Nederland dreamin' オランダ点描③

      2019/07/22

 

 

 

政府機関が集まるロイヤル・シティ――デン・ハーグ

 ホテルのレストラン。世界でも有数の長身国オランダ人の朝は驚くほどの少食。極端に言えばパンにコーヒーだけ。これにハムかチーズを加えるのが標準。大学生のグループもそうだった。昼食も似たようなもの。学校でもそうだという。これでよくあの大きな体に成長し、維持できるもの。

 ハーグはオランダ南部に位置し、官庁や各国の大使館が集まる政治都市。人口50万人はオランダ第3位。ベアトリクス前女王の宮殿があり、ロイヤル・シティとも呼ばれる。

 アムステルダム中央駅から急行(インターシティ)で50分ほど。2012年8月13日の昼前に到着。途中ライデン辺りは激しい雨だったが、ハーグは曇り空。ゆっくり歩いて中心地ビネンホフ(国会議事堂)近くのホテルにチェックイン

◆デン・ハーグ中央駅 

◆デン・ハーグの街並み

 ビネンホフ前の屋台で小エビのサンドウィッチを買い、かつて宮殿の濠だったホフフェイファ池畔のベンチに腰かけて、美しい景観を眺めながら昼食。ビネンホフは、1585年にネーデルランド連邦共和国の連邦議会が置かれて以来、政府機関の中心となり、現在は、上院と下院、総理府、外務省などが入っている。広場を取り囲んで13~17世紀の重厚な建物が並んでいる。広場の中心に立つ騎士の館は1280年に建てられ、国会議事堂として使われている。教会のような荘厳なファサードを持つ。毎年9月の国会開会式には国王が出席し、街では盛大なパレードが催される。

◆写真左:ホフフェイファ池から望むビネンホフ 右上:池畔のベンチで昼食 右下:池畔のカモメ

 ベアトリクス女王の執務室があった白亜のノールダインデ宮殿前を通り、パノラマ・メスダグへ。メスダグが妻と3人の共同制作者とともに描いたパノラマ画がある。スヘフェニンゲンの海岸風景で、キャンバスは縦14m、横120m、総面積1680㎡にも及ぶ。

◆ノールダインデ宮殿

◆ノールダインデ宮殿前で記念撮影

◆写真左:坂道がほとんどないオランダは世界でも有数の自転車大国、デザインもカッコいい。
写真中:ショーウィンドウに並ぶ日本の茶器  写真右:パノラマ・メスタグ

 木陰で一休みして、歩き始めるとすぐ目の前にオランダゴシックの典型「平和宮」(国際司法裁判所)が現れる。中国人の団体のバスが次々にやって来る。1899年の第1回、1907年の第2回世界平和会議がハーグで開かれたのをきっかけに、国際連盟が常設仲裁裁判所をこの地に設立し、アメリカの鉄鋼王カーネギーの莫大な寄付をもとに1913年に完成した。現在は、国連の管轄下に置かれ、国際紛争の解決などに尽くしている。

◆左:平和宮(国際司法裁判所) 右下:平和宮の門扉

 地図によるとハーグ市立美術館が近いが、どこにあるのかさっぱり分からない。道行く人に2回尋ねてやっとたどり着く。しかし、入り口が閉まっている。何と休館日。ガイドブックの見落とし。ちょうど一人の日本人青年がやって来て落胆していた。マウリッツハイス美術館が改装中で、フェルメールやレンブラントなどの絵画が一時的に市立美術館に移されている。今日の予定を明後日に入れ替えることにして、トラムに乗ってビネンホフに戻る。

 冷えたビールが欲しくてスーパーを巡るがどこにも売っていない。ホテルの部屋のミニバーの白ワインで我慢する。朝から歩き回って、疲れ果てた。

 翌14日は、日帰りでデルフトへ(後のデルフトの項に記す)。
8月15日朝7時半、ホテルのレストランは閑散としている。9時ホテル出発。風が冷たい。スへフェニンゲンへ(後のスへフェニンゲンの項に記す)。

