新日本歳時記／寿禄会版・花時雨

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◎岡山・オランダ通りの昼下がり

　岡山市を代表する繁華街として知られる表町商店街。その一つ北側の通りは、日本で最初の西洋医学を学んだ女性産科医である楠本イネ、通称「オランダおいね」に因んでオランダ通りと呼ばれている。イネはここで７年間、父シーボルトの弟子であった石井宗賢に医学を学んだ。
　しかし、イネの岡山生活は悲劇で終わる。師の宗賢にレイプされ妊娠したのである。宗賢との別れの際に乳飲み子を抱いたイネは宗賢を「人でなし」と罵ったという話も伝えられている。
　その乳飲み子の楠本高子も長じるに及んで祖父シーボルトや母イネ同様に医学に志した。しかし彼女もまた修行中に朋輩の医師によってレイプされ、男児を産む。母子二代にわたる悲劇であった。
　結果はある意味で母イネよりも深刻だったかも知れない。イネは医師であり続けたが高子はそれによって医業を断念したのである。
　近年高子は、松本零士の「銀河鉄道９９９」に登場するメーテルのモデルとして有名となった。オランダ通りを紹介するサイトにもその説が紹介されている。

　しかし、ウィキペディアの「楠本高子」の項は、この話を紹介した後で次のように述べている。
　 「正確に言うと、メーテルの造形は松本がオリジナルのものとして造りあげていたが、その後、ある機会に楠本高子の肖像写真を見て「この女性こそ、自分がずっと思い描いていた女性だ！」と衝撃を受けた。」（https://ja.wikipedia.org/wiki/楠本高子：参照 2023年4月13日））
　どうやらこれが真相に近いようだ。