台湾浪漫紀行

      2022/09/01

◆蓮池潭の龍虎塔

 
 

 


 

老人大学のクラスメイトと3度目の台湾へ

 2008年5月20日、老人大学のクラスメイト7人と、関西空港から3泊4日の台湾旅行に出発。知り合って2年、お互いの気心が知れての初の海外旅行となった。幹事役について行くだけの気楽な旅だった。

 入社3年目の1971年5月、同期入社の友人と2人、初めての海外旅行先に選んだのが台湾。爾来台湾は3度目になるが、親しみが持て何度行ってもいいと思える国のひとつ。バスで移動するツァーがほとんどのなか国内線や新幹線で移動し、Lグレードのホテルに泊まる豪華な旅に期待も膨らむ。

 11時過ぎ、キャセイパシフィック航空で出発。同行の銀行出身の人と隣り合わせになる。損保出身の私と話が合い、3時間の飛行も退屈することなく午後1時前に台北に到着。時差マイナス1時間。晴れて28℃。昨日までは雨で寒かったが、明日からは32℃の日が続くという。台北市内を抜けて国内線の松山空港へ。101階建ての超高層ビルが見える。4時前、復興航空(トランスアジアエアライン)機が離陸。70人乗りのプロペラ機。台北市街が一望のもと。海岸線沿いに南下し、35分の飛行で台湾東部の花蓮へ。思いの他大きな都市。空港も大理石造りの立派なビル。5時前ホテルに入る。

◆台北松山空港

 6時には夕食の丸テーブルを囲む。8人は1つのテーブルにちょうどいい人数。1組の夫婦を含む男女4人ずつ。広東料理はちょっとクセがあり、味はもう一つだったが、ビール、紹興酒に話が弾む。

 


 

花蓮阿美(アミ)文化村

台湾の原住民「アミ族」の伝統舞踊を観賞

 7時半花蓮阿美(アミ)文化村へ。1時間の民族ショーを楽しむ。華やかな衣装をまとった女性たちと筋骨隆々の男性たちが豊年踊りや結婚式の踊りを舞い、バンブーダンスを披露する。同じような踊りが続いて飽きてしまったが……。

◆アミ族の踊り

 ホテルに戻って、1つの部屋に集まり、オールドパーを飲みながら夜遅くまで話し込む。

 


 

太魯閣(タロコ)峡谷

長い年月をかけ、渓流がえぐり取った大渓谷の迫力に息をのむ 

 5月21日、ホテルの部屋からかなり高い山々が連なっているのが見える。曇り空。冷房で寒いくらいだが、今日行く高雄は32℃になるとの予報に、半袖にする。6時、ビュッフェの朝食。あまり美味しくない。NHKの衛星放送が受信できるので、日本国内を旅行するのと変わらない。

 8時前ホテルを出発。30分でタロコに入る。太魯閣国家公園(国立公園)。台湾八景のひとつ。日本統治時代に国立公園タロコ峡の記念切手が発行され、今も手元の切手帳におさまっている。面積9万2000ヘクタール。
 太魯閣渓谷は、台湾東部の花蓮県を流れる立霧渓が、かつてのサンゴ礁の海底が隆起してできた3000m級の山々の大理石の岩盤を侵食して形作った大渓谷。タロコ族の言葉で「連なる山の峰」を意味する。高さ1000m以上の切り立った岩壁や奇岩怪石、岩石と水流の景観が美しく台湾屈指の人気観光地。渓流は山に沿って流れ、20㎞、徒歩5時間の遊歩コースになっている。赤い慈母橋から2㎞はエメラルドグリーンの水が流れる緑水歩道。あまりの美しさに目を奪われる。

 8時40分頃からタロコ峡の所々にあるビューポイントでバスを降りて散策する。

九曲洞 タロコ峡で最も素晴らしい景観が見られる場所。
燕子口 岩壁に多くの小さな洞穴があり、そこで無数のツバメが巣を作っているため、燕子口と名付けられた。
慈母橋 赤い総大理石造りの橋。
錐麓大断崖 高さ200mの大理石の1枚岩がそそり立っている。

