ボヘミアの古都プラハ・ベルリンとドナウ旅情(2)

      2022/09/01

- ツヴィンガー宮殿 -

 
 

 

 旅の3日目、5月23日。晴れて朝5時頃カッコウが鳴く。ホテル周辺には畑が広がり、資材置き場があるだけだが、地元の老夫婦がのんびり散歩している。
 バス2階の一番前の席へ。8時過ぎ出発。妻は最前列の席は恐いと3列目へ移る。

"エルベ川の真珠"とたたえられた古都

 8時半過ぎドレスデン旧市街へ。18世紀にザクセン選帝侯アウグスト1世、アウグスト2世によって華やかなバロックの都に発展し、絵画、建築、音楽の3分野でドイツ有数の芸術の町となった。しかし、第2次世界大戦時、1945年2月13日夜から14日未明にかけての連合軍による大空爆で町は灰燼に帰した。1990年の東西ドイツ統一によってそれまで放置されていた聖母教会(フラウエン教会)やドレスデン城などの修復が始まった。旧市街はかつてのバロックの街並みがそのまま復元され、優雅な古都の佇まいを見せている。

甦った"バロックの都"のたたずまい

◆ドレスデン城 かつてドレスデンを治めたザクセン選帝侯の居城だったところ。第二次大戦末期の空爆で壊滅的な打撃を受けたが、東西統一後の修復作業により往時の偉容を見事に蘇らせた。

 1876年ドレスデン城の馬小屋の外側に、アウグスト強健王の「君主の行進」と題されるタイルの壁画が描かれる。1907年、マイセン工房が1200℃で焼いたマイセン焼のタイル2万5千枚を使って、今日見られる高さ8m、全長101mに及ぶ壁画を描き写した。連合軍の空爆で城のかなりの部分が焼失したときも、このタイル壁画だけが炎に耐えた。

◆壁画には歴代35人のザクセン君主が描かれている。

◆バロックの建物が建ち並ぶノイマルクト広場

◆左) ブリューのテラスからの眺め エルベ川と遊覧船 対岸はドレスデン新市街 右上)旧マルクト広場の家並み、右下)寒い冬でも外で食事する。中央にあるのはストーブ(ゴミ箱ではない)

 徒歩で見て回る。早い時間で人もほとんどいない。ゼンパー・オペラハウス、ブリュールのテラス、旧カトリック宮廷教会、聖母教会、ドレスデン城、タイル壁画「君主の行進」、ツヴィンガー宮殿を見る。

火災・空襲・洪水--たび重なる受難を乗りこえて

 5月下旬~6月上旬に開かれる「ドレスデン音楽祭」会場ゼンパー・オペラハウスは、1841年完成。欧州屈指のオペラハウスとして名高い。かつてウェーバーやワーグナーが指揮者を務めた。

◆左)右上)ゼンパー・オペラハウス(国立歌劇場)、右下)ワーグナー像

瓦礫のピースをはめ込んで完成した壮麗なる3Dパズル

 マルクト広場に立つ聖母教会は、11世紀に創建された由緒ある教会。18世紀に塔の高さが95mの大きなバロック様式に建て替えられた。しかし、第2次大戦で瓦礫と化し、長い間そのまま放置されていた。1994年から再建が始まる。すべての瓦礫に番号が付けられて整理され、「世界最大のパズル」といわれた作業を経て元の場所に戻されている。

◆聖母教会 右の像はマルチン・ルター

 ツヴィンガー宮殿は、ドイツバロック建築の巨匠ペッペルマンの傑作で、ドレスデンのシンボルとなっている。強健王アウグスト1世が古い要塞を取り壊して造った。ツヴィンガーとは要塞の意味。中庭を取り囲むようにパビリオンと回廊でつなげたコロセアム風の建物が建っている。広い中庭では演劇や騎馬試合が行われた。現在、建物の内部は美術館や博物館になっている。西翼のアルテマイスター絵画館には、レンブラントやルーベンス、フェルメール、デューラー、クラナッハらの作品が展示されている。なかでもラファエロの「システィーナのマドンナ」は見逃せない。

ツヴィンガー宮殿:スライドショー(横5枚)

