New Zealand 花紀行《 後編 》

      2019/02/10

 

 

 

 ニュージーランド  New Zealand

 

スリル満点!NZ発祥のジェットボートに乗船

 2010年10月1日、旅の5日目。よく晴れてワカティプ湖や雪山がくっきり見えている。

◆ワカティプ湖

 カッパに救命胴衣を着けてカワラウスロージェットに乗船。トム・クルーズに似た船頭。湖の波が高く、スピードを上げるに従いボートがどんっ、どんっとジャンプし、激しく波しぶきがが打ち付ける。ある程度のスリルは予想していたが、思わぬ展開に恐怖を覚える。入り江に入り波が治まって生き返る。写真マニアが一眼レフで機関銃のような音をたてて連写している。柳の緑が美しい。30分のクルーズで湖上からの素晴らしい眺めを満喫する。

◆写真上:トム・クルーズに似たドライバー  下左:夫婦間のビビリ度に落差が・・・ 下中:カワラウ・スロージェット 下右:ワカティプ湖畔の風景

 バスに乗り換えて1時間半、アレクサンドラの町へ。ベニバスモモの花が美しい。早春の冷たいが心地よい風を頬に感じながら公園を巡る。日本の町に似たほとんどが平屋の家並みが続く。新緑に遠くに連なる雪山の眺めがうれしい。

◆アレクサンドラの町:1800年代には金の採掘で賑わった

◆ベニハスモモの花

 バスの旅が続く。好きなエンヤの曲を聴きながら素晴らしい景色を眺める……至福のとき。至る所に黄色いエニシダがはびこっている。山の中腹に黒い子羊が親に寄り添って跳びはねている。1時半頃南島第2の都市ダニーデン着。ビール工場が経営するレストランでフィッシュ&チップスの昼食。大きなボウルのクラムチャウダーが何とも美味しい。

 

ニュージーランド唯一の城・ラーナック城へ

 食後、オタゴ半島のラーナック城へ。ニュージーランド唯一のお城。中世ヨーロッパの城を模して1874年に個人が築き、個人が所有する。広くはないが手入れの行き届いた庭園にはたくさんの花が咲き乱れていた。

◆ラーナック城/大富豪ウィリアム・ラーナックが愛する妻のために、15年の歳月と莫大な費用をかけて完成させた。

◆ラーナック城庭園/14haの敷地にはフォーマルガーデンや季節の花壇など色鮮やかな庭が広がる。

◆ラーナック城からのオタゴ半島の眺め

 

かつての商都の栄光を物語るダニーデン駅舎

 夕方、ダニーデン駅へ。ダニーデンに点在するスコティッシュ建築の一つ。白い八重桜が丁度満開の時期を迎え、駅舎の石造りの建物とマッチして夢のような風景。日本以外でこのように美しい桜を見られるとは思っていなかった。夕食後、雨の中傘をさして夜の街を散策。大きなスーパーに寄ったが買いたいものはなかった。

◆ダニーデン駅/ニュージーランドの商業の中心として栄えたダニーデンを象徴する壮麗な駅舎は1906年の建設。

 ダニーデンは、オタゴ湾に面した街。19世紀半ばスコットランドから来た人々が築いた理想郷で、今も当時の面影が色濃く残っている。石造りの雰囲気ある街並みが続く。入植者達が異国の地で挫けそうになったとき、自らを奮い立たせるため口ずさんだのが、蛍の光として親しまれているスコットランド民謡「AULD LANG SYNE」。街の繁栄が始まったのは1860年代、奥地で金が発見されてから。

◆満開の八重桜に映える時計塔、黒い玄武岩にオアマル産の白い石灰岩の縁取りが美しい。

 ダニーデンの駅舎は今から100年以上前に建てられたニュージーランドが誇る最も美しい駅舎で、宮殿か教会のような壮麗さ。鮮やかなステンドグラスのコンコース。今でも現役で、横幅128m、奥行き24m、高さ37mと南島最大。プラットホームは488mある。

◆写真右:毎年10月にダニーデン駅で開催されるファッションショーでは、プラットホームがランウェイになる。

 駅舎はどの角度から見ても実に見事な造形で、白と黒が絶妙なリズムを奏でている。地元産の黒い玄武岩とオアマル産の白い石灰岩の縁取りが鮮やか。建物正面を支えている柱には光沢のある花崗岩、屋根には赤いマルセイユタイルが葺かれている。ひときわ目立つのは、正面の右手に聳える高さ37mの四角い時計塔。直径1.5mの時計が街に向かって3面ついている。屋根に施された採光用のドーマー窓が程よいリズムと調和を与えている。

 

市民の熱い想いが選んだ存続の道

 駅舎の中はどこか宮殿にでも入ってしまったような感じを受ける。高さ9mのコンコース。2階は回廊になっている。

 蒸気機関車をあしらったステンドグラスが外光を受けて鮮やかな色彩を纏っている。1階の床には、鉄道車両や信号機、ニュージーランド鉄道のマークNZRなどのモザイク画が広がり、どことなく落ち着いて優雅な感じを与えている。イギリスミント社製の高級磁器タイルが72万5千枚敷き詰められている。チケット売り場の壁に使われているのはイギリスのロイヤルドルトン社製の陶板。至るところ華麗な装飾があふれている。これらの素材は豪華に見せるためだけでなく、傷つきにくく掃除しやすいという実用性が考えられている。駅というより美術館の趣である。