 途中休憩所で飲んだローズ&ブルーベリーのハーブティーが思いの他美味しかった。一時雨が降り、蒸し暑くなる。大理石の峡谷は筆舌に尽くしがたいほど雄大で、素晴らしい眺めが続いている。

タロコ渓谷:スライドショー(横5枚)

◆左)錐麓大断崖:大理石の巨大な一枚岩、右) ローズ&ブルーベリーのハーブティーを楽しむ。

 東椰館で、同行の人たちは大理石やヒスイの数珠、ブレスレットの土産を買う。11時には同じ店にあるレストランで田舎料理の昼食をとり、花蓮空港へ向かう。檳榔(ビンロウ)売りの店が道路の両側のあちこちにある。檳榔はヤシ科の植物で、種子は嗜好品として、噛みタバコに似た使われ方をする。以前来た時には、どこの店もミニスカートの若い娘がお色気を振りまいて売っていたが、今はごく普通の店ばかり。

 


 

五甲龍成宮

 12時40分、華信航空公司(マンダリンエアウエイズ)機が離陸。50分の飛行で1時半、高雄へ。昨年新幹線が開通して客を奪われ、国内線航空会社が2社倒産したという。
 高雄は世界第3の港を擁する台湾第3の都市。西は台湾海峡、南はバーシ海峡に面する。1年を通じて暖かく、南国ムードが漂う。
 2時過ぎバスが出発。蒸し暑いが、これでも昨日の雨で涼しいという。

 海神・五甲龍成宮へ向かう。日光東照宮のような彫刻が素晴らしい。2時半頃参拝見学。

◆海の神様 五甲龍成宮

◆海の神様 五甲龍成宮 彫刻が素晴らしい。

 後、高雄で一番大きな人造湖澄清湖の散策に向かう。375ヘクタールの敷地内には公園や水族館、宿泊施設があり、市民の憩いの場になっている。前回妻や娘と来た九曲橋や中興塔からの眺めは人気が高い。

◆左)杭州の西湖十景を模して造られた高雄の澄清湖の九曲橋。後方は円山大飯店、右) 澄清湖畔

 蒋介石総統が好んで食べたというハチミツの試食を楽しむ。蒸し暑い。

◆蒋介石総統のために作られていたローヤルゼリー

 


 

龍虎塔

心を清め福を呼ぶ台湾一のパワースポット

 一面に蓮の花が咲く湖の周辺に極彩色の建造物が立ち並ぶ蓮池潭へ。龍虎塔はパワースポットとして人気がある。龍の口から入り、虎の口から出るとご利益があるといわれている。

◆蓮池潭の龍虎塔 龍の口から入り虎の口から出るとご利益がある(善人になれる)といわれている。

 龍虎塔前で写真を撮り、4時過ぎ寿山公園へ。高雄市街と港の全景が一望のもと。夜景が美しいことで知られる。中国宮殿建築様式の中烈祠や動物園、石灰岩の洞窟があり、野生の台湾ザルが生息する。

◆左)寿山公園 高雄市街が一望のもと 中央85階建て台湾2番目のビル、
右) 寿山公園から見る高雄港 軍艦も見える。

 4時半、愛河沿いのホテルに入る。Lグレードのホテルだが部屋は狭い。部屋からは眼下に高雄の中心を流れる愛河が見える。両岸は緑道になっており、デートスポットとして人気がある。ドラゴンボートが4~5隻練習している。NHKBSで、プロ野球セ・パ交流戦「広島―ソフトバンク」戦を放送していた。

◆高雄のホテルから見る愛河 ドラゴンボートが練習している

 6時、近くの別のホテルで上海風創作中華料理の夕食。あっさり味でいてなかなか凝った美味しい料理。8人で3本のビールと1本の紹興酒に酔い、満腹となる。

◆左)上海風中華料理の夕食、右) フカヒレの姿煮

 


 

高雄 六合二路夜市

 7時半頃から、高雄随一の六合二路の夜市を散策。夕方から歩行者天国となる大通りに、高雄名物のシーフードやパパイヤミルクなどの屋台が立ち並ぶ。
 スリが多いので、貴重品はすべてホテルのセイフティボックスに入れてきた。マンションやビルの部屋の窓やベランダには泥棒除けにみな鉄格子がはめてある。ゲテモノや臭いのきつい食べ物の店ばかりで、通り過ぎるだけ。8時にはホテルに戻る。修学旅行の日本の高校生の大集団がいて、驚く。旅も半ば、皆疲労がたまり、夜の部屋での飲み会はとりやめる。

