エジプト紀行(後編)

      2017/03/27

 

サハラ砂漠に現れた幻のオアシス

 4日目には、高さ111m、長さ3600mのアスワンハイダムへ。ナセル湖は500㎢の広大な人造湖。ピンクのブーゲンビリアの花が満開。コンボイ(ポリス)の先導で3時間のサハラ砂漠ドライブ。
時折、あるはずのない湖が現れる。蜃気楼である。砂漠の砂を記念にペットボトルに詰める。

写真:いにしえの旅人たちを惑わせた蜃気楼

写真:アブシンベルのホテル

 夕方、アブシンベル神殿へ。暗くなって音と光のショーが始まる。観客の大半は日本人。ナレーションも日本語。退屈で居眠りしてしまう。

写真:2枚とも夜のアブシンベル神殿

 観光5日目の早朝、アブシンベル神殿の光の奇跡(ラメセス・デイ)を見る。暗い中、寒さに震えて出発。6:22太陽の光が神殿最深部の神像に当たる。本来4体のうち3体に当たるのだが、神殿がアスワンハイダム建設の水没から逃れるため60m上部に移築された時、少しズレて1.5体に当たるようになった。年2回、僅か7分のショーである。ガイドの機転で一番早く神殿に入り、一番前で見ることが出来た。大感激!!

写真:3枚とも早朝のアブシンベル神殿

 

少年の胸をざわつかせた夢の地で

 6日目は、朝からカイロ・ギザのピラミッド巡り。第1ピラミッド(クフ王)へ。1日300人限定の内部入場観光。腰をかがめ、足元を電池で照らしながら暗い急坂を登る。汗だくとなる。巨大ピラミッドの中に、こんな道や玄室があり、それを4500年後の今、こうして歩き、見ることができる。驚きである。オールドパノラマからは第1~3の3つのピラミッドが一望のもと。掌にピラミッドを乗せるポーズで写真を撮る。ニューパノラマからも3つのピラミッドが一望。ここでは指でピラミッドをつまむポーズで写真を撮る。

掌にピラミッドを乗せてみる/右下:ピラミッドを指でつまんでみる

 65ポンド(910円)でラクダに乗り砂漠の散歩を楽しむ人も。スフィンクスを間近に見る。江戸時代の侍がスフィンクスに上った写真を思い出し、感慨ひとしお。もちろん今は上ることはできないが。スフィンクスの鼻はアラブ人に削られ、長い顎ひげはイギリスに持ち去られ、大英博物館に展示されている。

写真上左:ラクダに乗り砂漠を散歩/上右:スフィンクスと記念撮影/下左:鼻と髭を奪われたスフィンクス/下右:ダフシュールの屈折ピラミッド

 ピラミッドはカイロ市街地に隣接していてその近さに驚く。周辺では地元民がバクシーシー(富を分け与えよ)とお金を要求して寄って来る。
 アラブの春の民主化運動の失敗で社会が乱れ、カイロ市内は汚れ、川はゴミで埋まる。あまりの汚さに目を背ける。人口1500万人、道路はどこもひどく渋滞している。ラクダがたくさん積まれたトラックが通る。食用にされるという。
 ダフシュールには、赤と屈折2つのピラミッドがある。赤っぽい石が使われ、その姿、形の美しさで知られる赤のピラミッド。傾斜角度が急過ぎて石の重量が支え切れなくなり、途中で角度が変わる屈折ピラミッドが面白い。
 サッカーラには階段ピラミッドがある。最古のピラミッドといわれる。4800年前の最古の石造りの神殿が残っている。
 エジプト料理は概して不味い。肉は硬くて食べられず、味もひどい。ただ、マンゴージュースは美味しい。

 

[アラブの春] から3年経って

 観光7日目。朝6時カイロを発つ列車で地中海沿岸のアレキサンドリアへ。1等車は、汚れに汚れたポンコツ車。窓ガラスも汚れ放題。エジプト第2の都市できれいな街を想像していたが、カイロと同じ汚さ。ここでの圧巻は丘の上に建つ30mの太い石造りの1本の円柱。往時にはこれが400本あった。
 そのスケールの大きさは想像がつかない。国立博物館にはアレキサンダー大王の小さな頭部の像がある。大王像は、パリのルーブルとここにしかない。午前中はバザールに人が溢れ、午後3時にはデモの人が溢れる。

写真上左と中央:アレキサンドリア市内/上右:丘の上に建つ30mの円柱/下3枚:アレキサンドリアのバザール風景

 

ツタンカーメンの王座に感激!

 観光最終日、カイロのエジプト考古学博物館へ。朝、開館と同時に入場し、混み合う1階を避けて、ガランとした2階へ。ツタンカーメンの玉座が何とも素晴らしい。黄金のマスクと黄金の棺、首飾りなど、その精巧さと美しさには驚く。ゆっくり鑑賞できて大満足。100ポンドを支払い、ミイラ室へ。
 ラメセス2世のミイラにはびっくり! 爪も毛髪も残り、首が異様に長い。ハトシェプスト女王のミイラもあった。しかし、たくさんのミイラが並ぶのは気持ちのいいものではない。

写真:カイロのエジプト考古学博物館

 夕方、ハーンハターリバザールへ。ガイドからさんざん怖さを聞かされ、通路の奥の本屋を覗いただけで、両側の店々からの呼び込みの声を無視してまっしぐらに戻り、青空カフェへ。ほっとしてミントティーを楽しんでいたら近くで派手なケンカが始まり、怖かった。

写真・左:カイロのバザール/中央:頭に荷を乗せ自転車で運ぶ人/右:カイロのバザール

 驚嘆すべき文明を築いたエジプトが何故衰え後進国に転落したのか。それは、その後何十世代にも亘っていくつもの異民族に支配され続けたからだという。混乱し低迷するこの国が栄光を取り戻し、再び光り輝く日々が来るのだろうか。

 

 

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