New Zealand 花紀行《 前編 》

      2019/01/19

 

 

 

 ニュージーランド  New Zealand

 

かつて、これほど美しい国を訪れたことがない

 私はかってこれほど美しい国を訪れたことがない。2010年9月下旬から10月上旬、季節が日本と逆のニュージーランドは春爛漫。桜が咲き誇っていた。

 関空からの直行便で10時間55分。北島のオークランドで乗り継いで南島最大の都市クライストチャーチに降り立ったのは朝9時前。機上から雪山と満開の桜が見え、驚く。英国文化が根付く洗練された美しい町は19世紀イギリス人が開拓した。

◆機上から見た雪山

 

世界中から憧憬を集めるガーデンシティ

 桜、しゃくなげ、モクレン、椿、水仙が青空のもと美しく咲き競い、バスが進む先には桜並木が続く。鮮やかな新緑の木々の間には広々とした住宅が並んでいる。19世紀、ニュージーランド一の大富豪が建てたモナベールの邸宅の庭を散策。英国式の庭園が評判を呼び、町の人たちがこぞって真似をしてガーデンシティが生まれた。

◆ニュージーランドの9月は早春から春へ向かう季節、色とりどりの花々で街が華やかに彩られていく。

 色とりどりの花々、緑の芝生が清らかな川の流れと相俟って何とも美しい。世界で3番目に大きい「ハグレー公園」の桜並木が見事!家族連れがカートを引いてゴルフを楽しんでいる。プレー代は1000円くらい。あちこちの公園にはラグビーを楽しむ人たちの姿がある。ニュージーランド初めてのクラブはクライストチャーチに生まれた。

 市の中心部へ。高さ63mの尖塔をもつゴシック様式の大聖堂がそびえている。40年をかけ1904年に完成した美しい教会に目を奪われる。

◆クライストチャーチ大聖堂  旅行から4カ月後の2011年2月、ニュージーランド地震で大きなダメージを受けそのままになっていたが、このほど修復が決まった。

 130年前から市内を走るトラム。今でも当時のクラシカルな車両が使われ、町のシンボルとして観光客にも人気がある。

◆路面電車「トラム」  運転手の案内を聴きながら市内をのんびり観光できる。

 舟遊びパンティング・オン・ジ・エイボンは、英国の伝統的な衣装を身に着けた船頭が竿で操る観光船。町の中心を流れるエイボン川をのんびり進む。豊かな緑と澄んだ流れ、ニュージーランド固有種のダイビング・ダックが川に潜って餌をあさる。川風を受けながらポプラ並木や花々の咲き乱れる変わりゆく景色を楽しむ。大橋巨泉のショップへ。関空で両替してきたニュージーランド・ドルのレートは現地の方が4円も安く、8000円近い為替差損を被る。

 

神々しいばかりの美しさ――テカポ湖

 フルーティーなワインが美味しい昼食のあと、バスで出発。ニュージーランドも左側通行。楡の花や黄色いコーファイの花も満開。もう少しすると花々が一斉に満開になるという。牧場、山、遠くの雪山、素晴らしい眺めにただただ見とれるうちに、夕方、テカポ湖畔へ。

 

人々の深い祈りを偲ばせる祭壇の窓

 1935年に、ヨーロッパからの開拓民が建てた石造りの教会「善き羊飼いの教会」に入る。写真で見て想像していたよりずっと小さい。祭壇の向こうに大きな窓があり、ガラス越しにテカポ湖とサザンアルプスの風景が広がる。この世のものとも思えぬ美しさに声もない。

◆「善き羊飼いの教会」を背景に

◆左:テカポ湖畔に建つ善き羊使いの教会  右:フレームに美しい湖と山々の眺めをおさめた祭壇の窓

◆サザンアルプスとデカポ湖と善き羊飼いの教会

 楽しみにしていた昨夜の星空観賞は雲に覆われてとりやめとなり、今朝の遊覧飛行も強風で中止となってしまった。

 

嗚呼、マウント・クックは雨の中!