六合二路夜市

 5月22日、旅の3日目。出発前に雨があがり、ホテルの周辺を散歩。高校生の大集団が先に出発して行った。8時出発。ショッピングセンターに寄ったが何も買うものがなく、退屈するばかり。

◆左) 雨上がりの高雄のホテル前の愛河Love River 河畔の朝の散歩、
右) 愛河畔 右のブラウンの建物が宿泊したホテル

 


 

延平郡王祠

 台湾西南部の台南へ。台湾で最も早期に開発された都市。台湾の京都といわれ、歴史的な街並みや建造物が数多く残る。

 10時、鄭成功を祀る延平郡王祠へ。30分の滞在。また小雨が降り始める。鄭成功は1624年長崎の平戸に生まれる。清に滅ぼされようとしている明を擁護し、抵抗運動を続け、台湾に渡り鄭氏政権の祖となった。近松門左衛門の人形浄瑠璃や歌舞伎の「国姓爺合戦」で、民族的英雄として描かれている。オランダ人を討ち払ったことから孫文、蒋介石とならぶ「三人の国神」として尊敬されている。

◆左) 台湾をオランダから解放した英雄鄭成功とその一族を祀る延平郡王祠、右上) 鄭成功の像、
右下) ガジュマルの樹の横で 左は現地添乗員

 


 

孔子廟

 10時半、孔子廟へ。蒸し暑い。ジェット戦闘機がしきりに頭上を飛んで行く。孔子廟は各地にあるが、台南の孔子廟は台湾で最古のもので、台湾最初の学校としても知られる。1666年に創建されて以来、改修が重ねられ1917年現在の姿になった。清朝初期から伝わる品々が展示されている。「全臺首学」の門構えは荘厳で美しい。

◆儒学発祥の地でもある台湾最古の孔子廟 国の第一級古跡に指定されている

 


 

赤嵌楼

 11時過ぎオランダ人が造った城、赤嵌楼へ。ブーゲンビリアの紫の花が美しい。夕日が美しいことから台湾八景のひとつとされる。1653年に建てられたが、当時の建物はほとんど残っていない。1661年鄭成功がオランダ人を駆逐して首府となったが、1721年の反乱によって破壊され、城壁のみになった。砂糖水ともち米の粉、石灰、牡蠣の殻を混ぜてつなぎにして積み上げたレンガは見事。

赤嵌楼:スライドショー(横5枚)

 11時半、台南料理の昼食。うす味でなかなか美味しい。

◆台南名物料理の昼食 ビール3本で495元(1,740円)

 1時半、台南駅へ。だだっ広い駅。2時前台北行きの新幹線が発車。各駅停車。沿線は緑や水が多い。丘の上を走行。平原の中の駅もある。街中の駅が珍しい。日本の新幹線とはちょっと違った感じ。最高時速293㎞。1時間43分の旅。定刻に台北着。日本の運行システムを取り入れており時間は正確。

◆台湾新幹線

 


 

国民革命忠烈祠

中華民国建国に殉じた33万柱の英霊が祀られている

 台北は、中華民国の首都。政治、経済、文化の中心地で人口265万人。
 4時前、国民革命忠烈祠へ。辛亥革命を始め、中華民国建国や日中戦争などにおいて戦没した革命家や兵士の英霊を祀る祠。衛兵交代のセレモニーで有名。陸・海・空軍より選抜された兵士が1時間交代で大門と大殿を各2名ずつで守っている。銃を交換または振り回す儀式が珍しい。強い雨の中、4時、海軍から空軍への衛兵交代式を観る。

◆台北中烈祠 1時間ごとに行われる衛兵交代のセレモニー 白(海軍)から紺(空軍)へ

 


 

