カメラとともに Vol.14 奴隷狩り

      2021/12/01

 

いきなり物騒なタイトルで恐縮です。
今回の主役はサムライアリ(侍蟻)とクロヤマアリ(黒山蟻)という2種類のアリたちです。どちらも体長が4~5 mm で,身近にいる普通のアリです。
そもそもの始まりは散歩中にアリの行列を見かけたことですが,色々調べているうちに生き物たちの「定め」とか,自然界の「摂理」といったようなことまで考えてしまいました。

 

アリの行列を見つけました。
ただ,ちょっと奇妙に感じたのはほとんどのアリが白い粒状のものを運んでいることです。
食料の運搬かな?

 

いや,これは虫のサナギのようです。くっきりとした黒い眼があり,脚が透けて見えています。

 

少数ながら幼虫らしいのもいました。

 

卵らしいものもあります。

 

運んでいる白い粒々は,どうやらアリの卵・サナギ・幼虫のようです。
子供たちをつれて引っ越しをしているのでしょうか。それにしても延々と続いています。たいへんな数です。

 

何処からどこへ移動しているのでしょうか。細い枝をつたい・・・

 

葉っぱを横断して黙黙と移動しています。

 

列の前後をたどってみましたが,出発点も行く先も深い草むらの中に消えてしまって特定できませんでした。

 調べてみて分かりました。なんと,これは「アリの奴隷狩り」という行動のようです。
集団でほかの巣を襲い,卵やサナギ・幼虫を奪って自分の巣へ持ち帰り,巣の中で育てて「働きアリ」にするのだそうです。つまり奴隷に仕立てるというわけです。

 その後の調べを総合すると,これらの写真はサムライアリがクロヤマアリの巣から奪った卵・サナギ・幼虫を自分の巣へ運んでいる最中をとらえたものでした。さしずめ凱旋行進といったところでしょうか。

 調べているうちに分かったことがもう一つあります。もっと恐ろしいことが・・・。
実はサムライアリとクロヤマアリの間には,今回の話の前段となるもう一つの凄絶な物語があるようです。つまり今回の話は,サムライアリとクロヤマアリにまつわる秘話の第二幕であったということです。では第一幕とは ??? それについては写真で現場をおさえる日までお預けにしたいと思います。相当高いハードルがありそうですが。

 これまでのところで感じたこと。子供たちを奪われるクロヤマアリにとっては悲惨な出来事に違いありませんが,結果的にはサムライアリに育てられたクロヤマアリはサムライアリのもとで働き,サムライアリは再びクロヤマアリの巣から卵・サナギ・幼虫を運び込んで育てるというサイクルが安定的に廻っているとすれば,これも自然の成り立ちとして「有り」なのかなという気もします。このような形で両種の「種の保存」が図られているのであれば・・・。とは言うものの,心情的にはサムライアリ側の一方的な身勝手さは許せない気がします。クロヤマアリ側にも,実は我々の知らないメリットがあるのだということであれば話は別ですが。人間的な感覚からすれば,クロヤマアリにとっては自分の本来の巣の中で平穏に生長できてこそ幸せと言えるはずです。
 今回は自然の掟の厳しさ,奥深さなどを感じさせられました。

 

 

 

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