欧州の誘惑 秋の中央ヨーロッパ5カ国の旅(前編)

      2017/07/19

前編

 2014年10月、大学のゼミ仲間3人と中欧5ヶ国10日間の旅を楽しんできた。
ドイツ、チェコ(前編)、オーストリア、スロヴァキア、ハンガリー(後編)の2回に亘って記してみたい。初めてヨーロッパに行く人が2人おり、欧州の雰囲気が最もよく味わえるコースを選んだ。

男4人―旅人たちはドイツをめざす。

 

 

Federal Republic of Germany  ドイツ

 ツァーは夫婦や女性のグループばかり。男の4人組は珍しがられ何かと声をかけられる。カタール航空でドーハ乗り継ぎ、10月16日14時ベルリン着。即、バスで市内観光へ。気温12℃、寒いくらいだが歩き回るには丁度よい。広々として近代建築が建ち並ぶベルリンは冷たい感じがする。中世の市壁の一部が残るブランデンブルク門の近くに下車。紅黄葉が美しい。4人の集合写真の出来栄えは添乗員の美的センスにかかっている。今回は何度も撮り直してもらう。

◆東西ドイツ再統一のシンボル―ブランデンブルク門

シャッターを押す手が止まらない!

 ペルガモン博物館には、ヘレニズム建築の最高傑作古代ペルガモン(トルコ)の「ゼウスの大祭壇」や古代ギリシャ、ローマ、古代西アジア、東洋、イスラムの美術など見応えある遺物群があふれ、夢中でシャッターを押し続ける。

◆写真上/古代バビロニアの凱旋門と城壁  下左/博物館展示物  下右/古代ギリシャ・ローマの彫刻

◆タイル張り碧い壁の動物壁画

鎮魂のモニュメント「ベルリンの壁跡」

 夕方、ベルリンの壁跡へ。45㎞に及んだ壁の大半は取り壊され、一部が記念碑として保存されている。かなりの厚さを想像していたが、30㎝もない薄さに驚く。日本を含め世界中の画家が、壁一面に思い思いの絵を描いている。5時になるともう薄暗い。

◆ベルリンの壁跡

秋色に染まるポツダムへ

 17日は、紅黄葉の森を抜けてポツダムへ。1945年の「ポツダム会談」の町として知られ、会談が開かれたツェツィーリエンホーフ宮殿には、会議室、テーブル、椅子などの調度品が当時のままに残され、いまにもチャーチル、トルーマン、スターリンが扉を開けて入って来そうな感覚に捉われる。新緑の頃もいいが、秋の欧州も素晴らしい。昼食時の白ビールが美味しい。ドイツ料理は塩辛い。

◆写真左/1945年7月、アメリカ、イギリス、ソ連三国首脳が会談を行ったツェツィーリエンホーフ宮殿
右上/会議室  右下/チャーチル英首相、トルーマン米大統領、スターリンソ連首相

古都ドレスデン――蘇える誇りの系譜

 夕方5時近く旧東ドイツの古都ドレスデンへ。エルベの真珠と称えられる河の畔の美しい街だが、先の大戦で連合軍の大空爆を受け、街は廃墟となった。東西ドイツが統一された1990年以降修復。バロックの美しい街並みが蘇えり、優雅な古都の佇まいを見せている。
ツヴィンガー宮殿は世界に誇るバロック建築の傑作。廃墟に残された古い石と新しい石をジグソーパズルのように1個1個組み合わせ積み上げる気の遠くなるような修復作業に、復元にかけた街の人たちの執念を感じる。。

◆写真上段/ドイツロココの最高傑作「サンスーシー宮殿」  中段2枚/ドレスデン旧市街
下段左2枚/ドレスデン旧市街・ノイマルクト広場  下段右/楽師

◆マイセン焼きタイルで描かれた歴代君主の馬上行進「君主の行進」。長さは102mで総勢93人が描かれている。

 

麗しの国チェコに心奪われて。

 

 

