初夏のスイス・ゴールデンルートを巡る旅②

      2024/02/06

◆朝7時のマッターホルン

【いつものようにスライドショー以外の写真は、クリックで拡大写真を見ることが出来ます。 なお、プリントされたアナログ写真を、デジカメで撮影したデジタル写真を使用しており、編集部で可能な限りの補正はしましたが、画質が通常よりも劣ることをご容赦ください。】

 

 

 1999年6月14日(月)、氷河特急ファーストクラス(パノラマカー)で4時間の夢の旅を終え、午後1時50分アンデルマット着。バスに乗り換えて2時12分出発。
 2時48分、地中海と北海にヨーロッパの水系を二分する分水嶺のひとつフルカ峠へ。展望台から青白く輝く雄大なローヌ氷河を観る。時々晴れ間がのぞく曇り空。展望台の近くにはまだ、見上げるような雪の壁が残っている。

左)ローヌ氷河展望台にて、中)ローヌ氷河、右)ローヌ氷河を背にして

左)ローヌ氷河展望台、右) ローヌ氷河展望台駐車場の雪の壁

 5時5分テッシュへ。この日の宿泊地ツェルマットは、自然保護を目的にガソリン車の乗り入れが禁止されていて、5km手前のテッシュから列車か電気自動車に乗り換える。

 5時42分ツェルマットに到着。駅前にはホテル送迎用の電気自動車・バスが多数待っている。時々小雨が降る天気。

 アルプスで最も印象的な山マッターホルンの麓にあるツェルマットは、冬のリゾートとして世界的に有名な人口3,700人の町。谷間に数多くのホテルが建ち並んでいる。マッターホルンを始め、スイスアルプス4,000m峰38座のうち29座が集中していて、世界中のアルピニストの憧れの地となっている。
 ホテルに入る前に自由時間があり、メインストリートのバーンホーフ通りを散策する。ホテルやレストラン、カフェ、スポーツ用品店、土産物店が軒を連ねている。時々シャンシャンと鈴を鳴らして馬車が通る。のんびりしたリゾート気分に浸る。
 駅から7~8分行くとマーモット像のある小噴水があり、アルプスに来たという実感が湧いてくる。夕闇に浮かぶ向かいの教会や小さな広場も雰囲気がある。

 白濁した水が勢いよく流れる小川マッタ―フィスハ川を渡り、右に曲がると建物もまばらになってくる。ネズミ返しのついた古い穀物小屋がある。さらに坂道を上って6時50分、こじんまりした家庭的な雰囲気のホテルアンタレスに到着。

◆ツェルマットの町 午後6時 時々小雨

 7時半、メインディッシュが鶏の夕食。空腹で美味しく、白ワインにも満足。父娘で参加していた人は口に合わないようで、部屋に戻って持参のラーメンを食べるという。何ともったいない。好き嫌いがあると旅の楽しさが半減する。

マッターホルンの天を突き刺すような雄姿に感動!

 雨が上がった夜10時、外に出てみると、マッターホルンが姿を現わせていた。この時まで山容がどんな格好なのかもよく知らなかったので、天を突き刺すような雄姿に感動!
 暗くて写真は撮れなかったが、明日からの旅に期待が膨らむ。

 旅の3日目。6月15日(火)朝5時半、マッターホルンが見える!!と、興奮した声で妻が言う。部屋のテラスに出てみると、高さ4,478mの特徴のあるマッターホルンの全容がくっきり見えている。朝日を浴びて山の中腹から頂上に向かって徐々に山肌がピンク色に染まっていく。この世のものとも思えぬ美しさ、神々しさにただただ見とれる。部屋に戻ってベッドに寝転んでもよく見える。マッターホルンの見える部屋に泊れた幸運に感謝! 妻と二人飽きずに眺めていた。ツェルマットの高級ホテルに宿泊してもマッターホルンが見える部屋に当たることは滅多にないことを、後になって知る。

