バルト海クルーズと神秘の北欧4ヶ国の旅 ②スウェーデンからノルウェー(前編)へ

      2023/07/29

◆ブリクスダール氷河

【プリントされたアナログ写真をデジカメで撮影したデジタル写真を使用しており、編集部で可能な限りの補正はしましたが、画質が通常よりも劣ることをご容赦ください。】

 

 

コペンハーゲンからスウェーデン(マルメ)へオースレン橋を渡る

 
 2000年8月28日、旅の3日目は朝からよく晴れている。疲れて寝不足なのによく眠れなかった。6時前にレストランへ。朝食を終えて部屋に戻ると、廊下に出されていた他の部屋のスーツケースは既に回収されていた。慌てて室内のスーツケースをフロントまで運ぶ。東京と大阪に架けた短い電話代を精算する。82クローネ(1,170円)。

 出発の15分前にバスに乗ったが、ほとんどの人が既に乗っていて、後方の席しか空いていない。年寄りは皆早い。7時半デンマークのホテルを出発。7月1日に開通したばかりのオースレン橋(15.4km)を渡り15分で7時53分スウェーデン領のマルメへ。橋を渡ると国境の検査官がバスに乗り込んで来て、パスポートをチェック。希望者には入国のスタンプを押してくれる。8時無事通過。添乗員が昨日から度々、パスポートは肌身離さず持っているようにと注意を促す。妻に預けていたパスポートをシャツの中に入れる。

 
 マルメは人口23万の町。海峡を挟んですぐ向かいのコペンハーゲンと橋で結ばれ、道路と鉄道で直結している。左にエーレ海峡。外国出身者が多く、多様な文化が融合している。一時デンマーク領だったが、1658年再びスウェーデン領となり、その後商業都市として栄えてきた。中世からの赤レンガの建物、石畳の広場、美術館として使われている城が残る。

 北海道をもっと広くしたような、それでいて全く山の見えない広大な平原を同じスピードでバスは行く。今日は1日で600km走る。人口560万の国。
 快晴で車内は温室のよう。心地よい眠りに誘われ、うとうとするうちかなりの汗をかく。たまらずシャツの中のパスポートを取り出す。表面に汗が滴になって光っていた。

 9時半トイレ休憩に入ったドライブイン。男女共用トイレには長い列。飲み物代にスウェーデン・クローネがいるが、両替できる郵便局は10時に開くという。デンマークの貨幣は紙幣なら使えると分かり、残っていた100クローネ(1,400円)札を使って、牛乳、アップルジュース、ミネラルウォーターを買う。渇いた喉に牛乳は美味しかったが、ジュースは味が濃くて閉口。何人かが代表して両替に行って、10時17分出発。

 

落ち着いたとてもいい街 スウェーデン第2の都市イエテボリ

 
 ゆるやかな丘陵地帯を上り下り走行して、11時40分、西海岸にあるスウェーデン第2の都市イエテボリ(ヨーテボリ)へ。17世紀以降現在までスカンジナヴィア半島のヨーロッパへの玄関口、貿易の拠点として栄えてきた。自動車メーカーボルボ社の本社があり、工業も盛んな活気ある港町。人口は45万人。17世紀初め北はノルウェー、南はデンマーク領で、イエテボリはスウェーデン唯一の港だった。オランダ人建築家により建設された町は、運河と堀が旧市街を守っている。トラムと運河、豊かな緑が特徴的。市立博物館になっている東インド会社の建物や大商人の石造りの住宅が往時を偲ばせる。

 キャノンの大きな建物が目に入る。住んでみたくなるような落ち着いた雰囲気の街。11時53分、18世紀のオペラ劇場を改装したレストラン・フィガロへ。風が強く、外は涼しい。天井の低い地下の部屋で、野菜サラダ、ポーク、ポテト、コーヒーの昼食。
 短い滞在だったが、すばらしい町だった。

◆スウェーデン第2の都市イエテボリ 落ち着いたとてもいい街

 1時15分出発。岩が多い地帯を走る。かなり雲が出てきた。デンマークもスウェーデンも清潔できれいな国である。外気温23℃。ベンツのバスは運転手の所有で1,800万円とか。ゴルフ場や放牧の牛が点々と見え、長閑な風景が続く。郊外の小さなガソリンスタンドで休憩。背筋を伸ばす。

 到着まで時間があるからと、添乗員の発案で前の席の人から自己紹介が始まった。75才の人、72才の人、皆元気である。因みに当時の私は55才になったところ。ヤクザかと思った2人連れは、高知県と大阪市の職員という。

 

