悠久のトルコ時間旅行<中編>パムッカレからコンヤ、カッパドキア、カマン・カレホユック考古学博物館へ

      2018/11/19

 

       

 

東西交易路の隊商宿――「ケルバンサライ」

 旅の6日目の5月25日は、コンヤから250km離れたカッパドキアへ向かう。まっ平らな水平線と真っすぐな道路がどこまでも続く。
 シルクロードに入る。ときどき羊の群れが視界に現れては消える。遠く4000mを超える山脈が見渡せる。1時間ほど走って隊商宿ケルバンサライへ。重厚な造りの石の門が歴史を感じさせる。1229年、セルジューク朝時代に建てられた最大規模のもの。中庭には礼拝所があり、周囲を取り囲む回廊式の建物には、食堂、宿泊施設やラクダをつないでおく場所などが設けられていた。

◆隊商宿「ケルバンサライ」の重厚な門

 

地下8層からなるカイマクルの地下都市

 昼過ぎ、いくつかある地下都市のひとつカイマクルの地下都市に寄る。紀元前2000年頃から人が住むために造られ、その後、教会の礼拝堂、学校の教室、寝室、厨房、食糧庫や井戸、ワイン工場も造られ大規模な共同生活が行われていた。敵から逃れるため2万人が住んだという。地下8階まであり、大きな通風孔が各階に通じている。通路はかなり急で低い天井に身をかがめて進む。固い岩をよく掘ったもの。

◆深さ約20メートル、アラブ人の迫害から逃れた約5000人のキリスト教徒が暮らしていたと考えられている。

 にぎやかな小学生の団体が見学に訪れていた。鱒の塩焼き、レンズ豆、カッパドキア名産の白ワイン(20リラ=500円)の昼食が美味しかった。トルコ石の店に寄る。ノアの箱舟で知られるアララト山産出の模様入りの石がきれいだった。

 

世界複合遺産 ――「カッパドキア」へ

 カッパドキアに入り、最初の写真スポットゼルベの谷へ。次に岩がピンクに見えるローズバレーへ。頭に岩を乗せた茸のような奇岩が3本並ぶ3人姉妹を見て回る。

◆写真上:カッパドキアのゼルべの谷  下左:ローズバレー(ピンクの岩) 下右:3人姉妹

 露店でサクランボが1キロ10リラ(250円)で売っている。2人では多すぎるので何人かでシェアーする。甘くて美味しい。雷が鳴っているが雨は降らない。

 

洞窟ホテルではエアコンなしの部屋を引き当てる

 夕方、今夜から連泊となる洞窟ホテルへ。細い通路を右へ左へ。屋上に出たと思うと、今度はレストランの中を通り、まるで迷路。くじ引きで決まった部屋は奥まった1室。もちろん窓などなく外は見えない。当然、暗い。あちこち段差がある。天井も低い。部屋の外に出るとき、ガラス扉のカーテンが閉まらず中は丸見え。くじなので文句も言えない。聞いてみると最低の部類の部屋を引き当ててしまったらしい。
 夕食後、岩山に映し出されるプロジェクションマッピングを観に出かける。30分ほどで、紀元前から近代までのトルコの歴史を辿る。

◆岩山に映し出されるトルコの壮大な歴史スペクタクル

 屋外にじっと立っていると寒かった。オプションで、気球に乗って上空からカッパドキアの岩の景色を観に出る人は明朝4時の出発という。何年か前に落下して日本人観光客が亡くなる事故があった。それからツァーのコースから外され、オプションとなっている。同行の31名のうち参加希望者は4名。参加する人はツァーに離団届を出さなければならない。個人で勝手に行くということらしい。私たちはゆっくり寝る方を選ぶ。部屋に戻ると少し暑い。エアコンはなく、がたがた音がする扇風機が1台あるのみ。他の部屋はエアコンがついているというのに。

 

