冬の北西フランス紀行

   

田中 功也

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 旅の目的は、
①シャルトル大聖堂のステンドグラスを観る。② モン・サン・ミッシェルのライトアップされた夜景を観る。③ 改装されたオルセー美術館で印象派の絵画を鑑賞する、の3つである。
 1月19日出発、ヘルシンキ乗り継ぎで同日夕方6時前、パリ着

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2日目 シャルトル大聖堂

 翌20日、パリから西へ90kmのシャルトルへ。フランス・ゴシックを代表するノートルダム大聖堂。これほど繊細で、調和のとれた建物は他にない。2本建つ尖塔は、左がゴシック様式、右がロマネスク様式である。美しさ世界一と謳われたシャルトルブルーのステンドグラスは飽きることがない。

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 今日では再現がむつかしいと言われるシャルトル・ブルーのステンドグラス

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3日目 カトリック巡礼の地/モン・サン・ミッシェル

 旅の3日目、高速の入口で、兵士が検問していた。雪景色が続く。ロワール地方から北西に290km。昼にモン・サン・ミッシェル着。名物の巨大オムレツの昼食。午後いっぱい島内の観光を楽しむ。日本人に大人気で、訪れる観光客の30%が日本人という。私もこれが3回目。708年、小さな礼拝堂に始まる。普段は陸続きの修道院が満潮時に孤立した島となる。近年、大量に砂が堆積し、完全な島となることが稀となって、2006年から砂を掻き出す工事が始まった。景観は台なし。急な坂と300段の階段を上る。気温3℃でも汗をかく。

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4日目 ジャンヌ・ダルク終焉の地/ルーアンへ

 イギリス海峡に注ぐセーヌ河口の漁港の町オンフルールへ。船泊りに%e3%81%9f%e3%81%aa%e3%81%8b%e3%83%a0%e3%83%bc%e3%83%ab%e8%b2%9d並ぶ色とりどりのヨットや漁船が水面に映り、美しい。ムール貝の昼食。午後は、ジャンヌ・ダルク終焉の地ルーアンへ。木組みの家が並び、ゴシック様式の大聖堂や教会が点在するノルマンディーの古都。街そのものが美術館。モネが描いた大聖堂を眺め、火刑場跡に立って、19歳で逝った彼女の悲劇を偲ぶ。夜、パリ着。

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5日目 絶対王政のシンボル――ヴェルサイユ宮殿

 5日目、ヴェルサイユ宮殿へ。パリから50分ほど。マイナス1℃で庭園の池には氷が張っている。この日、観光客の90%以上が中国人。ひどい混雑。17世紀、ルイ14世が50年かけて造営した「有史以来、最も大きく、最も豪華な」宮殿。鏡の間や王妃マリー・アントワネットの寝室などを観て回る。

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 午後、ルーブル美術館でミロのヴィーナスやダ・ヴィンチのモナリザ、ラファエロの絵画などを鑑賞。マナーの悪い中国人の集団に閉口。自動小銃を抱えた迷彩服の兵士が2人。夕食には名物エスカルゴを楽しむ。夜のセーヌ川クルーズ。デッキに出ると体が凍え、船内からパリの夜景を満喫。

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6日目 モンマルトルからオルセー美術館へ

 6日目、朝、小雨に煙るモンマルトルの丘へ。画家、似顔絵描きが集うテルトル広場は、閑散としている。白亜の聖堂サクレ・クールの界隈には、ユトリロが描いた小さな路地がそのまま残り、テラスからはパリの街が一望の元に見渡せる。10時過ぎオルセー美術館へ。2011年3月改装され、印象派の絵が見違えるほど明るく見える。特に、ルノアールのムーラン・ド・ラ・ギャレットが素晴らしく、ミレーの晩鐘、マネ、モネ、ゴーギャン、ゴッホなど近代絵画の巨匠たちの珠玉の作品が並んでいる。
 昼食後、オペラ座内部見学へ。公演やリハーサルで入れないことが多く、パリ訪問4回目にして念願が叶う。広い大理石の階段、金箔を貼った壁とシャンデリアが煌めく大広間、シャガールの天井画、深紅のビロードで覆われた客席、夢のような世界が広がっている。
 モネ晩年の傑作「睡蓮」で知られるオランジュリー美術館へ。大広間の長い球面の壁全面に展示される8点の「睡蓮」をイスに座ってゆっくり鑑賞。

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7日目 テロのない平和な世界を!

 7日目、シャルル・ド・ゴール空港の出発ロビー。中国人女性がブランド物のバッグが詰まったスーツケースを整理していた。爆買いである。
 人々は、テロ事件はどこの話?といったふうに常と変わらぬ平穏な生活をしているように見える。世界各地で頻発する過激派によるテロ事件。一日も早く安心して旅行できる日が戻るよう願っている。

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