国境の橋を渡りノルウェーへ入国

 
 3時50分、ノルウェーとの国境の橋を渡る。ミニバンクで2万円をノルウェー・クローネに両替。1クローネが12.1円。4時半出発。まだ刈り入れが済んでいない大麦畑、ライ麦畑が続く。デンマーク以外の3国は、国土の約3分の1を北極圏が占める。夏は白夜が続き、冬はオーロラが夜空に舞う。だが、自然環境は決して穏やかではない。

 5時55分オスロのホテル着。スウェーデンとの国境の海に2本の橋ができて時間がかなり短縮された。部屋はちょっと狭いが、中々きれいなホテル。
 6時半、白のグラスワインにバイキングの夕食。控えたつもりが、食べ過ぎてしまった。魚類、ハム類はすべて塩味がきつい。他はまずまず。
 7時半、ホテル近くのショッピングセンター、スーパーマーケットを覗く。近所へのお土産に紙製のテーブルクロスを5セット買う。150クローネ(1,820円)。8時ホテルに戻る。

 
 旅の4日目の8月29日は、朝から小雨が降ってかなり寒い。6時過ぎに朝食。バスのよい席を確保しようと早めにチェックアウト。7時半出発。オスロに向かう通勤の車の列が延々と繋がっている。すべてライトを点灯していて壮観。どんより曇って細かい雨が霧のように舞っている。気温16℃。北欧はこんな天気が半年も続くという。ノルウェーの人口は830万人。ベテラン添乗員の話は味わい深く、感動する。曰く、第一の旅は「出発まで」、第二の旅は「五感で感じる旅」、第三の旅は「旅の経験を活かす」。

 

‘94年冬季五輪スキージャンプの会場 リレハンメル

 8時15分、ミサ湖畔に出る。広々として鏡のような静かな湖面。雨は降り続いている。フィヨルドは3日間かけてゆっくり巡る。忙しいツァーだと1日半で廻る。フィヨルドはガイド不要、自分の目で見ればすべてが分かるという。8時50分、ハマーの屋内スケートリンク場を左に見る。海賊船の船底の形をした屋根の建物。沼や湿原が次々に現れる。ノルウェーでも一番の穀倉地帯を走って、10時、リレハンメルへ。1994年開催の冬季オリンピックスキージャンプの会場。

◆リレハンメル ‘94年冬季五輪スキージャンプ台

 人工芝のノーマルヒルで体育高校の生徒たちが飛んでいる。スポーツエリートという。滑り下りるザザーという音が凄い。間近かに見るとなかなかの迫力。聖火台に上った妻を撮る。この他、町にはオリンピックの名残のモニュメントが点在している。

◆地元の体育専門学校生・将来のオリンピック選手 サマージャンプの練習中

 10時半出発。小雨。湖、山、林、おとぎの国のようなきれいな家々。天国のような素晴らしい眺め。山岳農家がしょっちゅう家のペンキを塗り、庭の芝を刈り、手入れに手間をかけて、このきれいな景色を維持している。ノルウェーは、北海油田のおかげで世界一豊かな国だが、それでいて人々はお金をかけずにバカンスを楽しんでいるという。

 11時45分、レストランへ。しゃれた民家の屋内もこんななのであろうと思わせる。こってりしたスープは、冷えた体が温まってなかなか美味い。サラダ、ポテト、チキンも美味しい。パンはせんべいのよう。Ringnesビールが45クローネ(540円)。食後、川辺に下りて、写真を撮る。ノルウェーの子供たちは可愛い。

左) しゃれた民家風のレストラン、右) こってりした熱いスープが冷えた体に美味しい

左) 食後川べりを散策、右) 雲がかかる川べりの風景

 

どっしりした木組みのロムのスターブ教会やロムの博物館

 1時23分出発。ようやく雨があがった。2時45分、ロムのスターブ教会へ。北ヨーロッパ独特のスターブヒルケと呼ばれる木造の教会。11~2世紀にその多くが建てられ、最盛期には1000棟以上あったが、現在は20数棟を残すのみ。ノルウェーでしか見られない。どっしりとした木組みの建物は趣がある。今も、ミサや結婚式などに使われている。脹脛(ふくらはぎ)が痛いくらい寒い。1時間の後、出発。

