これなんやろか 第2回 道ばたの草むらで その2

      2022/11/02

正解は、ホトケノザ でした。

 

新シリーズ「これ なんやろか」第2回です。

 

 今回も道ばたの草むらで見つけた小さな花たちです。

 小田 紘

 

 
 上6枚/撮影:2011年4月

 土手の草むらでなんとも奇妙な花を見つけ夢中で撮りまくりました。花の姿かたちを説明せよと云われても、言葉ではうまく表現できません。しかし、その時は私が知らなかっただけで、これは別に珍しいものではなく「ホトケノザ」というありふれた花であることが分かりました。それでも私にとってはやはり珍しい変わった花であることに変わりはありません。春の七草にも「ホトケノザ」がありますが、これとは全く別物です。

 

 

 上1枚/撮影:2015年11月

 ホトケノザの開花は3~6月頃だといわれていますが、11月にもたくさんの花を見つけました。異常現象の新発見かと勢い込みましたが、これもさほど珍しいことではなく、季節外れに花を咲かせる「不時現象」というのを起こしやすい花だと記載されていました。ことごとく裏切られてばかりで散々翻弄されましたが、それだけに今では思い入れの深い花の一つです。

 この花の構造はいまだ十分には理解していませんが、受け売りの話を一つ。この写真のように、虫が舌状の花びらに乗っかると上の方にあるフタが開いて蜜を吸えるようになります。すると隠されていた雄しべと雌しべが露出し、虫の頭に花粉が付くという仕組みになっているそうです。これにより無駄に花粉をまき散らさないで、効率よく受粉ができるとのこと。虫を利用する巧みな仕掛けに驚かされます。やはりこの花はただ者ではない。

 

 

 上3枚/撮影:2015年5月

 

 

 上3枚/撮影:2015年7月

 

 道ばたの草むらでネジネジ状に巻いた花を見つけました。名前を調べたら「ネジバナ」でした。なんと分かりやすいネーミングでしょう。名付けた人の素朴な優しさが感じられます。

 背丈は 15~20 cmくらいで,径 5 mm程度の小さな花が花茎にまとわりつくようにらせん状に並んで咲いています。ネジの巻き方は右巻きと左巻きのどちらもありました。DNAの分子構造を彷彿させるユニークな姿が大変気に入っています。ちなみにこの花は野草好きの女性に人気があるようです。

 

 

 上2枚/撮影:2006年5月

 

 芝生のなかに淡青色の小さな花がたくさんありました。とても可憐な花です。横浜在住の友人が鹿児島に来たとき、この花の存在に気づかせてくれました。それまでは全く意識したことのなかった花です。なにせ花径が 5~6 mm くらいの小さな花で、そのつもりで見ていない限りは見過ごしてしまいます。この花は「ヒメキキョウソウ」だと教えてくれました。なるほどキキョウの超ミニ版だと納得。しかし、これがその後の混乱の始まりでした。「その後の混乱」についてはまたあとで。

 野草に大変詳しい彼によると、自分はこの花が大好きなのだが横浜近辺では全く見かけないというのです。そこで、後日、この花からタネをとって送ってやりました。しかし、横浜の自宅では全く発芽もしなかったとのことでした。ちなみに私も自宅のベランダでプランターに植えてみたところ、みごとに開花させることができました。この辺りが植物の繊細さとでも言えるのでしょうか。原因は分かりません。

 

 

 上2枚/撮影:2021年6月

 

 

 上2枚/撮影:2009年5月

 

 さて、「その後の混乱」についてです。例によって写真を撮りまくったあと、「ヒメキキョウソウ」について調べ始めましたが、そのような名前の花に行き当たりません。師匠の思い違いだったのでしょうか。最近は野草の世界にも外来種が大変な勢いで押し寄せているので、手近な図鑑などでは対応できていないのかもしれないなどと解釈していました。

 ところが、ふとしたことからこの花の名は「ヒメキキョウソウ」ではなく、「ヒナギキョウ」であることが判明しました。さらにやっかいなことに、似て非なる花がいくつかあることも分かりました。本家本元の「キキョウ(桔梗)」のほかに、今回の「ヒナキョウ」(花径 5~6 mm)、「ヒナキョウソウ」(10~13 mm)、キキョウソウ(8~20 mm)とあって、それぞれ違った植物だというのです。こうなると、名前をつけた人の見識が問われると言いたい気もしますが、花の名前というのは人々の生活の中で、それぞれの地域において独立に呼び習わされてきたものだとすれば、「キキョウに似た花」ということで結果的には紛らわしい名前がたくさん存在してしまったのも頷ける気はします。

 花の名前談義はさておき、ここで述べたかったのはただ一つ。それは、気をつけていると「ヒナギキョウ」は足もとにたくさんあって、こんなに小さな花なのに可憐な美しさには気持ちを明るくしてくれるパワーがあるということです。

 道ばたの草むらにはまだまだいろいろな発見がありそうです・・・

 ☚ 筆者近影

 

 

 

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