◆蒸気機関車をモチーフにしたステンドグラスや、床に敷き詰められた見事なモザイク画など、駅内部はまるで美術館のように美しい。

 かつて農作物などを運んだ物流のための鉄道は今、ニュージーランドでも屈指の路線になっている。鉄道の衰退でダニーデン駅も1994年に廃止が決まっていたが、市議会が政府から1ドルで駅舎を購入し、700万ドルを投じて再建した。市民は駅舎を誇りとして、遺産として自分たちの手で存続させる道を選んだ。1階にはレストラン、2階にはアートギャラリー、スポーツ博物館がある。

 

世界一の急勾配――ボルドウィン・ストリート

 旅の6日目、午前中はダニーデンの市内観光。坂の町ダニーデンを象徴するような急勾配が住宅地ボルドウィン・ストリートにある。最大傾斜角度がおよそ19度。ギネスが認定した世界一急な坂。スコットランドの建築家が現地を見ないで設計図を作り、そのまま街を作ってしまったからという。

 沿道の家屋は地形に合わせて地面にへばりつくように建っている。長さ100mほど。走って一気に登る人もいるが、ゆっくり歩いて登る。それでも一汗かいた。記念に妻の名前で1.5ドルの完登証明書をもらう。

◆世界一急な坂道としてギネスに認定されている。

◆ダニーデンの夜景

 

6800種以上の植物が生育するダニーデン植物園

 ニュージーランド初めての植物園、ダニーデン植物園へ。桜、シャクナゲ、チューリップなど様々な花が咲き競う園内を散策。一部の桜は蕾で、冷んやりした空気が心地よい

◆ニュージーランド最古の植物園、バラ園やハーブガーデン、日本庭園、シャクナゲの谷、鳥類園などもある。

 ニュージーランド最初の大学オタゴ大学を車窓に見て、モエラキボールダーへ。6000万年以上かかって形づくられたまん丸い奇岩が太平洋の波に洗われている。引き潮のときはもっとよく見えるという。砂浜を歩くのは久し振り。

◆モエラキボールダー

 

オアマルストーンで建てられた白亜の街

 昼頃、オアマルストーンで知られる人口1万6千人のオアマルへ。教会や銀行などが白い石で建てられている。白い建物と色とりどりの花が青い空に映えて何とも美しい。

◆オアマル市街

◆桜が美しい公園

◆オアマルの銀行

◆オアマルの教会

◆オアマルの民家

 昼食は石焼きビーフステーキと野菜をゆでたもの。分厚いステーキが美味しい。途中、八重桜が美しい公園で小休止。小さい子連れの家族が遊んでいる。夕方着いたホテルでは結婚披露宴に集う着飾った人たちに出会う。かなり豪華なホテル。夕食はフラワーディナー。サラダとメインの鹿肉のステーキにそれぞれ小さなパンジーの花びらが添えられている。ステーキは臭みもなくキウイワインに合ってなかなか美味しい。妻も完食。ホテルの中庭の木々や花々が美しく、趣ある風情にしばし散策。

◆フラワーディナー

 

爛漫の春を謳歌するボタニックガーデンへ

 旅の7日目、快晴。ゆっくり9時近くにホテル出発。クライストチャーチのボタニックガーデンを散策。色とりどりの花に埋まった素晴らしい公園。あきることがない。

◆クライストチャーチのホテルの庭

◆ボタニックガーデンは、ガーデンシティと呼ばれるクライストチャーチ市民の憩いの場。

 

のどかなエイボン川パンティング

 大学生がアルバイトで竿をさす10人乗りのボートに乗りパンティング。エイボン川を静かに滑るように進む。川底がすぐそこに見える。近くを遊弋する鴨の親子がかわいい。30分ほどのんびりした舟遊びを楽しむ。博物館内で迷子になる人がいて、探しに行った添乗員はその後別行動。

◆船尾に立つ漕ぎ手が長いポールで川底を押し、船はのんびりと進んでいく。

◆エドワード朝時代の衣装を身につけた漕ぎ手でガイド役はバイトの大学生

 個人の住宅を訪問。スコーン(サンドイッチ、ケーキ)と紅茶の軽食を振舞われ、屋内と庭園を見て回る。ニュージーランドの一般の人の生活ぶりを知ることができて妻は大満足。

◆個人住宅訪問/スコーンと紅茶のひととき

 

最後の訪問地――マウント・イーデン

 午後、国内線で北島のオークランドへ。夕方、市街地にあるマウント・イーデンに登る。標高196mの死火山。オークランドの街や海が一望のもと。火口を一周し、広いドメイン公園を散策した後、日曜日で大勢の人が憩うミッション・ベイなどハウラキ湾沿いの道を走る。全長1020m、高さ43mのハーバー・ブリッジのビューポイントで写真を撮り、免税店で買い物。夕食は日本食。魚、イカ、野菜の鉄板焼を楽しんで空港へ。深夜、帰国の途につく。

◆眼前にはランドマークのスカイタワー、ラグビーの聖地イーデンパーク・スタジアムや東西両側の海も一望できる。

◆すり鉢状になった迫力ある噴火口跡

◆山頂から眺めるオークランド市街

 追記。私が訪れた翌2011年2月22日、クライストチャーチはM6.1の大地震に襲われビルの倒壊で日本人留学生28人を含む185人が犠牲になった。荘厳な大聖堂の尖塔も崩壊した。亡くなれた方々に心から哀悼の意を表したい。

 

 

 

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