◆ツヴィンガー宮殿を訪れたドイツの子供たち 先生の説明を聞いている。

 カトリック旧宮廷教会は、1755年に建てられたザクセン州で最大の巨大な教会。85mの鐘楼があり、壮麗な外壁には諸聖人の彫像が飾られている

◆左) ドレスデン旧市街 背後の左に見えるのがカトリック旧宮廷教会、右がドレスデン城、
右) ブリューのテラスから 右に見えるのがカトリック旧宮廷教会、中央に見えるのがドレスデン城

◆左:カトリック旧宮廷教会内部 キリスト昇天を描いた祭壇画がある。
右) パイプオルガン オルガンの名匠ゴットフリート・ジルバーマンが最後に作った作品として名高い。

 10時20分、絵画館入館。5ユーロ(850円)払って写真・ビデオの撮影券を買う。フェルメールなどの撮影に夢中になってツァーの一行とはぐれてしまい、慌ててイヤホンガイドから聞こえるガイドの声をたよりに捜して走り回り、事なきを得る。東海大学に1年留学したというドイツ人の女性ガイドの説明が面白く、11時半まで楽しい鑑賞となる。

 12時半レストランへ。トマトスープ風煮込み牛肉、ポテト、酢キャベツの昼食。400mlのビールが1.7ユーロ(290円)、チェリージュースが1.8ユーロ(310円)。

◆左)マイセンのレストラン、中)昼食 トマトスープ煮込み牛肉とクヌーデル(加工ポテト)、酢キャベツ
右)レストラン近くで ドイツの少女

マイセン磁器300年の歴史が薫り立つ

 2時、レストランから近いマイセンの博物館へ。交差したブルーの剣がマークのマイセン磁器は、最高級品として知られる。

◆左) マイセン博物館、右) 年代毎のマイセンのマーク

 モチーフは草花や鳥、獅子、龍など日本や中国の磁器をまねたものもあるが、最も有名なのが「ブルーオニオン」と呼ばれるコバルトブルーのタマネギ模様。1720年から1775年までマイセンの絵付師だったヨハン・グレゴリウス・へロルトによってデザインされ世界中で愛されるようになった。

 強健王アウグスト1世の時代、それまでヨーロッパには白磁器を作る技術がなく、もっぱら日本や中国から輸入していた。1709年錬金術師ヨハン・フリードリッヒ・ベットガーが白磁を焼くことに成功。アウグスト公はこの技術、製法が外部に漏れないよう城内に住まわせた。半ば幽閉状態のうちに城で亡くなったといわれている。

◆マイセン焼工房の実演コーナー

◆絵付け

◆小さな人形でも25~35万円

マイセン最高級磁器:スライドショー(横6枚)

 工房見学の後、フリータイムを使って博物館を観て回る。円安の時期でもあったが、ギフトショップで思い切って小さな花模様の皿付きティーカップ1客を買う。204ユーロ(34,700円)。

 

◆記念に買ったティーカップと皿のセット 

 3時10分過ぎ出発。閉め切っていたバスの中は蒸し風呂のよう。この季節の中欧がこんなに暑いのは珍しい。しばらく走ってようやく冷房が効いてきた。うとうとしていたら、近くのご婦人2人連れが、愚痴まじりの話をぐたぐたと続ける。楽しい旅に来て何でこんなつまらない話を延々と続けるのか……。
 妻の歓声に窓外を見ると赤いケシの花の大群落が広がっていた。3時15分チェコとの国境へ。トラックの長い列にバスは3台。4時53分やっと国境を通過。チェコはEU域外国でパスポートにチェコの入国印が押してあった。

 

◆ドイツとチェコの国境 

 サービスエリアで両替。1コルナ=6.73円。8,000円が手数料込みで1,164コルナ。バスの中は半袖では冷房で寒く、震える。プラハ市内中心部は交通渋滞がひどい。抜けるのにかなりの時間がかかり、7時半やっとホテル着。思いの他広く立派なホテル。

 8時過ぎ、バイキングの夕食。あまり品数はなかったが、さすがチェコ、ビールは美味しかった。大ジョッキで60コルナ(400円)。
 毎食事時、相席となる旅慣れた人たちの話は、面白い。

 

※ボヘミアの古都プラハ・ベルリンとドナウ旅情(3)へ続く

 

 

 

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