新日本歳時記/寿禄会版・風通す

      2024/02/06

黒川勝利

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◎今日の一枚/暑中の涼――奉還町商店街を吹きぬける風

 岡山駅西口を出ると国体筋と呼ばれる大通りにでる。カンカン照りの日に歩くには暑すぎる。「熱すぎる」と書きたいくらいだった。しかしやや北へ進んで信号を渡り、奉還町商店街に入るとアーケードが日を遮ってくれて、ぐっと過ごしやすくなる。

 奉還町は明治維新後に旧岡山藩士たちが、先祖代々の家禄を返上して受け取った奉還金を元手として、当時の山陽道の道路脇に開いた商店が起源となっている。
 彼等としては一大決心であっただろうが、やはり「武家の商法」とあって、成功したものは少なかったらしい。失敗したものは退散し、徐々に一般の商人がここに進出していった。アーケード内の説明表示によると、奉還金によって開業した商店で現在残っているのはただ一店のみという。
 武士によって開かれながら、今の奉還町はきわめて庶民的、地域密着型の親しみやすい商店街として頑張っている。そこで一句。

 「風通す」は夏の季語。一般には家の中を吹き抜ける風、あるいはそのために戸や窓を開ける行為を指すようであるが、ここでは奉還町商店街のアーケードの中で感じた、炎暑の国体筋と比べるとやや救われる感じのささやかながら心地よい風の表現として用いてみた。

撮影&俳句

黒川勝利

撮影日

2023年8月11日

撮影場所

岡山市北区奉還町

 

 

 

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