「光の春」――いかにも俳句の季語にありそうな美しい言葉ですが、季語ではありません。実はこの言葉、NHKの気象キャスターでエッセイストとしても活躍した故倉嶋厚さんが、ロシア語のBECHA CBETA(ベスナー・スベータ、光の春の意味)を翻訳したもので、早春の2月を指す言葉です。
日本では、春といえばまず気温の上昇がイメージされますが、春になっても気温が氷点下10度、20度というロシアでは、気温より先に光の変化で春を感じるのだとか。気温は低く、風はまだ身を切るように冷たくても、晴れた日に太陽の光が燦燦とふりそそぎ、厳寒のシベリアでも、軒の氷柱から最初の水滴のひと雫が輝きながら落ちる瞬間、それが光の春だと倉嶋さんは気象エッセイの中で述べています。※編集部