The Last Frontier 奇跡のアラスカ  アラスカ旅行記・内陸編

      2017/09/24

 アメリカ最後の辺境といわれるアラスカ、面積は日本の4倍。その広大な内陸部を鉄道で縦断し、北米大陸西岸をアンカレッジからカナダのバンクーバーまでクルーズする14日間の旅に出かけた。出発は2013年9月3日。オーロラ観測と観光のベストシーズンは8月下旬から9月と短い。

 

きらめく北斗七星、頭上を覆うミルキーウェイ

 

 

 

State of Alaska アメリカ合衆国・アラスカ州

 シアトル、アンカレッジで乗り継いで3日の夜9時、北極圏に近い内陸のフェアバンクス着。深夜12時、雨の中ホテルを出発。オーロラ鑑賞用のロッジへ。いつの間にか雨が上がり、遠くの地平線にうっすらオーロラが現れる。天空を舞うオーロラを期待して、ロッジと寒い戸外を行ったり来たり。そのうち晴れて満天の星。幾万の星が密集する天の川が頭上を覆い、北斗七星が明るく柄杓を描く。澄み渡った空、無数の星の瞬きに我を忘れて見とれる。

 

諦めかけたときに感動の瞬間は訪れた!

 ロッジに戻ってうとうとしていると、ガイドの大きな声。あわてて飛び出す。夜半3時、今年一番のオーロラの帯が空いっぱいにくねっていた。思わず息を呑む。一帯を驚きと感嘆の声が満ちる。妻は涙ぐんでいる。宿に戻ろうかという直前に幸運が訪れ、一生に一度のチャンスで見事なオーロラに遭えた!

 ロッジの宿泊者は3日目にしてやっとと、これまた感動の面持ち。天空のショーが本当に見られるとは思っていなかったので、3脚の用意もせず、オーロラの撮り方も勉強して行かなかった。ただ夢中で手に持ったカメラのシャッターを押し続けた。目には白い帯と見えたが、緑のオーロラが写っていた。

◆北緯60~70度、オーロラがよく見られる地域はオーロラベルトと呼ばれる。世界一晴天率が高いフェアバンクスもその一つ。

 

アラスカ大学博物館で自然と寄りそう生活を学ぶ

 フェアバンクスの2日目は、曇り空。時々雨が降り、青空が広がる。空気は冷んやりしている。街には短い秋が訪れている。アラスカ大学博物館やビジターセンターで、アラスカの自然、動物、エスキモーの生活を学ぶ。小さなアンモナイトの化石が孫たちへのお土産。

◆写真上左:アラスカ大学博物館展示のホッキョクグマ 上右:同ハクトウワシ 下左:生活用品 下右:民芸品 

 郊外には北極海沿岸から南のプリンス・ウィリアムズ湾の北米最北の不凍港バルディーズまで縦断する1287kmの石油パイプラインが伸びる。野生動物への影響を最小限に抑える工夫がなされている。日本製という。デナリ国立公園の雄大な山々、森、林、平原が視界いっぱいに続き、青空に黄葉が映える。夕食のアスパラのスープ、オヒョウのメインがあっさり味で美味しい。ALASKAN AMBERビール($8)がうまい!

◆写真左:日本製1287kmの石油パイプライン 中:デナリ国立公園の大自然  右:ALASKAN AMBARビール

 

動物たちのサンクチュアリ――デナリ国立公園

 3日目は終日デナリ国立公園観光。アラスカの中央部、アラスカ山脈の麓に広がる四国より大きな自然保護区。標高1000m、森林限界を挟んで北方針葉樹林帯タイガとアルパインツンドラ両方が広がっている。多様な動物が生息し、変化に富んだ手つかずの大自然を楽しめる。未だ明けやらぬ6時前に出発。針葉樹の密生するタイガ一帯を抜ける。暗いトウヒの林、沼の端に黒い影がじっと佇んでいる。夜明けを待つメスのムース(ヘラジカ)である。

◆デナリ国立公園内のホテルロッジ

◆暗闇の中に佇むムース(ヘラジカ)のメス

 

急ぎ足で通り過ぎるツンドラの秋

 森の木々が低くなり、やがてまばらになってツンドラ地帯に入る。先に行くバスはなく、どこも一番乗り。現地ガイドが機関銃のような早口で説明する。緑の草原がこの2週間で紅黄葉し、すっかり秋の景色になってしまったという。

◆秋色に染まるツンドラ

◆デナリ国立公園の紅葉

 

◆写真上2枚:デナリ国立公園の草紅葉 9月上旬の短い紅葉シーズンは、アラスカが最も色鮮やかな時期。真っ赤なツンドラがどこまでも続いている。

◆公園内にはムース、グリズリーベア、トナカイなど37種類の哺乳動物、ライチョウ、イヌワシなど130種類の鳥類が自然のままに暮らしている。写真左と中:ライチョウ  右:ホッキョクジリス

 

20%の僥倖、デナリ山をとらえた!

 先住民族が“デナリ=偉大なるもの”と崇めてきた北米大陸最高峰のデナリ(旧マッキンリー)山6194mを見晴らす展望台へ。見える確率は20%。頂上付近は雲に隠れているが、7合目くらいまではくっきり見えている。冷たい風に震える。

◆北米大陸最高峰のデナリ山(6,190m/旧マッキンリー)

 再びパーミガンが現れバスが止まると、何と! ころころ太ったグリズリー(ハイイログマ)が、手の届きそうな近くで木の実を食べている。こんな間近かで見られるのは極めて稀で、数キロ先から豆粒のように見えるだけでもラッキーという。

◆木の実のご飯に夢中のグリズリー、バスのことなど気にしない。

 ブルーベリー、ソープベリー、クロウベリー、クランベリーなど豊富な実をたらふく食べ、その糞でお尻の周りが紫色になっている。豊かな食べ物に毛並みも美しい。食べるのに夢中で、バスは全く無視。ゴールデンイーグルも見える。シロクマビール($6)、アラスカバーガーの昼食後は、ホテル周辺の川辺の森を散策し、部屋で温かいコーヒーを楽しむ。

 

アラスカ鉄道756km列車の旅

 4日目の昼。デナリ駅を州営のアラスカ鉄道が発車。北米大陸で最北の地を走る鉄道。フェアバンクスからアンカレッジまでの756kmを結ぶ「マッキンリー・イクスプローラー」は観光客の人気の的。高さ90mのハリケーン谷鉄橋を渡り、分水嶺サミット湖畔を平均時速45㎞でゆっくり進む。

◆写真左:アラスカ鉄道マッキンリー・イクスプローラー 中:展望車 右:食堂車

 天井付近までガラス張りの2階建ての展望車からの眺めは素晴らしいのひと言。青緑色の湖沼、雄大な氷河、峡谷、大きく蛇行する川、どこまでも続く原始の森。水辺にムースが見え、美しい虹がいくつも架かる。食堂車でのランチの味も格別。圧倒的なスケールの大自然のなかを走り抜け7時間半、あきることのない列車の旅を満喫してアンカレッジへ。

◆胸に迫る圧倒的なスケールの大自然。どこまでも原始の森が続く。

◆2階建て展望車 180度開放された大自然の眺めは体験したことがない素晴らしさ!

◆極北の地で見た虹。アラスカ州の愛称は「最後のフロンティア」、キャッチフレーズは「未来は北にある」だそうである。

 以下クルーズ編へつづく。

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