PCR検査4倍で自粛なし収束へ

      2020/06/15

 

 

shigeru fujimoto 藤本 茂

 

PCR検査4倍で自粛なし収束へ」なるタイトルのインターネット記事に惹かれて、種々調べたので紹介したい。

「外出80%削減により今の新型コロナ肺炎は収束するので、5月6日迄皆我慢してくれ!」との、安倍首相の「緊急事態宣言」の発令から1か月以上たち、さらに5月31日迄の延長に、「いつになったら収束するんだ!」という思いを抱く人は多いと思う。

今後「新型コロナ」に有効な薬剤やワクチンが次々に開発され、それにより収束に向かうことは期待されるものの、その実現には半年から1年半の長期間を要すると考えられているので、目の前の感染の蔓延を阻止する誰もが取りうる方策が期待されている。

その思いのさなかに上記記事が出されたので、最初は「ほんまかいな!」という野次馬根性から調べていくと、現在の「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」の現時点での対処は、基本的には100年前に流行し多数の死者を出した「スペイン風邪」の知見を単純に延長したものであり、最新の科学技術の圧倒的な進歩等を忘れてしまった、時代錯誤な対処策のように思えて仕方がない。

100年前には、スペイン風邪に罹った人との接触を断つことにより、ウイルスの蔓延を防止することしか対処策は無かったが、現在は、ウイルスに感染しているか否かを検出可能な種々の科学的手段(例:PCR検査、抗原検査等)があり、それらを有効に活用した蔓延防止策が、当然活用されてしかるべきである。

◆スペイン風邪流行時のパンフレット例(内務省衛生局編:流行性感冒より)

◆全自動PCR検査システム(例:仏大使館より感謝状受領
(8検体/機×6機/PC1台→48検体同時検査可能)
(プレシジョン・システム・サイエンス社(PSS社))

これ以降は、理論物理学者であり九大名誉教授である「小田垣 孝」先生が、つい最近、5月5日に公開された「新型コロナウイルスの蔓延に関する一考察」からの受け売りである。

100年前は、患者の隔離が蔓延防止の唯一の有効な手段であったことは、仕方がないことである。一方、100年前には入手不可能であった、新型コロナに感染しているか否かの情報を提供してくれる手段のひとつがPCR検査であり、このデータを活用して感染者を早期に発見して隔離をして行けば、スペイン風邪当時のような外出禁止等を厳しく求めなくても収束可能なのではないかと言うのが、小田垣先生の主張である。

詳細な数式等は原著に譲るとして、要約は下記のとおりである。

(左)表2と(右)図4に示されるように、小田垣先生のモデル式で計算すると、(1)接触8割自粛や(2)都市封鎖などよりも、(3)検査4倍増(と感染者の隔離)や(4)検査倍増(と感染者の隔離)と接触5割自粛などの方が、はるかに効率が良いことがわかる。

 

 

小田垣先生は、「感染係数を小さくするために行われている人と人との接触頻度を下げる対策は、市民に極めて大きな影響を与え、さらに経済を少なからず減退させており、ひとえに市民生活と経済を犠牲にするものである。一方、隔離率を上げるために、効率的な検査体制と隔離の仕組みを構築することは政府の責任である。政府が、「接触8割減実現」のみを主張するのは、責任放棄に等しい。」と纏められており、耳を傾けるべきことであると思われる。

なお、現在の「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」では、計算結果のみを国民に伝えて、どのようなモデル計算式を使用したかは公表せず、その数式の可否についての他者の介入を一切拒む、科学者の風上にも置けない、不思議な伝統があるらしく、折角の貴重な膨大なデータが専門家会議構成員の懐で宝の持ち腐れになっていることを、見過ごすことは出来ない。
小田垣先生は、モデル式を公表することにより、より良い数式に改良したり、現在仮の数値を入れている部分に実際のデータを使用することにより、より良いモデル式に改良したい意向であるが、それは可能にはならないのであろうか?
専門家会議にオブザーバーとして、数式の専門家を入れる方がより良い結果を生むとは、首相は考えないのであろうか?

また、「陽性率」や「基本再生産数」などの、今後の動向を示唆する基本的な数値が、すぐには示せないのはなぜなのだろうか? 膨大なデータの取り扱いに不慣れな研究者が、自己の研究成果の発表のためだけにデータを利用しようという姑息な考えに陥ってはいないことを、横目で祈るだけである。

累計感染者数15,547名、死亡者数557名(5月8日19時現在Yahoo!Japan集計)という貴重な犠牲を払って得られた膨大なデータは、現時点での全国民の生死に密接に関係しており、二次や三次の感染爆発の発生時や、次回発生すると予想される新たな感染症に対処するための貴重なデータそのものであり、それら予想される事象に対して”ミスの許されない完璧な対策”を立案する必要があるという自覚をもって、今後責任ある対処をして頂きたいと思うのは、小生だけだろうか?

<蛇足>
PCR検査体制の拡充が、いつまでたっても確立されないのはどうしてだろうか?
400億円も使って国民に2枚の布マスクを配布することは、本当に的確な対処法だったのであろうか?
全自動PCR検査装置(48検体検査可能)が、例えば1機1億円かかるとして計算すると、
400機=400×48=19,200検体/日(約2万検体/日)が検査可能となると考えられる。
どこかの国会議員さんじゃ無いけれども、全自動PCR検査装置に投資して、自粛による国民の疲弊および経済の縮小を早急に回避する方が、遥かに有効な投資だったのではなかろうか・・?
「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」による強権を使って、全自動PCR検査装置を、全国の医療機器や試薬メーカー各社に作らせることの方が、マスクを作らせるよりも、遥かに効果的なのではなかろうか・・?

 

 

 

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