菩提樹の木と中学時代の音楽の授業

      2022/10/02

 

 毎日、酷暑が続いていますが、皆様お変わりありませんか。日中は太陽がギラギラ輝いて外出もままならないので、日課の散歩は、17時以降少し陽が陰ってから1時間程度歩きます。よく行くのが、大濠公園です。福岡市地行の我がマンションから唐人町経由で大濠公園を1周して、大体1時間です。公園の花壇にはヒマワリの花がちらほら咲き始めています。

 さて、大濠公園の中に、子供達の遊具施設の整った小公園が2つありますが、東側の大濠郵便局側に、「くじら公園」があります。その敷地の中にめずらしい1本の菩提樹の木があります。
 今年の5月頃、パンフレットに掲載されていたので、現地を何回か調べたのですが、どの木なのかよく分かりませんでしたが、6月後半に黄色い花が咲き、花が実になる頃やっと確認できました。樹高10mくらいで、私たち林学士の専門書「森林家必携」によれば、シナノキ科、落葉高木、葉は心臓形、長さ6~9cm、中国原産、庭園植栽とあります。

◆くじら公園の菩提樹(正面)

 菩提樹は大きく分けて3種類あります。お釈迦様が悟りを開いたと言われるイチジク科インド菩提樹、シナノキ科ヨーロッパ原産の菩提樹、シナノキ科中国原産の菩提樹であり日本には中国原産の菩提樹がお寺などに植栽されています。菩提樹の花の付け方に特徴があるので写真を添付します。

 上の写真は6月、淡黄色の花が10~20個ほどついた花序をぶらさげます。花序にはヘラ状の総苞葉(葉ではない。葉は濃い緑色、総苞葉は淡緑色)が1個ついていてその3分の1くらいまで花序の軸がついています。
 下の写真は花が実になったもの。秋には葉は紅葉して落ちるが、実の付いたへら形の総苞葉は、実を付けて、ひらひらと風に吹かれて飛んで行く。

 シナノキ科の西洋菩提樹、シューベルトの歌曲に登場するのはこの種です。

 ここで中学時代の音楽の授業で習った「菩提樹」の歌詞を思い出しました。曲調は物悲しく
寂しい感じで、歌詞も当時は難解でしたが、下記を調べればよく理解できます。

菩提樹  訳詞:近藤朔風

泉にそいて 茂る菩提樹
慕いゆきては うまし夢見つ
幹には彫りぬ ゆかし言葉
うれし悲しに 訪いしそのかげ

今日もよぎりぬ 暗き小夜中
真闇に立ちて まなこ閉ずれば
枝はそよぎて 語るごとし
「来よいとし友 此処に幸あり」

面をかすめて 吹く風寒く
笠は飛べども すてて急ぎぬ
はるか離りて たたずまえば
なおもきこゆる「此処に幸あり」
「此処に幸あり」

菩提樹  上)ドイツ語歌詞:ヴィルヘルム・ミュラー、下)日本語対訳

Am Brunnen vor dem Thore
Da steht ein Lindenbaum
Ich träumt' in seinem Schatten
So manchen süßen Traum

門の前の泉のそばに
一本の菩提樹が立っている
私はその木の陰で夢を見た
たくさんの甘い夢を

Ich schnitt in seine Rinde
So manches liebe Wort
Es zog in Freud und Leide
Zu ihm mich immer fort

私はその木の皮に刻み込んだ
たくさんの愛の言葉を
楽しい時も悲しい時も
私はその樹に惹かれていた

Ich musst’ auch heute wandern
Vorbei in tiefer Nacht
Da hab’ ich noch im Dunkel
Die Augen zugemacht

私は今日もまた歩かなければいけなかった
夜中に(木の前を)通り過ぎて
そのとき まだ暗かったけど
私は目をつぶった

Und seine Zweige rauschten
Als riefen sie mir zu
Komm her zu mir, Geselle
Hier findst du deine Ruh

そしたら 枝がざわざわと音を立てた
私に呼びかけるように
ここに 私のところに来なさい、若者よ
ここで君の安らぎが見つかりますよ

Die kalten Winde bliesen
Mir grad’ in’s Angesicht,
Der Hut flog mir vom Kopfe,
Ich wendete mich nicht.

冷たい風が強く吹いた
まっすぐ私の顔に向かって
帽子は私の頭から飛んで行ったけど
私は振り返らなかった

Nun bin ich manche Stunde
Entfernt von jenem Ort,
Und immer hör’ ich’s rauschen:
Du fändest Ruhe dort!

今や多くの時間が過ぎて
私はあの場所から遠く離れた場所にいる
でも 私には絶えずあの木のざわめきが聞える
あそこで君は安らぎが見つけられたのに

 

 もう一曲、中学校の音楽の授業で印象的だったのが、「帰れソレントへ」です。曲の最初は静かな短調で始まって、突然明るく力強い長調に変わり、その後は短調と長調の繰り返しとなります。曲調ががらりと変わる、いわゆる転調を、この時聞いて、何か感動した記憶があります。

◆世界で一番美しいといわれる海岸線 ソレント・アマルフィ海岸

帰れソレントへ  訳詞:徳永政太郎

 かつての音楽教科書では、徳永政太郎の訳詞による日本語の歌詞がつけられた下のような「帰れソレントへ」が掲載されていました。

1.
うるわしの海は うつつにも夢む
君の声のごと わが胸をうつ
オレンジの花は ほのかにも香り
恋に嘆く子の 胸にぞしむよ
あわれ君は行き われはただひとり
なつかしの地にぞ 君を待つのみ
かえれよ われを捨つるな
かえれソルレントへ かえれよ

2.
ソルレントの海は たぐいなき海よ
貴き宝を 底にうずむや
いと甘き声に 君を誘うよ
あわれ君は行き われはただひとり
なつかしの地にぞ 君を待つのみ
かえれよ われを捨つるな
かえれソルレントへ かえれよ

 上記の歌詞は、私たちが習った歌詞と違うので、色々と調べた結果1番だけ探し出しました。

草原遥かに 果てなき野道を 
さまよう幾日か 旅の身あわれ
今こそ帰らん 懐かしふるさと 
幼き昔の 思い出の家
老いたる父母いかにと思えば 
わが胸痛みて 涙は頬に
ああソレント 今ぞ帰らん  
故郷の我が家へ

 

 中学時代ですから、60年以上前の授業がピアノに向かう物静かなS先生(男性)と共に、懐かしく思い出されます。

 

 

 

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