伊太利亜 万華鏡紀行 中部イタリア編

      2018/02/04

 

 

 

 2017年10月12日、観光4日目はローマ市内巡り。近年テロが頻発し、ヨーロッパはどこも危険とみられているが、イタリアではこの30年テロ事件は起きていない。それでも朝9時過ぎのバチカン美術館前では、銃を持った兵士が2人警戒に当たっていた。予約なしの観光客が長い列を作り、入場2時間待ち。我々はすぐに入れたが、館内も大勢の人。

◆左:16世紀に作られたイタリア各地の地図が廊下の両側に展示されている。右:バチカン美術館内部。

◆バチカンのスイス人衛兵 
500年以上に亘り、バチカンでローマ教皇を警護するのがスイス人の衛兵隊。衛兵になる条件は、スイス軍役を経験した19~30歳で独身、カトリック教会からの推薦を受けたカトリック信徒であることとなっている。

 

 

 システィーナ礼拝堂は静寂を保つためガイドの案内が禁じられ、庭で事前に説明を受ける。11時過ぎに入場。写真撮影は厳禁。何人ものガードマンが監視している。観光客のおしゃべりには時々「静かに!」とアナウンスが流れる。黙してミケランジェロ晩年の傑作「最後の審判」を眺める。1人で5年をかけて描いた祭壇画。その25年前には4年がかりで旧約聖書の創世記を主題にした天井画を描いている。いつまで観ていても飽きることがない。

 1人参加の人が集合場所に現れない。添乗員と現地ガイドが必死に捜し回る。幸い、三越デパートに寄るという添乗員の一言を覚えていたため、5時間後に合流し事なきを得た。旅程表をバスに残し、危うく行方不明になるところであった。私も7年前ミラノで取り残され冷や汗をかいたことがある。宿泊ホテルやスケジュール記載の旅程表は必携である。
 三越のパリ、ロンドン支店が相次いで撤退する中、ローマは黒字が続いている。その地下で大勢の中国人団体が、無料の給水器から持参のペットボトルを次々に満タンにしていた。

 

 

 カトリック教の主聖堂サンピエトロ寺院の内部の豪華さには目を瞠る。

◆サンピエトロ寺院とサンピエトロ広場

◆サンピエトロ寺院の内部

 ミケランジェロ23歳の時の彫刻「ピエタ」は、暴漢に襲われ破損して以来、厚い防弾ガラスに囲われている。大理石の像は、慈悲深いマリアの表情からキリストを抱き上げる指一本まで完璧に表現されている。生きているようなめらかな肌には感嘆するばかり。

◆ミケランジェロの彫刻ピエタ像
十字架から降ろされたキリストの亡骸を腕に抱く聖母マリアの像。ミケランジェロが1499年に完成し、一躍美術界の寵児となった作品。あまりに美しく哀しすぎる表現は、今なお彫刻の一つの頂点として輝きを放っている。

 

 

 観光シーズンを外れているのに、トレビの泉、スペイン階段や真実の口、評判のジェラートの店はどこも人であふれている。辛うじて泉に後ろ向きにコインを投げ入れることができた。

世界中からの観光客が絶えないスペイン階段。後方にそびえ立つのは、左右対称の二つの鐘楼が象徴的なトリニタ・デイ・モンティ教会。

◆真実の口に手を入れてみた。

◆トレビの泉ではコインを投げ入れてみた。

 

 

 テヴェレ川沿いに走り、青空に映えるコロッセオへ。紀元80年頃完成した円周527m、高さ50m、長径188m、短径156m、7万3000人収容の巨大円形競技場。猛獣と剣闘士、剣闘士と剣闘士同士の闘いに市民が熱狂した。目を閉じ、耳をすませばこだまする大歓声が聞こえたような気がする。1900年の歴史を感じる。

◆写真上と下左2枚:コロッセオ内部  ◆下右:コロッセオ近くの凱旋門

 

 

 カンツォーネディナーはワインが無料。夫のピアノ伴奏で妻が声量豊かに謡い、客は楽しそうに聴き入る。レストランでは、親子4~5人から夫婦2人まで家族で謡うことが多い。チップやCDの売り上げを誰が受け取るかでその家の力関係が分かって面白い。奥さんががっちり管理する家族があれば、旦那が威厳を持って当然のように受け取る家族がある。

 

 

 

 

 

 観光5日目、今日も快晴が続く。トスカーナ地方の小さな街々を巡る。ローマから北北西へ4時間のシエナへ。11世紀中頃から都市国家として栄え、独自の文化を培った。城壁で囲まれた街は中世の面影がそのまま残る。貝殻の形をしたカンポ広場の類まれな美しさは世界一といわれ、正面には高さ88mのマンジャの塔が聳える。

◆シエナの街  ルネサンス時代には、メディチ家率いるフィレンツェと覇を競い、都市計画にも力を入れていた。

◆カンボ広場

◆マンジャの塔

 上部に後期ゴシック様式の華麗な装飾と、下部にロマネスク様式の彫刻のファサードをもつドゥオモが青空に光り輝く。あまりの美しさに声を呑む。2006年10月に来た時は、補修中で観ることができなかった。