 マウント・クック国立公園へ。ニュージーランド最高峰3754mのマウント・クックは雨雲に隠れて見えない。年間降雨日数149日で幸運に恵まれないとその雄姿を臨めないという。プカキ湖畔で写真タイム。虹がかかる。ハーミテージホテルに着く頃にはかなり強い雨となる。

 国立公園散策の途中で幸い雨が上がり、雪山、氷河、平原、滝の大自然を楽しむことができた。所々雪が残っている。ここからいくつかのハイキングコースが伸びている。ホテルに戻るころにはマウント・クックがうっすらと見え始めた。

 昔、金が採れたカワラウ渓谷沿いをバスが走る。広大な牧草地と山々が続く。日本車が多い。特にトヨタ車が目に付く。昼食はバーべキュー。羊の肉が地ビールに合って中々美味しい。険しい山腹にたくさんの羊。

 世界最初のバンジー・ジャンプ場へ。カワラウ・ブリッジ43mから跳ぶ。大勢の見物人。トライする人を募っていたが、むち打ちになる人がいると聞いてやめる。

◆マウント・クック国立公園からカワラウ・ブリッジへの道


 夕方近く、アロータウン旧市街へ。金採掘の最盛期には人口7000人を数えたが、今は小さな小さな町。公園や家々の庭に桜が咲いている。

◆アロータウン旧市街の桜

 クィーンズタウンに戻って、娘や孫たち、友人にお土産を見繕う。ワカティプ湖の向こうにリマーカブルス山脈の白い峰々が連なっている。6時前、丘の上のホテルへ。湖と山の眺めが素晴らしい。

◆クィーンズタウン ワカティプ湖とリマーカブルス山脈

 夕食はゴンドラで5分、350mを上り、標高792mボブズ・ピークのレストラン、スカイライン・コンプレックスへ。展望台からはコロネット・ピーク、リマーカブルス山脈、ワカティプ湖対岸のセシル・ピーク、ウォルター・ピークなどが一大パノラマとなって目の前に広がる。8時過ぎてもまだ薄明るくミニ函館のような素晴らしい夜景が楽しめた。

◆ボブズ・ピークのレストランからの夜景

 湖を正面に見下ろしながらビュッフェスタイルのニュージーランド料理が楽しめる。キーウィフルーツのワインは美味しかったが、生ガキはないし、鹿肉のカレー、ムール貝などの料理は味が薄いか、大味で期待に反して不味かった。
 空にはたくさんの星。ガイドに南十字星の位置を聞く。アルファー、ベーターのマーカー星の下に4つの星、これが十字を描く。

 

千メートル超えの断崖を流れ落ちる滝――ミルフォード・サウンドクルーズ

 旅の4日目、夜も明けきらぬ7時半、クィーンズタウンのホテルを出発。ワカティプ湖沿いに南下。羊、牛、鹿の牧場の間を果てしないドライブ。いつの間にか雨の中。それにしても南島は不毛の地。畑がない。途中、テアナウ湖畔、エグリントン平野、ミラー湖の写真スポットに寄って、11:24南緯45度線を通過。北緯45度は稚内。モンキークリークでも写真ストップ。12時半過ぎにミルフォードに入る。ティアナウからミルフォード・サウンドに至る119㎞は、深い山あいを縫って進む変化に富んだ山岳道路。15分ほど森の中を歩き、滝に架かかる橋を渡る。


◆写真左:ミルフォード・サウンドの桟橋 右上:クルーズ船 右下:滝に架かる橋

 1時を回ってミルフォード・サウンドの桟橋に着き、クルーズ船に乗る。幕の内風弁当の昼食。

 1時半出航。デッキに出てフィヨルドの景色を楽しむ。規模は小さいが、ノルウェーのフィヨルドと同じ眺め。フィヨルド一帯はニュージーランド国内でも最も雨の多い地域で、年間降水量は8000㎜を超える。1000mに及ぶ絶壁や切り立った山々が続く。崖から流れ出る滝がいくつも並び、幻想的な風景を作りだしている。

◆岸壁を流れ落ちる幾すじもの滝

 ペンギンやオットセイが見える。外洋に出る。立っていると危ないくらい激しく揺れる。一時かなりの雨。飛沫を浴びると10年長生きするという落差155mのスターリン・フォールの滝では、雨と飛沫両方を浴び、かなり濡れる。周囲に轟音が響き、見る者を圧倒。自然への畏敬を感じさせる。

◆雨に煙るフィヨルド、太古より手付かずの大自然が残っている。携帯の電波も届かない。

 3:10帰港。4時間のドライブで雄大な景色を楽しみ、7時半過ぎ、クィーンズタウン帰着。

 

8年前に買ったセーターを今も愛用

 英国の女王が住むにふさわしい美しい景色に囲まれた町、それがクィーンズタウンの名前の由来という。中華料理の夕食の後、ショッピングへ。昨日、孫に買ったTシャツの胸にHAKAの文字。日本人にとっては縁起でもないと別のものに替えてもらう。皇太子ご夫妻がお揃いで買ったというポッサムの毛とシルクのセーターを私たちも真似て揃いで買う。2着でNZ$568(約4万円)。8年経った今も愛用しているが、軽くて暖かく、型くずれもない。

以下、ニュージーランド花紀行《後編》に続く。

 

 

 

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