◆12~3世紀に建てられたロムの木造のスターブ教会

左) ロムの博物館 冬暖かく夏涼しい草が生えた土の屋根、右) ノルウェーの国旗

 4時半、オーバーストソーンでトイレ休憩と写真タイム。ワタスゲがたくさん咲いている。雪の残る山々が連なり、カナダを思い出させる。

◆小休止したオーパーストソーンのコーヒーショップ

 
 4時45分、出発。スイスの登山鉄道でどんどん雪山を登って行くように、ダルスニッパの展望台(1,495m)に近づいていく。5kmの間に13のヘアピンカーブがある峠道を経て5時20分着。1人9クローネ(110円)の入場料。足下には雄大なV字谷の底にゲイランゲルの村やフィヨルドの海が見渡せ、えもいわれぬ景観が広がっている。今夜の宿の近くに巨大なクルーズ船が停泊している。大パノラマに満足するも、20分も居ると寒くて体が凍えてくる。夏でも雪が残るほど気温が低い。下山途中、フィヨルドのよく見える所で写真休憩。

◆ダルスニッパから下る途中の展望台で 手前ゲイランゲルの町 フィヨルドクルーズの船が見える

左) ダルスニッパ展望台 標高1,495m、右)ダルスニッパ展望台からの眺め 雨があがる

 6時半、ゲイランゲル(ガイランゲル)のホテル着。フィヨルドの見える部屋。ゲイランゲルフィヨルドの最奥に位置し、ストランダ市に属する村。5~9月には世界中から70万人の観光客が訪れる。標高1,500mの切り立った山々と紺青の静かな海が素晴らしい。
 人口300人の小さな村。7時、ホテルのレストランで夕食。バイキングが続いて少し飽きてきた。白ワインを1杯。50クローネ(600円)。ラウンジでコーヒーを飲んで部屋に戻る。

 

寒くてしかも雨の降る中、世界遺産のフィヨルド クルーズへ

 
 旅の5日目の8月30日。冬用の下着を持って来るべきだったと後悔するくらい寒い。5時前、暗くて見えないがどうやら雨が降っている気配。6時前、雲が低く垂れこめて景色はほとんど見えない。朝曇りであってくれるよう祈る。6時半、ブッフェの朝食。品数は少なかったが、卵、ハム、チーズ、トマト、果物、ヨーグルト、牛乳、パン、コーヒーで満足。
 1時間のフィヨルドクルーズに備えて、セーターを着こむ。

 数百万年前、北欧は厚さ1,000mを超える氷河に覆われていた。氷河は少しずつ流れながらその重みで河床を削り、深い谷を造り上げてきた。フィヨルドは氷河による浸食で作られたU字、V字型の谷(氷食谷)に海水が侵入して形成された入江のことで、ノルウェー語で「内陸部に深く入り込んだ湾」を意味し、峡湾とも呼ばれる。水深は沿岸に聳える山の高さに匹敵し、最深部では1,350mに達する。両岸を急な高い谷壁に挟まれ、細長く直線的に延びていることが多い。ノルウェーはじめグリーンランド、アラスカ南部、アイスランド、チリ、ニュージーランドなどに見られる。ノルウェー西部海岸には無数のフィヨルドが連続し、2万kmを超えて続いている。北部にはフィヨルドに加え氷河湖も多く、複雑な湖水地帯を形成している。
 穏やかな海から急峻な山が屹立する独特な景観は、大地の誕生当時の記憶をそのままにとどめている。ゲイランゲルフィヨルドとソグネフィヨルドの支流ネーロイフィヨルドは2005年世界遺産に登録された。

 
 7時17分、ホテルを出発。ゲイランゲルフィヨルドクルーズの船着き場まで歩いても行けるが、かなりの雨が降っておりバスに乗る。今回の団体の人たちは譲り合うことをしない。早い者勝ちで、いつも同じグループの4人が前の席を占めている。

 7時45分、出航。ゲイランゲルフィヨルドは入り江が細かく複雑に入り組み、周囲を切り立った山々に囲まれた秘境。ゴールデンルート呼ばれる世界屈指の景観。荒々しく男性的な景観を楽しめる。幅が狭く曲がりくねっているため、巨大な断崖が急に視界に飛び込んで来て実にスリリング。ノルウェーのノーベル賞文学者ビヨルソンは、このダイナミックな景観を「フィヨルドが神の言葉を語る」と称賛した。

 ゲイランゲルから小さな村ヘルシルトまで、屹立する山々を眺めながらのクルーズ。夏の間は日本語を含む6ヶ国語の案内がテープで流れる。
 甲板に出て、写真やビデオを撮る。雨が降るなかでの眺めもまたいい。「七人の姉妹」や「花嫁のベール」などと呼ばれるたくさんの滝が見える。崖の頂上部は雲に隠れていても、滝はくっきりよく見える。船室を出たり入ったりして、気がつかないうちに「花嫁のベール」の滝を過ぎてしまった。時々日本語の案内ガイドが聞こえる。迫力満点のフィヨルド、岩壁に満足。予定より10分早くヘルシルト着。

