東洋の神秘アンコール遺跡群を訪ねて①

      2024/02/06

(いつものように写真のクリックで、拡大写真を見ることが出来ます。)

 

 

 

渡航解禁を待ちかねて、カンボジア・アンコール遺跡群へ

 カンボジアの密林地帯に、巨大な遺跡群が聳え立っている。世界最大の石造寺院アンコールワット、9世紀末から600年に亘って栄えた王朝の都アンコールトム、深い森に隠されたバイヨン寺院である。さらに一帯には、26人いたとされる歴代の王たちが築いた100を超える寺院が残されている。

 幅190mの巨大な堀に囲まれた東西1.5km、南北1.3kmの地域全体がアンコールワットといわれる寺院。当時厚く信仰されていたヒンドゥー教の神々が祀られている。建造は12世紀、日本では平安時代の末にあたる。

 コロナ禍で丸4年間途絶えていた海外への旅。復活の最初の行き先に選んだのはカンボジア北西部のシェムリアップ。首都プノンペンから北西200kmにあるカンボジア第5の都市。

10月19日、王宮の栄華を伝えるラッフルズホテルに荷を解く

 2023年10月19日11時前関西空港を飛び立ち、ベトナムのホーチミンで乗り継いでシェムリアップに着いたのは夕方5時20分(日本時間7時20分・時差はマイナス2時間)。関空から4人、成田から1人計5人が現地に集った。

 中国資本により最近完成した国際空港はシェムリアップの郊外1時間のところにあり、宿泊先のラッフルズホテルに入ったのは7時過ぎ。王家の人々が暮らした宮殿を1932年に改築して造られたヘリテージ(遺産)ホテルで、その豪華さに驚く。夕食に注文したパスタ、日本のファミレスで食べれば1人千円程度のものが2人で1万円。

左)アンコール遺跡群地図 右上)アンコールワット寺院地図 右下)アンコール遺跡群共通入場券/発券場で顔写真入りの入場券を作成する

深い森に立ち並ぶ世界最大の石造寺院

 10月20日(金)早朝5時、朝日鑑賞にワゴン車で出発。日本で検索した予報では雨だったが、雲はあるものの晴れている。

 5時23分アンコールワット着。まだ暗い。足元を懐中電灯で照らしながら広い堀を渡る。最初に目にするのは3つの巨大な門。ひと際大きく造られた中央の門は王専用。柱や壁は豪華な彫刻で埋め尽くされ、石に彫ったとは思えないほどの立体感と躍動感に溢れている。複雑かつ繊細な模様とあわせ、当時の文明の高い技術力がうかがえる。

上)アンコールワット全景(ネットより拝借)、下左)王の門 下中)象の門、下右)アンコールワット入り口の左右に鎮座する一対のシンハ(獅子)の像

 門を抜けると見えてくる中央伽藍。5本の塔が立つ最も神聖な場所とされる。長さ350mの石造りの架け橋(参道)を渡る。欄干にはいくつもの頭を持つ蛇、水を司る神ナーガの像がある。豊穣を象徴している。虹はこの世と神々の世界をつなぐ架け橋と信じられ、人々は虹の架け橋を渡ることで中央伽藍、神々の世界に入っていく。

上)朝靄にかすむ中央伽藍 下左と中)中央伽藍への参道の左右にある経堂 下右)王の門と左右に控える象の門

 中央伽藍の全景が望める広場には、これまでどこにいたのかと思えるほど多くの人が詰めかけている。思い思いの場所に陣取り、昇る朝日を待ち構える。水面にアンコールワットの全景が映る撮影のベストポジションを狙って聖池の浅瀬に入り込む人もいる。ほとんどが欧米人。アンコール芸術に魅せられて移住し、毎日来ているという人が話しかけてきた。
 朝まだき、水面に映える寺院の姿はまさに絶景。

上2枚)聖池に映る中央伽藍 聖池の浅瀬に入りこむ人の姿も。

中央伽藍に刻々と昇る朝日を撮った!

 6時15分、日の出。春分の日と秋分の日には高さ65mの中央塔の真後ろから日が昇る。秋分の日から1ヶ月近く経ったこの日は大きく右に逸れた位置から昇ってきた。ある程度は覚悟していたが、あまりのずれに言葉もない。朝から蒸し暑くじっとり汗ばむ。

左)6時を回り白み始める中央伽藍と聖池、中)中央伽藍右端に朝日が昇り始めた、右) 中央伽藍右端に昇る朝日

◆感動の時―聖地の夜明けを見守る人々

上)王の門(中央)と象の門(左右脇)、下左) 王の門、下中) 象の門、下右) 門の壁に彫られた彫刻

アンコールワット完成50年後に造られた、アンコール朝全盛期の宗教都城遺跡

 ホテルに戻って朝食をとり、8時40分出発。10数分でアンコールトムへ。アンコールワットの北3kmにあるアンコール朝全盛期の宗教都城遺跡。アンコールワットの完成から50年後の12世紀に造られた一辺3kmの街に、10万人が暮らした。周囲を堀が囲み、さらに高さ8mの城壁が取り囲む。

 堀に架かった130mの橋を渡る。橋の欄干にはヒンドゥー教の神々の石像が並ぶ。

上3枚)橋の欄干に並ぶヒンドゥー教の神々の石像

 

 9時15分、広大なアンコールトムの中心バイヨン寺院へ。砂岩でできた高さ23mの南大門をくぐる。

左) アンコールトムを囲む大海原を模した堀(環濠)、右) アンコールトム バイヨン寺院の南大門

左) アンコールトム バイヨン寺院の南大門、右)南大門をバックに

穏やかなまなざし「クメールの微笑み」が語りかけてくるもの

 四面仏塔の2m以上もある巨大な観世音菩薩の顔「尊顔」が見下ろしている。にっこりとほほ笑むもの、じっと前を見据えるもの、不敵に笑うものとその表情はさまざまで「クメールの微笑み」として知られる。

◆南大門 観世音菩薩の尊顔

上)バイヨン寺院、下3枚)バイヨン寺院には52の塔が

 

栄光の叙事詩を刻む精緻な技に息をのむ

 バイヨン寺院の外側の第一回廊の壁には細かに彫られた素晴らしい浮彫(レリーフ)がどこまでも続いている。主なモチーフはチャンパ軍とクメール軍との戦闘場面や戦士たちの絵柄。大乗仏教からヒンドゥー教寺院へ改宗された時期に彫られ、ヒンドゥー神話や伝説、インド叙事詩が中心となっている。上部テラスと第一回廊の間には13世紀に造られた第二回廊がある。たくさんの小部屋が回廊で結ばれている。

◆バイヨン寺院第1回廊の兵士のレリーフ

左) 槍を持って歩くクメールの兵士、中) 食糧などを積んだ牛車を引く人々、右) 舞う女神像

◆クメール軍の船と兵士

左)クメール軍の船、中、右) 塔の東西4面に彫られた観世音菩薩の尊顔

左) 男根の彫刻、中)尊顔と回廊、右) 尊顔

左) 第2回廊内部、中) 仏像のレリーフ、右) 象の戦車

- ②へ続く -

 

 

 

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