◆スヘフェニンゲンからトラムに乗る 

◆トラムに乗ってビネンホフに戻る

デン・ハーグ市立美術館へ

 スへフェニンゲンからビネンホフに戻り、今度は道に迷わぬようトラムに乗って、ハーグ市立美術館へ。11時開館。オランダ近代建築の父ベルラーヘの設計で1935年に完成。アムステルダムで年間パスを購入したので、オランダのほとんどの美術館、博物館はフリーで入場できる。50ユーロ(5050円)。10日ほどの旅でも十分元が取れる。

◆デン・ハーグ市立美術館 1935年にオランダの建築家ベルラーヘが設計したアールデコ様式の外観。

 マウリッツハイス美術館のフェルメールの「デルフトの眺望」やレンブラントの「テュルプ博士の解剖学講義」をゆっくり、心行くまで鑑賞。博士の手元を覗く学生たちの真剣な眼差しが、いかにもオランダらしい。館内は人がまばら。触ろうと思えば触れる近さに絵が掛かっている。こんなに無防備でいいのだろうか。絵画の他には陶磁器、ガラス工芸品などを観たが、現代アートは素通りして、1時間ほどで出る。

◆デン・ハーグ市立美術館内部 写真撮影不可のため、残念ながら作品の写真はない。

ビネンホフをのんびり散策

 トラムで戻り、「ディル・エン・カミル」へ。洒落た雑貨が並ぶ。妻が、前回来た時に買い損ねた調理器具などを買い込む。昼食後、ホテルの部屋に戻り一休み。

 ビネンホフをゆっくり見て回る。ベンチに座って池越しに重厚な建物群を眺める。マウリッツハイスの建物に入れないのは残念だが、時間にとらわれず気の向くままに行動できるのは、個人旅行の醍醐味。

◆ビネンホフはオランダ語で「内庭」の意味。敷地内には国会議事堂として使用されている「騎士の館」はじめ、総理府、外務省などの中央官庁、オランダ首相の執務室など、オランダの行政機関が集中している。

◆ビネンホフ入り口

◆騎士の館(国会議事堂)  毎年9月の第3火曜日には、オランダ女王が黄金の馬車で騎士の館に到着し、国会の開会宣言を行う。また、王室のレセプションなどその他の公式行事もここで行われる。

世界一有名な美少女「真珠の耳飾りの少女」と対面

 ビネンホフの一角にあるマウリッツハイス美術館は、オランダを代表する美術館。ブラジル総督マウリッツの邸宅として17世紀に建てられた。イタリア・ルネサンス様式を採り入れた典雅な古典主義建築は、オランダで最も美しい建物の一つといわれる。美術館としては、1822年に開館。オランダ・フランドル絵画の名作が揃っている。絵画史上もっとも有名な美少女と言われる、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」(青いターバンの少女)も好きなだけ観ていられる。日本でのフェルメール展では考えられないことである。建物には2008年7月に来たときに入館している。静寂で落ち着いたオランダ貴族の邸宅に感動したことを覚えている。

◆マウリッツハイス美術館  フェルメール以外にもオランダ黄金時代の名作が揃っている。

 緑に囲まれた広場ランのフォールハウトでは、毎週木曜と日曜日に古本、アンティークの市が開かれている。掘り出し物を見つけるほどの目利きではないので、前回訪れた時は、見て回るだけだった。

◆フォール・ハウトの骨董市

 この日の最高気温は30℃。喉も乾いた。今夕は、缶ビールにありつけた。ベルギーもオランダもビールが美味しい。安いのでお土産にスーツケースに詰められるだけ買い込む。

◆オランダの缶ビール

オランダ点描④ デルフト編・スへフェニンゲン編に続く。

 

 

 

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