左) ゲイランゲルフィヨルドクルーズ、中)右) 七人の姉妹の滝

左) クルーズ船上で、右) クルーズ船

左)中)ゲイランゲルフィヨルド あいにくの雨 北欧はこれが当たり前の天気、
右) フィヨルドにはこのような滝が無数に流れ落ちている

左) バスの窓から見た民家 きれいにペンキが塗られている、右) 雨が降り続きカッパを買う

 

手の届く位置にある巨大な氷河に圧倒される。

 
 バスから眺めるフィヨルドもまた壮大。10時半、ヨステダール氷河の支流のひとつ、ブリクスダール氷河の入り口に到着。かなりの雨で、出発までの間にギフトショップで雨合羽を買う。背中にノルウェーの国旗が描かれた黄色い合羽。大半の人が求めていた。35クローネ(420円)。

左) 3~4人乗りの馬車でブリクスダール氷河へ、
右) ブリクスダール氷河 削られた鉱石の粉が氷河をきれいなブルーに見せている

 4人乗りの馬車11台に分乗して出発。前の席へ。雨を防ぐために帽子を右手で支えていると、袖口から水が入り込んでくる。馬車からずり落ちそうになるのと、馬車が右の崖下に落ちそうなのとで気が気でない。30分でやっと到着。そこから大きな石がごろごろしている岩道を歩いて登る。雨水が川のように流れ、歩きにくいことこの上ない。

 15分ほどで氷河着。碧い氷河が素晴らしく夢中で写真を撮っていたら、添乗員から戻る時間だと言われる。走りながら写真を撮り、撮り、集合地へ。ほとんどの人たちは馬車に乗って戻ったが、私たちは写真を撮りながら歩いて戻る。途中大きな滝のしぶきを浴び、雨にうたれてびしょ濡れになる。

左) 巨大な氷河に圧倒される 左端で写真を撮っているのは妻、中)右)氷河が触れるそばまで行ける

左) 氷河から少し下ったところ 右は氷河が溶けてできた流れ、
右) 氷河から徒歩で下る 中央に小さく見える橋の上を馬車が通る

◆氷河が溶けてできた川

左)氷河が溶けてできた川にある滝、右)馬車より徒歩の方が速い、馬子には若い女性もいる

 1時過ぎ、昼食。走り回って喉が渇き、ビールが美味しい。鱒やポテトが美味しく満足。ノルウェーのセーターを2着買う。1着870クローネ(10,530円)。

 2時14分バスが出発。雄大な風景が続く。スケールにおいてカナディアンロッキーに勝るという。息をのむ巨大さ。折角の絶景なのに、疲れた妻は眠っていて見逃している。

左) ブリクスダール氷河からヨスター湖を経てラルダール(ソグネフィヨルド地区)へ向かう、
右) 途中別の氷河が迫る

◆バスからの眺め 所々に雪が残る

 

人口800人の内日本人が3人(ホテル従業員)も

 
 15分フェリーに乗って、6時前、ソグネフィヨルドの最奥にある小さな村ラルダールのホテル着。ホテル、スーパー、博物館が中心部にあって、その周りにカラフルな住宅街が広がっている。といっても家は数えられるくらい少ない。

◆ラルダールの町 人口800人の内日本人が3人(ホテル従業員)、家々はきれいに手入れされている

 荷物を片付けて散策へ。手入れの行き届いた住宅街を子供たちが自転車で走り回っている。三輪車に乗った女の子と妻を写真に撮る。村はサーモンの釣り場として有名という。

◆夕方6時半 遊んでいた子供と

 6時45分、今日もバイキングの夕食。スペシャルビールが42クローネ(510円)。人口800人の小さな田舎の村のホテルに日本人女性のフロントと、ウェイトレスがいて驚く。他にも日本人のツァーの団体がいたが、日本人がよく来るようだ。
 ホテル前のスーパーマーケットで、お土産にハマナス茶1箱14.9クローネ(180円)、ローソク12.9クローネ(160円)を買う。
 コーヒーラウンジへ。ピアノ演奏をしているノルウェー人従業員から「昴」を歌ってくれといわれたが、自信がなく、代わりに「北国の春」を歌う。

左)宿泊したホテル、
右) 夕食後のコーヒーラウンジ ホテル従業員のピアノの伴奏で「北国の春」を唄う

 部屋に戻り、昼間びしょ濡れになった靴にトイレットペーパーを詰め込む。熱いシャワーを浴びてさっぱりし、床に就く

- バルト海クルーズと神秘の北欧4ヶ国の旅③に続く -

 

 

 

 - コラムの広場