春のフランス花紀行②

      2021/12/01

 

海と空のあいだに――天空に暮らす鷲の巣村「エズ」 

 高い丘の頂上に城壁を巡らし、イスラム教徒の侵入を防いだ「鷲の巣村」と呼ばれる要塞村がそのまま保存され、コート・ダジュールに多数存在する。そのうちのエズには、真っ白な石で舗装された迷路のように入り組んだ狭い通りと石造りの家々が並ぶ。そのほとんどは金銀細工や宝石を造る職人の仕事場になっている。

◆上:まるで鷲のように下界に目を配りながら暮らした「エズ」の人々、
 下左と中:エズへ向かう道、下右:道標 

エズ 鷲の巣村:スライドショー(横5枚、縦2枚)

 ニースからバスで20~30分、海に向かって垂直に切り立った崖の上に位置するエズに付けられた異名は、「海と空の間に浮かぶ村」。海を真下に見下ろし、空に限りなく近い中世の村は、現実離れしたおとぎの国を思わせる。

 敵の侵入から身を隠すように、秘かに築かれた村は近代化とは無縁の世界。石を積み上げて造った町並みには、中世の時間が今なお流れているかのよう。

◆村の中心だった高台の城跡が庭園となっており、庭園の崖から見下ろすフェラ岬、地中海の眺めは圧巻。

◆エズ村の朱い屋根ごしに見下ろす海の青は息をのむ美しさ

エズの村:スライドショー(横4枚、縦3枚)

バラ園:スライドショー(横5枚)

 ニース市内に戻って、3時25分シャガール美術館へ。4時までの短い時間だったが色鮮やかな作品を鑑賞。

◆シャガール美術館

 ◆シャガール美術館は正式名を「マルク・シャガール聖書のメッセージ美術館」と言い、シャガールから寄贈された17点の連作「聖書のメッセージ」を元に、1973年に開館した。ニースには他に5つの美術館がある。

シャガールの作品:スライドショー(横14枚、縦3枚)

◆花屋の店頭

 アンジュ湾に面したイギリス人の散歩道「プロムナード・デ・ザングレ」、ニース市民の生活が伺える旧市街のサレヤ広場、シミエ地区を観光し、7時レストランへ。夕食は色鮮やかな生野菜がたっぷりの「ニース風サラダ」を楽しむ。

セザンヌが愛した風景が広がる「エクス・アン・プロヴァンス」へ

 旅の3日目、5月7日も南仏はよく晴れて快適。9時にホテルを出発し、11時半近くセザンヌの故郷エクス・アン・プロヴァンスへ。

 「エクス・アン・プロヴァンス」は、プロヴァンス伯爵領の首都として繁栄した泉の街。15世紀初めに大学が出来、高等法院が置かれ、プロヴァンス地方の法と政治と学問の中心地になった。17世紀の優美な建築物が多い。

 セザンヌはこの地で生まれ、この地で息を引き取った。エクスには彼の作品はほとんど残っていないが、郊外には彼が描いたプロヴァンスの風景が広がっている。夏には国際的な音楽祭が開かれ、多くの観光客で賑わう。エクスの名物菓子カリソンが上品な甘さで美味しい。アーモンドとメロンのシロップを混ぜてペースト状にしたものを小さなひし形の型で抜き、砂糖コーティングしたもの。

◆エクス・アン・プロヴァンスの伝統菓子「カリソン」

◆プロヴァンスへの道

◆セザンヌのアトリエ

 旧市街の北に位置するレ・ローヴの丘にある。セザンヌが晩年の4年間を過ごした。2階のアトリエはセザンヌの生前のままに保存され、テーブルの上には果物や水差し、キューピッド、骸骨などが置かれている。野外制作のときに使った画材カバンや外套も残っている。

セザンヌのアトリエ:スライドショー(横5枚、縦1枚)

 街の中心ド・ゴール広場には、エクスで一番大きな噴水があり、セザンヌの像が置かれている。広場からプラタナスの並木が美しいミラボー通りを散策。

◆左:街の中心ド・ゴール広場の噴水、右:セザンヌの銅像

ミラボー通り:スライドショー(横6枚、縦1枚)

プロヴァンスの街:スライドショー(縦2枚、横8枚)

◆プロヴァンスの教会

城壁に囲まれた旧市街にはかつて法王庁がおかれていた 

 野菜の煮込みラタトゥイユの昼食後、4時過ぎアヴィニヨンへ。7人の法王が暮らした法王庁宮殿がある。

 中世の城壁に守られ、ゆったりと流れるローヌ川のほとりにたたずむ古都アヴィニヨン。法王庁がこの街に置かれていた時代の名残の法王庁宮殿(世界遺産)や童謡で有名な「アヴィニヨンの橋」など見所が多い。 夏の演劇祭の時期には町全体が劇場と化し、世界中から訪れる観光客で賑わう。

◆アヴィニヨンの城壁

 法王庁とフランス国王の間で勢力争いが絶えなかった時期があった。そんなおり、法王に選ばれたのが元ボルドーの大司教でクレメンス5世。1309年、フランス王の圧力に屈する形で法王庁ごとアヴィニヨンに移住する。以後およそ70年の間に、7人の法王(すべてフランス人)がアヴィニヨンで即位。アヴィニヨンは、ローマに代わるカトリックの中心地として繁栄を極める。

◆法王庁宮殿

 1334年から1352年にかけて建てられたヨーロッパ最大のゴシック宮殿。壁の高さ50m。厚さ4m。法王庁全体の面積は1万5000㎡。聖像などはフランス革命の際にすべて破壊されたため、内部はがらんとしている。

法王庁宮殿:スライドショー(横13枚、縦9枚)

法王庁宮殿内部:スライドショー(横7枚、縦1枚)

◆アヴィニヨン橋(サン・ベネゼ橋)

 12世紀の完成当時は、向こう岸のフィリップ美男王の塔まで続く全長900mの橋だったが、度重なるローヌ川の氾濫で、現在は4本の橋桁と橋を造った聖ベネゼを祀るサン・二コラ礼拝堂を残すのみとなっている。「アヴィニヨンの橋で踊ろよ、踊ろ……」という歌で知られる。

アヴィニヨン橋:スライドショー(横5枚)

- 春のフランス花紀行③に続く -

 

 

 

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