◆ロマネスク建築の傑作シエナのドゥオモ(大聖堂)。外壁は、白と黒の大理石の縞模様で覆われている。

◆ドゥオモのファサード最上部

 内部は、差し込む光と、黒と白の大理石で造られた柱とアーチによって厳粛で神秘的な雰囲気に包まれている。神々しいまでの美しさにただただ見とれ感動する。サンピエトロ寺院の内部に勝るとも劣らない。大理石の床装飾も素晴らしい。ドゥオモを観たことでシエナの印象は大きく変わった。街は細い道が入り組み迷路のよう。日向は暑い。

◆ドゥオモのステンドグラス

◆ドゥオモ内のピッコロ―ミニ家の図書

◆ドゥオモ内部のドーム天井

◆シエナの生ハムとワインの店

 

 

 続いてサン・ジミニャーノへ。丘の上の美しい塔の町として知られる。貴族が競い合って作り最盛期には72本を数えたが、現在は15本が残るのみ。13~4世紀に繁栄した。町の中心にある展望台からは小さな町とウンブリアの平野が見渡せる。

◆サン・ジミニャーノの塔

 

 

 

 観光6日目、大阪は秋雨前線の影響で雨が続き11月上旬の気温というが、イタリアは快晴続き。フィレンツェは27℃の予報。昨日、今日と深い霧の朝。ホテルを出発する時は、5m先も定かでない。ところがピサに着くと同時にすっきり晴れ上がり真っ青な空。これ以上は望めない観光日和となる。アルノ川河口にあるピサは10世紀からベネチアやジェノバと覇権を争うほどの海洋国家として繁栄するが、港が土砂で埋まり13世紀にはその勢を失う。

◆ピサの斜塔とドゥオモ

 ピサの門をくぐり城壁の中に入ると、洗礼堂、ドゥオモ、斜塔(鐘楼)が目に飛び込んで来る。青空を背に白い建物群がくっきり。180年近くかけて1350年に完成した斜塔は、ロマネスク建築の傑作の1つ。繊細で美しい。4階まで作ったところで傾きに気づき、当初計画の100mから55mに縮小された。斜塔の傾きは4度とも5.5度ともいわれる。倒壊を防ぐため入場禁止になったが、修復され2001年12月から入場者数の制限付きで登れるようになった。螺旋状の大理石の階段は多くの人の昇降でかなりすり減っている。頂上まで行くと想像以上の傾きに少なからぬ恐怖を覚えるが、それを忘れさせる眺望が待っている。

◆写真上:ピサの洗礼堂  下左:洗礼堂から見たドゥオモ  下右:ドゥオモのファサード

 傾いているのは斜塔だけではない。洗礼堂も大聖堂も傾いている。海の底の砂地で軟弱な地盤のせいだ。ピサの街の建物のほとんどが角度の多少はあれ傾いている。フェルメールの墓のあるオランダ・デルフトの新教会の鐘楼もかなり傾いていて、斜塔はピサの専売特許ではない。

◆写真上と下左:ピサの洗礼堂内部  下右:ドゥオモの中にある振り子の原理のランプ 

 ドゥオモ(大聖堂)のファサードはピサ・ロマネスク様式の最高傑作。G・ガリレイが「振り子の原理」を発見したランプがある。洗礼堂の真ん中では聖職者が美しい歌声を響かせる。こだまする高く透きとおった声に包まれ、天使が舞い降りたかのような感覚に捉われる。我を忘れて聴き入る。

 

 

 フィレンツェに戻り、小高い丘のミケランジェロ広場からアルノ川を挟んで旧市街の眺望を楽しむ。トスカーナの州都で、14世紀にルネッサンスを開花させた花の都である。

◆ミケランジェロ広場から見るフィレンツェの遠望

◆ヴェッキオ橋

 土曜日とあって旧市街はどこも人であふれている。青空に映える巨大なドゥオモ(サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂)は、高さ107m、奥行153m、最大幅90m。1436年に完成した。ドゥオモと美しい調和をなす84mのジョットの鐘楼。その優雅さには見飽きることがない。

◆フィレンツェのドゥオモ(サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂)

◆左からドゥオモ、ジョットの鐘楼、シニョーリア広場に立つミケランジェロのダビテ像、フィレンツェの花嫁

 

 

 ウフィツィ美術館前には長い列。館内も多くの人でいつ来てもゆっくり鑑賞できない。ずっと撮影禁止だったが、2年前からフラッシュなしで可となった。

◆左:ウィフィツィ美術館  右:ウィフィツィ美術館前に立つダヴィンチ像

 ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」や「春(プリマヴェーラ)」、ラファエロの「ひわのマドンナ」、レオナルドダヴィンチの「受胎告知」と未完成の「東方三賢王の礼拝」、ミケランジェロの「聖家族」、カラヴァッジオ、ティツアーノ、フローラなどの名画が自由に撮れる。絵の前でじっと見つめ続ける人がいるとお手上げ。他人への配慮がほしい。

◆ボッティチェリの「春」(プリマヴェーラ)

◆ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」  

◆ラファエロの「ひわのマドンナ」

◆レオナルドダヴィンチの「受胎告知」

◆ミケランジェロの「聖家族」

 ヴェッキオ橋からシニョーリア広場を散策。期待の夕食ティアナ牛のステーキは硬くてがっかりする。

以下、北イタリア・山岳編へ

 

 

 

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