左)中) 朝5時半ホテルのテラスから マッターホルン4,478mの全容が見えた、右) 雲の動きは速い

左)朝日を浴びて中腹がピンク色に染まるマッターホルン、中)朝7時、右)中腹に雲が

 7時10分、朝食前の散歩に出かける。心地よい朝の冷気のなかホテルの周辺を巡る。向かいの山から、放牧された牛のカウベルがのどかに響く。小さな村なのに至る所にレストランがある。商売になるのだろうか? 7時半、すっきりした気分での朝食は美味しい。

左)ホテルアンタレス前、朝、中) 後方がホテルアンタレス 3階に宿泊した部屋がある、
右) いたる所にレストランがある

 8時半、ホテルを出発。歩いてツェルマットの駅に向かう。快晴の空のもと、白銀の峰々や教会の尖塔、家々の甍を見ながら進む。嫌が上でも気持ちが浮き立ってくる。パン屋から焼き立ての香ばしい匂いが漂ってくる。午後の山での自由行動中の昼食用にサンドウィッチを求める。

◆ツェルマット駅に向かう道で

 9時12分、登山電車がツェルマットを出発。フィスパ川の対岸から集落を見下ろすように登り始め、林の途中でフィンデルンバッハの鉄橋を渡る。妻の隣に座ったドイツ人の女性が盛んに話しかけてきたが、言葉が分からず残念がっていた。電車はぐんぐん高度を上げ、リッフェルアルプで森林限界を超えて草地になる。やがて右手にマッターホルンが巨大で秀麗な姿を現して、歓声があがる。

左) ツェルマット駅への途中 ツェルマットの町とマッターホルン、中) ツェルマットとゴルナーグラート
の登山鉄道往復切符、右) 登山電車 さかんにドイツ語で話しかけてきた女性

ゴルナーグラート山頂展望台からの大パノラマに感動!

 9時55分、ゴルナーグラート山頂駅着。標高3,130m。妻はセントバーナード犬と写真におさまる。スイスで2番目に高い展望台3,135mへ。左からリスカム4,527m、双子のようなカストール4,228m、ポリュックス4,091m、ブライトホルン4,160mと4,000m峰が並ぶ様は圧巻。
 ふた股に分かれた氷河に挟まれたスイス最高峰のモンテローザ4,634mも見える。前日まで雪と雨が降り続き、視界ゼロの寒い日が続いていたという。何という幸運!

左) ゴルナーグラート3,130m 救助犬セントバーナード犬と、
中) ゴルナーグラート山頂駅をバックに、右) ブライトホルン4,160mをバックに

 マッターホルンは東壁が正面になり、ややバランスが悪く見える。その右にダン・デブン4,171mを経てツィナールの峰々とヴァイスホルン4,504m、北側はドーム、テッシュホルンなどミシャベル山群が続き、360度の大パノラマが開けている。

 セントバーナード犬の親子とブライトホルン4,165m、クラインマッターホルン3,883mをバックにスイス国旗を持って記念写真に納まる。有料。子犬は写真のモデルの仕事を終えると食事を与えられ、嬉々として食べていた。少し雲はあるものの好天に恵まれ、マッターホルンの雄姿を望めて何とも幸せな気分。

左) 左からカストール4,228m、ポリュックス4,091m,リスカム4,527m、
中) スイス最高峰モンテローザ4,634mをバックに、右) ゴルナーグラート展望台 ブライトホルン
4,160m、クラインマッターホルン3,883mをバックにスイス国旗を手にセントバーナード犬親子と

左) モンテローザ、中) ブライトホルン、右) モンテローザ

◆ゴルナーグラート展望台

◆ブライトホルン4,160m、クラインマッターホルン3,883m

◆ゴルナーグラート展望台

左) 写真のモデルの仕事を終えて餌にありついた子犬、右) ゴルナーグラート山頂駅

ゆっくり1時間のハイキングに大満足!