Czech Republic チェコ

千年の時を刻む「黄金のプラハ」

 18日9時ホテル出発。ドイツの高速道路アウトバーンをバスで150㎞移動。11時半にはチェコの首都プラハ着。ストフホ修道院のレストランへ。チェコハムサラダの前菜にはピルスナービールが合う。ドイツもチェコもビールが実にうまい。オバマ大統領がノーベル平和賞の演説をしたプラハ城正門前は、衛兵の交替式が行われたくさんの観光客であふれていた。

◆写真上左/プラハ城 上右/聖ヴィート大聖堂 下左と中央/大聖堂内のミュシャのステンドグラス 下右/大聖堂内部

 プラハには中世の名建築が点在している。13~4世紀のゴシック様式の聖ヴィート大聖堂、カレル橋の旧市街橋塔、ルネサンス様式、18世紀の聖ミクラーシュ教会のバロック様式、ロココ様式、19世紀末のアールヌーボー様式とさながら建築博物館である。

◆プラハの街を一望できる丘の上に建つプラハ城。旧王宮、美術館、教会などが併設されている。

◆左/プラハ城から見る旧市街  右/旧市街広場の時計塔

 よく晴れて、日向は暑く、日蔭は寒い。上着を脱いだり、着たりで忙しい。自由行動から戻る際、放射状の路を1本間違えとんでもない方向へ。往きに撮ったデジカメの写真と街の建物を照合し、道を尋ねてギリギリ集合時間に間に合い、冷や汗をかく。
 夕食には黒ビール。ツァー仲間の2人が、77歳の誕生日を皆に祝われている。ドイツ人のグループがバンドの演奏に合わせて我々のグループと楽しそうに合唱している。最も熱心に欧州旅行を望んでいたゼミ仲間の1人が、観光3日目にして疲れに音をあげ、もう日本に帰りたいという。

 19日、ボヘミアの古城チェスキーシュテルンブルク城へ。日曜日には、地元の人達が民族衣裳を着て当時の生活を再現して見せる。美しい婦人達の優雅なダンスに見とれる。城内は寒く、震える。

◆ボヘミアの古城チェスキーシュテルンブルク城の民族衣装の女性達

塔から見晴らす中世の街並みに息を呑む

 昼、ブルタヴァ川沿いに中世ルネサンスの街並みが完璧に残る世界遺産の小さな街チェスキークルムロフへ。洞窟レストランで鱒とポテトの昼食。物価が安く、ビールは大でも2ユーロである。ゼミの思い出話に花が咲く。
 チェスキークルムロフ城はプラハ城に次ぐ大きさ。13世紀創建。ルネサンス様式の丸い塔と、17~8世紀のバロック様式の建物が見事に調和して1つの城をかたち作っている。城から見下ろす中世の街並みの眺めは素晴らしい。

◆チェスキークルムロフ城/ルネサンス様式の丸い塔とバロック様式の建物

◆チェスキークルムロフ城

◆チェスキークルムロフ城から見る旧市街中世の街並み

◆チェスキークルムロフ城から見る旧市街中世の街並み

◆左/ライトアップされたチェスキークルムロフ城 右上/チェスキークルムロフ城から見る旧市街中世の街並み  右下/街並みの夜景

高原の町テルチで絵本の世界に迷いこむ

 20日、食事前、石畳の路地が縦横に走り古い民家が建ち並ぶ旧市街地を散策、朝の冷気が心地よい。107㎞バス移動して、ボヘミア・モラヴィア高原の小さな町テルチへ。12世紀に始まり、3つの池に囲まれた絵画のように美しい世界遺産の町。ザハリアス広場を囲むルネサンス様式の建物が美しい。あいにくの小雨、傘をさしての散策となる。昼食に最後のチェコビールを楽しむ。チェコ料理は薄味で中々美味しい。

◆ボヘミア・モラヴィア高原の町テルチ/ザハリアス広場を囲むルネサンス様式の建物群

平坦で広大、うねる畑、森林が続く中、時々現れる小さな村々を抜けて夕方4時前、チェコからオーストリアに入る。   ※後編に続く。

 

 

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