって、街のそこここに花売りのスタンドや本の露店が出ている。街角でバラの花を模したチョコレートをプレゼントされた家内は思わずにっこり。昼食のショートパスタのパエリアが何とも美味しい。アルハンブラビール2ユーロ(260円)に対しオレンジのフレッシュジュースは3ユーロ。
 午後に訪れたタラゴナは、イベリア半島で最初にローマ帝国の植民地になった町。紀元1世紀築造のラスファーレス水道橋が、郊外の丘陵地の森に忽然と現れる。高さ27m。狭いが歩いて渡れる。

 イスラム芸術の最高傑作「アルハンブラ宮殿」へ

 4日目は543㎞の大移動。1列3席、飛行機のビジネスクラス並みのVIPバスで、思ったほど疲れず。夕方にはグラナダ着。グラナダはスペイン最後のイスラム王朝、ナスル王国が築かれた町。1492年キリスト教徒に奪回されるまでの250年間繁栄を極める。
 5時過ぎから、藤や色とりどりの草花が咲き乱れ、オレンジがたわわに稔るヘネラリフェ庭園を巡り、イスラム芸術の最高傑作アルハンブラ宮殿へ。噴水や水路が随所に見られ「水の宮殿」とも呼ばれる。彫刻がすばらしい。この季節9時頃まで明るく目いっぱい観光が楽しめる。

◆グラナダの街

◆ヘネラリフェ庭園

 夕食後、10時からフラメンコショーへ。ギターの伴奏で老女が歌い、男女各2人組のダンサーが交互に激しくタップを踏みながら舞い、踊る。客席に汗が飛び散って来るのではと思うほど。帰途ライトアップされたアルハンブラ宮殿を見る。美しい夜景は、いつまでも目に残る。

後編に続く。

上:ライトアップされたアルハンブラ宮殿

左:昼間のアルハンブラ宮殿

 - コラムの広場