 ツェルマットの周辺にはマッターホルンを見ながら歩けるハイキングコースが60以上設けられ、初級から本格的なトレッキングコースまで様々なルートがある。分かりやすい道標が完備していて、ガイドなしでも安心して歩ける。

◆ローテンボーデン駅からハイキングに出発

 自由行動になり、ひと駅下ったローテンボーデン駅から2.2km、1時間のハイキングに出発。脚に自信がない人は電車でツェルマットに戻る。ほどなく逆さマッターホルンを映す小さな湖リッフェルゼ―へ。湖といっても小さな池のよう。水面にはまだ氷や雪がたくさん残っていて、完全な逆さマッターホルンを見ることはできなかった。
 湖の脇を通るコースは人気があり、ハイキング客も多い。マッターホルンをはじめとした山々と氷河を眺めながら歩く絶景コース。高山植物の可憐な花々が雪の下から顔を覗かせている。

左)逆さマッターホルン リッフェル湖にマッターホルンの頭が映っている、
右) 小さな湖に映るマッターホルン

◆雪の下から顔を覗かせた高山商物

◆ローテンボーデンからリッフェルベルクへハイキング

 コースの終点リッフェルベルク駅近くの草地の岩に腰を下ろし、マッターホルンを眺めながらツェルマットで求めたサンドウィッチとフルーツジュースの昼食をとる。美味しさは格別。

左) 下に見えるのはリッフェルベルク駅、中)右) 駅近くでマッターホルンを眺めながら昼食

 12時半、リッフェルベルク駅から電車に乗って、1時ツェルマットに戻る。2時過ぎホテル近くのシュルーマッテンからゴンドラリフトに乗って10分でフリーへ。ロープウェイに乗り換えトロッケナーシュテーク(2,929m)へ。往復43フラン(3,400円)。トロッケナーシュテークは、テオドゥル氷河に面した夏スキーのパラダイス。

 ここからさらにロープウェイに乗り換えると、ロープウェイで行ける展望台としてはアルプスで最高地点のクラインマッターホルン(3,883m)に行けるのだが、まだ雪が深く開通は1週間後になるという。
 クラインとは小さなという意味。山頂部の形がマッターホルンに似ているが、ブライトホルンの西端についている支峰。

 トロッケナーシュテークの展望台(2,993m)からマッターホルン(4,478m)までは僅か数kmの距離。まさに眼前に聳え、覆いかぶさってくるような迫力に圧倒され、しばし声もなく見とれる。陽射しと雪の照り返しが強く、サングラスをかけないと目が痛い。展望台にはいろいろな国から多くの観光客がつめかけている。

左)トロッケナーシュテークの展望台2,993mからマッターホルンまでは数km、
右) 眼前のマッターホルン

 山からツェルマットに戻り、娘たちに頼まれていた当時流行りのスウォッチの腕時計を買う。70フラン(5,500円)と60フラン(4,700円)。軽登山靴用の靴下を日本から持って来るのを忘れ、スポーツ用品店へ。毛糸のスイスらしいしゃれた靴下を買う。

 小さな町なので、2日間の滞在でメインストリートの辺りはすっかり馴染になっている。細い路地に入ると、ネズミ返しのついた古い穀物小屋が建ち並ぶ一角がある。いかにもスイスの田舎といった風情が漂い、何ともいえない。

 6時、家庭的な雰囲気の民家風のレストラン「スイスシャーレ」で夕食。大きな器のトマトクリームスープに、妻はチキンカレー風味にポテトのスイス焼きとミネラルウォーターで32.7フラン。私は仔羊肉のシチューにポテトのスイス焼きと白ワインで42フラン。2人で合計74.7フラン(5,900円)。笑顔のウエイトレスと美味しくボリュームたっぷりの食事に、満足。

左) 民家風レストラン スイスシャーレ、中) スイスシャーレのウエイトレス、右) スイスシャーレでの夕食

◆スイスシャーレ店内

 7時半、ホテルに戻る。マッターホルンを満喫できた一日だった。

- 初夏のスイス・ゴールデンルートを巡る旅③に続く -

 

 

 

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