欧州の誘惑 秋の中央ヨーロッパ5カ国の旅(後編)
2017/07/30
後編
帝国の光芒、覇王たちの残照
2014年10月20日、旅の6日目、チェコからオーストリアに入る。夕方5時近くドナウ川を渡ってザルツブルクへ。クヌーデルズッペ(肉団子入りスープ)、ポークにポテト、キャベツの酢漬けは今回一番の美味しい夕食。チェコに比べるとビールの値段は2倍を超える。オーストリアは白ワインが美味しい。
小雨にけむるザルツブルク
21日は小雨の中の観光となる。映画「サウンド・オブ・ミュージック」の舞台となったミラベル庭園を散策。三位一体教会、マカルト広場を経てザルツァッハ川を渡り、黄葉の美しい旧市街へ。モーツァルトの生家は博物館として公開され、幼少期に使っていたヴァイオリンや楽譜、肖像画、書簡などが展示されている。大司教の館や大聖堂などを巡る。岩塩やザルツブルクでしか売っていないという1個1.1ユーロのチョコレートをお土産に大量に買い込む。因みにザルツブルクは塩の城という意味である。
美しい湖畔の町――ハルシュタット
午後2時前、ザルツブルクの東一帯に広がる山岳地帯ザルツカマーグートへ。世界遺産の美しい町ハルシュタット。雨が上がり、青空ものぞく中、湖畔の町を散策。素晴らしい景観、おとぎの世界のよう。18℃だが、坂道を登ると汗をかく。
ハプスブルク家の夏の離宮――シェーンブルン宮殿
287㎞、4時間のバス移動でウィーンへ。空港近くのホテルで夕食。白ワイン好きの3人で750mlのボトルを空ける。27ユーロ(3500円くらい)。オーストリアは食事もワインも美味しい。
22日、ジムで鍛えている1人は元気はつらつで朝からよく食べるのに対して、早く日本に帰りたいという1人はかなりばて気味。ウィーン市内観光へ。
8時半過ぎからシェーンブルン宮殿を見学。ハプスブルク家の夏の宮殿でバロック様式。訪れるのは3回目となるが、何回見ても素晴らしい。18世紀に完成し、その後、マリア・テレジアが高貴な黄色が映える華麗な宮殿に変えた。幼いモーツァルトがマリア・テレジアの前でピアノを弾いた部屋、マリー・アントワネットの部屋などがある。ウィーン会議が開かれた大ギャラリーは幅10m、長さ40mの祝賀行事用のホール。天井画、シャンデリアなど装飾が豪華絢爛。2007年5月に訪れた際、このホールで開かれた宮殿コンサートを聴く滅多にないチャンスに恵まれ感動したことを覚えている。風が強くて寒いので庭園の散策は早々に切り上げる。
ウィーンのシンボル――シュテファン大聖堂
旧市街の中心にあるシュテファン大聖堂へ。14世紀にゴシック様式の大教会に建て替えられ、以来ウィーンのシンボルとなっている。137mの南塔とモザイク屋根が美しい。昼食は豆のスープと名物のウィンナーシュニッツェル(ウィーン風カツレツ)。白のグラスワインと水の値段が変わらない。
◆シュテファン大聖堂はハプスブルク家の墓所であり、ザルツブルク出身の音楽の神童モーツァルトの結婚式も行われた。
列強に翻弄された歴史
雨のブラチスラバ旧市街を散策
2時半、スロヴァキア入国。1993年にチェコから分離独立し、共和国となっている。ドナウ川沿いに開けた首都のブラチスラバへ。昨日24℃あったというが今日は9℃。城からミハエル門をくぐり、旧市街を散策。ずっと雨。中々いい街。12世紀に建てられたブラチスラバ城は、16世紀ブラチスラバがハンガリー王国の首都になったため、王の居城としての役割も担い、18世紀にはマリア・テレジアの居城にもなっている。
◆上/スロバキア丘の上のブラチスラバ城とブラチスラバの街 下2枚/ブラチスラバの街
歴史と豊饒なる大地のロンド
ドナウの真珠――ブダペストへ
駆け足でスロヴァキアを抜け、4時半にはハンガリー入国。ゲレルトの丘(235m)からブダペストの夜景を楽しむ。色とりどりのネオン輝く日本と違い、白い光一色の夜景は輝く真珠のよう。寒い。夕食後9時にクサリ橋へ。19世紀半ばに10年かけて架けられた長さ375m、幅16mのドナウ川に架かる最も美しい橋。夜間のライトアップのための電球が鎖のように見えるのでこう呼ばれている。
◆ライトアップされたクサリ橋。ドナウ川にかかる最古の橋で、西側の王宮があるブダと東側商業都市ペストを結んでいる。
異国の雨に聞いた冬の足音
23日、8時ホテル出発。9℃、風もあり冬の気候。英雄広場から王宮へ。10時マーチャーシュ教会入場。13世紀に建てられたロマネスク様式の教会。14世紀にはゴシック様式となる。カラフルなモザイク屋根に覆われている。
◆ドナウ川西岸、ブダ地区・王宮の丘に建つマーチャーシュ教会。歴代ハンガリー国王の戴冠式が行われてきた。
建国千年祭に建造されたネオ・ロマネスク様式の砦―漁夫の砦
隣接する「漁夫の砦」は1902年に完成したハンガリー的なとんがり屋根の大小7つの塔を持ち、ロマネスクとゴシック様式の混ざり合ったユニークな白亜の砦。ここから眺めるドナウ川とペストの街は美しく、ブダペスト観光のメッカとなっている。
外国人の団体が多く混み合って、スリらしい若いカップルがうろついている。日本語の「スリ」はスリの間にも知れ渡っているので、現地ガイドはスリを見つけると、「泥棒!」と叫んで日本人客に警告するという。バッグは前にとのアドバイスを無視して背中に懸けていた別のグループの日本人が、プラハのカレル橋の人込みで財布とパスポートを抜き取られている。
二つの鐘楼が聳え立つブタベスト最大の聖堂
ブダペストを代表するネオルネサンス様式の聖イストバーン大聖堂を見学。昼食のグヤーシュ(牛肉入りパプリカスープ)、パンケーキ(ひき肉入り)が薄味で美味しい。
帰りのカタール航空は、4人バラバラの席。5つ星エアラインの名が泣く不味い機内食。CAも日本人 CAの1/3くらいのスローな仕事ぶり。ドーハ乗り継ぎ、24日早朝5時半、関空帰着。