中正紀念堂

濃い青の瑠璃瓦と純白の壁面が中華民国の国章「青天白日」を表現

 4時半、初代総統蒋介石の顕彰施設国立台湾民主紀念館(中正紀念堂)へ。中国の伝統的な宮殿陵墓。「中正」とは蒋介石の本名。蒋介石逝去5年後の1980年3月完成。内部を見学している間に雨があがる。

◆中正紀念堂 高さ70mの白亜の中国建築

◆左) 中正紀念堂 緑豊かな広大な敷地内には庭園や池などもある、右) 蒋介石総統像

 5時、龍山寺へ。1738年創建。1919年日本統治時代に大規模修繕。台北市内最古の寺院で、故宮博物院、中正紀念堂、台北101とならび四大外国人観光地のひとつ。本尊は観世音菩薩。道教や儒教など様々な宗教と習合しており、孔子や関帝、媽祖など大小100以上の神を祀る。7つの香炉を順に廻りながらそれぞれの神に参拝する。寺はいつもお参りの人々で賑わっている。免税店に寄ったが、やはり買いたいものはない。

◆龍山寺 台北市内最古の寺廟

 7時、北京ダックと新中華料理の夕食。あっさり味で、量も多く満足。ビールと紹興酒の心地よい酔いもあり、皆、楽しそう。またこのメンバーで海外旅行に行こうと話が盛り上がる。因みにこの後、イタリア周遊とシンガポールに行くことになる。ホテルの部屋での夜の飲み会は疲れでしんどかった。台北在住の添乗員は自宅に帰った。

◆左) 総統が陳水扁氏(民進党)から馬英九氏(国民党)に交替し、街には祝賀ムードがあふれていた、
右) 北京ダックと新中華料理の夕食 目の前で北京ダックを切り分けるシェフ

 


 

台北 国立故宮博物院

宋・元・明・清・・・歴代皇帝が収集した68万点の宝物を所蔵

 5月23日、旅の最終日。白い月が中天に浮かび、青空ものぞいている。7時、ビュッフェの朝食。8時半、出発する頃にはきれいに晴れ上がる。

 9時から小一時間、国立故宮博物院を見学。1925年紫禁城で、清朝が持っていた美術品などを一般公開したのが始まり。現在収蔵品は68万点。清朝が残した文物が全体の90%以上を占める。第2次大戦後国共内戦が激化するなか、形勢不利となった中華民国政府が第一級の所蔵品を精選して1948~9年台湾に運び出した。従って故宮博物院の所蔵品は、中華人民共和国北京市と台北の2ヶ所に別れて展示されている。1965年8月台北に博物館が完成。その後拡充され、パリのルーブル、ロシア・サンクトペテルブルクのエルミタージュと並び称される博物館となった。

 翡翠の翠玉白菜(キリギリス、イナゴ)や象牙の彫刻、青銅器、景徳鎮の陶器、その他翡翠の彫り物など至宝の数々……。ポイントポイントで要領よく説明を受ける。日本の観光ツァーや現地の小学生の団体がいくつも入っている。帰りに撮ろうと思った建物の外観の写真、一方通行で別の出口に出てしまい撮りそこなう。博物館内部は撮影禁止だった。
 故宮博物院は3回の訪台とも駆け足での見学に終わっている。じっくり観て廻りたいが、一週間はかかるという。

 茶の販売店で、お茶の淹れ方の実演を見る。説明を聞いていると買いたくなってくる。
 ビールと小籠包など上海点心の昼食。なかなか美味しい。

 2時前、台北空港へ。現地添乗員の張さん(女性)、初日、言葉がたどたどしく聞こえたが、過ぎてみればなかなかいいガイドだった。日大芸術学部で学んだだけあって、写真の撮り方が上手い。
 土産は何も買わなかったので、4日間で遣ったのは飲み物代の割り勘と枕銭くらいで3,500円。1万円の両替で十分だった。残った台湾元は再両替した。

 空港のロビーで浜の大魔神、佐々木主浩を見かけて、驚く。4時近く離陸。2時間ほどの飛行で、7時20分関西空港着。
 台湾で4日間、凸凹道で激しく揺れるバスに乗り続けたせいか、日本の高速道路のほとんど揺れない走行、静けさに感動。

- 完 -

 

 

 

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