Nederland dreamin' オランダ点描②

      2019/06/04

 

 

 

オランダ・チーズの聖地――ゴーダへ

 オランダを代表するチーズの産地ゴーダは、アムステルダムの南、中世の面影を残す運河に囲まれた美しい街。まろやかでくせのないゴーダチーズは、欧米ではつとに名高い。6~8月の毎木曜日に、北部のアルクマールと並び称されるチーズ市が開かれる。

 2012年8月16日朝8時過ぎの電車(インターシティー)でデン・ハーグ駅を出発。20分ほどでゴーダに到着。スーツケースを引きながら20分歩いてマルクト広場へ。計量所前ではすでに直径30センチの丸く平たいゴーダチーズが5列2段にずらりと並べられている。オレンジ色のチーズが、青空と、小さな尖塔が建ち並ぶお城のような市庁舎の建物にマッチして美しい。

◆市庁舎前のマルクト広場に並べられたチーズ

 ゴーダ市庁舎は15世紀の建造で、ゴシック建築の市庁舎としてはオランダ最古。ルネサンス式の階段が増築され、パイプオルガンのような建物が特徴。長崎のハウステンボスに再現されている。ファサードの装飾と赤と白の窓枠が可愛らしい。壁には、13世紀にゴーダが都市権を与えられた場面を再現した仕掛け時計があり、30分毎に人形が現れる。

◆ゴ-ダ市庁舎 毎週水曜日には周辺で蚤の市が開かれる。

◆赤と白の可愛い窓枠が印象的、長崎のハウステンボスには、このゴーダ市庁舎を模した建物がある。

◆ゴーダ市街

聖ヤン教会とチーズ博物館

 チーズ市は10時に始まるという。まだ40分ある。聖ヤン教会へ。奥行き123メートルのオランダで1番長い後期ゴシック建築の教会。3度の火災に遭ったがその都度改築された。聖書や王室を題材にした70枚のステンドグラスで有名。2人で€9の入場料。25番のステンドグラスは建国の祖オラニエ公を描いた17世紀の初頭の作。カトリック教徒によるものから、新教徒の時代のものまでの作品が破壊されずに同居しているのは奇跡的。

◆第二次世界大戦中にはステンドグラスを運び出して守ったため、今でも中世のステンドグラスを見ることができる。写真右:オラニエ公を描いたステンドグラス

◆聖ヤン教会外観と内部

 マルクト広場に面した17世紀建造の計量所がチーズ博物館になっている。クラシカルな建物の入り口上部に、チーズを計量している場面を表した大きなレリーフがある。ゴーダチーズの歴史や製造プロセス、チーズ農家の生活などを紹介している。昔ながらの天秤も展示され、小さなショップでは土産物が販売されている。

◆左:チーズ計量所(チーズ博物館)、右上と右中:入口上部のレリーフ、右下:チーズ博物館内部

いよいよチーズ市が始まった!

 近郷の1500軒のチーズ農家が集まるチーズ市にはたくさんの観光客がつめかけている。あちこちで繰り広げられる生産者と仲買人の取引を再現したやり取りが面白い。買い手が特殊なサンプリング器具で抜いたチーズの湿度、香り、風味などを検査し、満足すると値段の交渉に入る。最後はこの地方独特の伝統的な手打ちで幕を閉める。

 妻はチーズを持って、その重さに驚く。1個10キログラムという。木靴を履き、カラフルな民族衣装を着た若い娘さんと記念写真を撮る。木靴は存外履きやすいらしい。馬車から馬車に投げ入れるようにチーズを積み込む様は迫力満点。

 

運河が巡るチーズの名産地――エダム

 2012年8月12日9時半、アムステルダム中央駅の港側の2階のバスターミナルから路線バスに乗る。のどかな田園風景を楽しむこと40分。丸いチーズで有名なエダムは、アムステルダムの北25キロメートルに位置する運河に囲まれた町。白い跳ね橋や、レンガ造りの屋根のついた家々など、昔ながらの雰囲気を色濃く残した切妻屋根の町並みが箱庭のよう。

◆運河に囲まれたエダムの町

◆エダムの町で

◆エダムの町並み

 チーズ市は7~8月の毎週水曜日に開かれている。日曜日のこの日は残念ながら見ることはできなかったが、市が開かれる計量所前にはチーズが並べられた荷車が置かれ、雰囲気の一端は味わうことができる。壁面の装飾が美しい。

◆左と上:チーズ市が開かれる計量所前
◆丸いエダムチーズ

 小さな町なので、見所はゆっくり歩いて1時間半もあれば十分楽しむことができる。住宅街の運河沿いのベンチにしばし腰をおろし、いかにもオランダらしい眺めを楽しむ。12世紀に始まる古い町で、造船業で栄えたこともあるが、近隣が牧畜地帯となったことから16世紀にはチーズ取引の一大中心地となり、町の名前がそのまま、ここから出荷される円盤状の赤玉チーズの名前となった。

◆住宅街の運河沿いのベンチでひと休み

◆写真左から:運河、町の外は牧草地、エダムの民家はどれも可愛い

 かつてはチーズ取引が盛大に行われていた町の中心の広場にはルイ王朝風の正面が美しい市庁舎、1530年建造で現存する最古の家屋でもあるゴシック様式の博物館、15世紀に建てられたオランダ最大級の規模を誇る聖ニコラス教会などがある。聖ニコラス教会のステンドグラスは17世紀に作られて、美しい。

◆市庁舎

◆聖ニコラス教会

 

小さな港町をのんびり散策――フォーレンダム

 エダムからバスで10分ほど走るとアイセル湖畔の小さな港町フォーレンダムに着く。丁度昼時で、スーパーでサンドイッチとパンを買う。地図がなく、湖の方向が分からず適当に辺りをつけて坂道を上る。目の前がさぁーっと開けて、たくさんの船が目に飛び込んできた。漁港だが、殆どはレジャーボート。それも豪華なモーターボートで、乗っているのは年寄りばかり。

◆豪華なレジャーボートが泊まる港

◆港の銅像と

◆港には古い漁船も並ぶ

◆絵本のようなフォーレンダムの町並み

 湖沿いの路に店が並び、休日のせいかたくさんの観光客があふれている。防波堤のベンチに座り、港町を眺めながら昼食。€3のサンドイッチがなかなか美味しい。小鳥がパンくずを狙って寄ってくる。

◆防波堤のベンチで昼食

 フォーレンダムは、黒いブラウスに花模様のエプロン、レースのとんがり帽子など、昔ながらの民族衣装に出会える町として知られる。旅の思い出に民族衣装を着て、記念写真を撮る店がある。男性用や子供用の衣装もあって、娘一家の写真が思いのほか様になっていた。他に、ウナギやニシンを食べさせるシーフードの店、カフェ、土産物店が並んでいる。

 

 

 

 - コラムの広場