野に咲く花の名前は知らない。ー僕が歩んだ道④new

   

 

【前回までのあらすじ】
 僕の生い立ちに大きな影響を及ぼした人物が二人いる。一人は東京の小学校で出会った優しい宮城先生。そしてもう一人は実の母である。夫に裏切られた母は、僕をつれ東京から故郷の福岡県宗像郡赤間(現在は宗像市)に帰ってきた。僕はこの母から愛情を受けることがなく、学校では酷いいじめに遭っていた。
 赤間の祖母は"明治一代女"と称されるほどの女丈夫で、女手一つで三男三女を育て上げた。不運つづきの母の人格が壊れ、育児放棄に至ってしまったのは、立派に成人した兄弟姉妹.に対する劣等感であったのかも知れない。

 
赤間でもいじめは続く 

 母とともに東京から故郷に戻った僕は、宗像郡赤間で小学3年の2学期から生活した。いじめはここでもあった。東京では「田舎者」としていじめをうけ、赤間では「東京っ子」でいじめられた。優しい宮城先生は居なかった。僕は田舎の新生活の中で、たった一人でいじめを受けることになった。

 いじめをする輩は自分がいじめをやっていることを自覚している。「悪いことだ」と知っている。だから先生の居ないところでいじめに着手する。
 「高原君悪いですよ~悪いですよ~」と休み時間中に言い続ける。注意する者は一人もいない。

 クラス会があり、級友の「いいこと」と「悪いこと」を発表するということが行われた。あるとき僕が所用で留守にしている間にクラス会があり、用事から戻ってくると、僕の悪口が20数個も挙げられていた。留守中のことなので弁明ができなかった。それでぼくは規定の罰として廊下を十数会拭かされた。

呼吸困難で危篤状態に

 このような事が重なり僕は倒れた。「呼吸困難、過呼吸、脂汗」で起居不能となり、自覚上も外観上も今にも死ぬかという状態になった。「タダオキキトク」の報で所在不明の母が飛んできた。

 後に(成人してから)知ったことだが、病名は「ヒステリー」。ヒステリー(転換性障害・解離性障害)は、強いストレスによって引き起こされると考えられているものだが、無意識的に症状が現れ、自分自身もきっかけや原因が分からずとても苦しいものとなる。
 これほどの状態に至っても、学校側も母もいじめの実態を把握しなかった。そのため僕はこの後も一人でいじめに対抗していく。

「知識・教養」でいじめに打ち勝とう

 いじめを克服するには二つの方法しか解決法はない。
●暴力には暴力で、虐めには虐めで対抗し相手を打ち負かす。。
●書を読み、書の教養を身に着けて、知識・教養で強い人となる。
 書物には不思議な力があり、読み込んで蓄積していくと「徳」を具現化する。「人徳」が備わってくる。僕は後者を選び、図書館に通う文学少年になっていく。

 いつもの通りに図書館に入り浸っていると、ある事に気が付いた。図書カードにいつも同じ女性の名前があるのだ。気になって片端から図書カードを開いてみると、必ずその名があった。
聞けば彼女は病弱で長期欠席者で、小学校時代は一度も登校しなかったという。中学で復学し、いきなり学年一番の成績をとった。その後彼女は九大文学部に進み、弁護士となった。

つづく

【参考資料】ヒステリーとは?

 ヒステリー(転換性障害・解離性障害)は、以下のような強いストレスがきっかけとなって発症すると考えられている。
●子供のころに受けた身体的虐待や性的虐待、放置など
●信頼している人からの裏切りや暴力
●自然災害などの心的外傷が重篤化
●事故や事件を目撃するなどの強い情動ストレス
●無意識的な精神的葛藤

 ヒステリー(転換性障害・解離性障害)が発症すると、次のような症状が現れる。
●突然けいれんして意識がなくなる
●顔や体が自分の意思とは関係なく動いてしまう
●声が出なくなったり、ろれつが回らなくなる
●眼がよく見えなくなったり、まったく見えなくなったりする
●体を動かしにくくなり、ぎくしゃくしている
●立てなくなったり、歩けなくなったりする
●無表情でぼんやりしており、話しかけても返事がない
●大事な約束だったのに忘れてしまって思い出せない
●気がついたら全く別の場所にいるということがある
●自分がまるでロボットのように感じてしまいとても苦しい
●本人がまったく別人になったかのように変化する
●こちらからの問いかけにまったく関係のない答えをする
※これらの症状については、本人も意識的に行っているわけではない。僕も経験したことだが、そのきっかけや原因について本人にはまったく見当がつかないため、とても苦しむことになる。

 

 

 

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