絨毯販売の"強圧?"を逃れて・・・

 翌26日も、終日カッパドキアの岩の風景巡り。観光前に名産のじゅうたん工房へ。2500年前から始まる二重織は素晴らしい。絹で織ったへレケは300年は使えるという。手触りが何とも言えない。壁掛けの絵も筆で描いたよう。店員の売り込みが激しい。国営の店で売り上げはすべて織子のもとに行き、店の利益はないという。我が家の床はフローリングで、じゅうたんの類は玄関マットくらい。敷きっぱなしは衛生上もよくない。さっと輪の外に出て無関心を装う。断り切れずに高価な買い物をする人も何人か。

◆トルコ絨毯の売り子 

◆壁掛け・・・まるで絵画のようだがこれも織物

 

岩窟の中に隠されたキリスト教教会——「ギョレメ野外博物館」

 ギョレメ野外博物館には、岩山をくり貫いた洞窟住宅や岩窟教会が多数。30以上ある教会には12~3世紀に描かれた壁画が残されている。保存状態のよいキリストの生涯などのフレスコ画を観る。ごつごつした岩の中に、想像もできない色鮮やかな壁画や見事な装飾が残っている。残念ながらキリストの顔がイスラム教徒により削られている。土曜日でたくさんの観光客。気温は24℃だが、日が照りつけ暑い。

◆イスラム教の迫害から逃れるため、キリスト教徒が岩を削った洞窟に教会や修道院を造ったもの。

 ウチサールの洞窟レストランでつぼ焼きケバブの昼食。シェフが目の前で壺を割って見せる。

◆つぼ焼きを割るシェフ

 食後、陶器の店へ。ヒッタイトの柄の器や皿が並ぶ。製作実演を見学。鮮やかなトルコブルーの器を記念に購入。名のある陶芸家の作というぐい吞みのような器。80リラ(2000円)。妻はお土産に鍋敷きを買う。

◆陶器店で製作実演を見学 

 

立ち並ぶキノコ状の巨岩

 ゼルベの谷には、キノコ状の岩柱が林立する。まさに奇岩。トルコの旅行案内でよく見る光景。

◆写真上:洞窟住居群  下:長い年月をかけて自然が創り上げた奇岩アート

 トルコアイスの屋台。ねばりのあるアイスクリームを棒にからめて、面白おかしく壺から上げ下げして見せる。5リラ(125円)。ラクダ岩を見て夕方ホテル帰着。
 夕食後、ベリーダンスショーへ。たくさんの観光客。前方の人が立ち上がってずっとビデオを撮っている。後方の席だったのでショーがよく見えない。前座はつまらない内容で肝心のベリーダンスもよく見えずでがっかり。

 

日本&トルコ友好の絆—―「カマン・カレホユック考古学博物館」

 8日目の27日は移動日。450km離れた黒海近くの街サフランボルに向かう。カッパドキアから2時間ほど走ってカマン・カレホユック考古学博物館へ。日本のアナトリア考古学研究所が1986年以来発掘したものを展示する博物館。博物館ごとそっくりトルコに寄贈。さらに地域住民対象に考古学講座を開いて知識、情報の普及に努めてトルコ政府から高い評価を得ている。筑波大学から来ている研究者から説明を受ける。
 2008年、ヒッタイトの人類最古の鉄文明の定説を覆すさらに1000年古い鉄の塊が出土したというニュースは、世界を驚かせた。アゼルバイジャンから来たものとか。トルコで1番大きい日本庭園を散策。庭の池には日本から贈られたまだ小さいたくさんの錦鯉が泳いでいた。

◆カマン・カレホユック考古学博物館と展示物

 カマンからさらに2時間走行。走れど走れど大平原。首都アンカラのレストランで昼食。運動公園の中にあり、折からの日曜日、たくさんの家族連れで賑わっている。馬術競技が行われ、馬上の少女のポニーテールが跳ねる。きびきびした動作と相まって何とも可愛らしい。夕方5時半、サフランボルのホテルに到着。

以下、トルコ紀行・後編へ続く。

 

 

 

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