これなんやろか(第3回)超ミニサイズの花

      2022/11/02

正解は、キュウリグサ でした。

 

今回は極小の花にまつわる話です。

 「これなんやろか?」というとき、今ではスマホのアプリ“Googleレンズ”による検索がファーストチョイスになってしまいました。このアプリの画像検索能力は凄いとしか言いようがありません。こんなものに頼っていてよいのかというかつての後ろめたさも何処へやら。ほとんどの疑問はその日のうちに解決してしまいます。
 今回の話もこのアプリなしには成り立たなかったかもしれません。

 小田 紘

 

 
 キュウリグサ1、2/撮影:2022年5月

 土手の草むらで極微小の花を見つけました。見つけたというより偶然ファインダーに捕えられたという感じです。あまりに小さな花で、ファインダーから目を離すと、一瞬どこにあるのか分からなくなるほどでした。花径が2 mm くらいで、これまでに撮った花の最小記録です。このときは三脚もなく、風に揺れて撮影にはたいへん苦心しました。

 この花の検索に当たってはさすがのGoogleレンズも一発では的中しませんでした。はじめは「ナヨナヨワスレナグサ」という名前が出てきました。ユーモラスな語感が気に入って「これは面白い」と思ったのですが、何かが違う、どこかしっくりしない、という気がしてなりませんでした。そこでさらに検索を重ねた結果「キュウリグサ」にたどり着いたというわけです。これは全ての点でピッタリと一致しており間違いないと確信できました。茎や葉を摘むとキュウリの匂いがするというのが名前の由来だそうですから、今度見つけたら匂いを確かめなければ。

 確かに「キュウリグサ」と「ナヨナヨワスレナグサ」はよく似ています。Google レンズが最初は誤認したのも無理はない。しかし両者の微妙な違いを感知した我が鑑定眼にも感心します。一発目をはずしたこのアプリにも可愛げがあるわいと、何だかホッと安堵した気持ちになりました。

 

 
 ヤブガラシ1、2/撮影:2022年9月

 今シリーズにおける最新作です。これについてはGoogleレンズで即解決できました。ヤブガラシ(薮枯らし)という植物で、藪を覆い尽くして枯らしてしまうほど生育力が強いというのが名前の由来だそうです。ちなみに英語名は Bush killer とのこと。そのため厄介な嫌われ者といった存在のようですが、よく見ると花はたいへんきれいです。

 
 ヤブガラシ3、4/撮影:2022年9月

 花の構造が少し変わっていて、淡緑色の4枚の花びら、4本の雄しべ、1本の雌しべ、オレンジ色の花盤(花托が盤状になったもの)からなっています。花びらと雄しべは開花して半日ほどで落ちてしまい、オレンジ色だった花盤はピンク色に変化していきます。

 ピンクの花盤と中央の雌しべが、燭台にローソクを立てたように見えることからローソク花という別名もあるそうです。この花は、意外と多くの人に愛されていることがうかがえます。

 
 ヤブガラシA~H/撮影:2022年9月

 花盤の部分は蜜が豊富で、色々な虫が集まってきます。“怪獣のオトシゴ”といった雰囲気の小さな虫を発見、実はトリバガ(鳥羽蛾)というガの一種でした(A、B)。大きなハチはセグロアシナガバチのようです(C)。一瞬「スズメバチ!?」と緊張が走りましたが、違うと分かって一安心。クロウリハムシというやつにもお目にかかりました(D)。そのほかにアリやガガンボの一種らしい小さな虫も来ていました(E、F、G)。

 ハチの口元をアップしてよく見ると、昆虫の一部らしいものが見えます(H)。このハチは蜜を吸いにきたついでに、蜜を吸いにきた虫も食べているようです。なんと恐ろしい。

 

小さな花の話ですが「これなんやろか?」の枠から少しはずれます。

◆幼少期を過ごしたふるさと筑豊のボタ山/父が1955年(昭和30年)頃撮影

 私は小学校の6年生まで筑豊地方の田舎で育ちました。古くからの農山村と後発の炭鉱町とが共存する独特な環境でした。ここで過ごした子供時代の体験は様々な面で今の私に大きな影響を与えています。

 小学校の周りには田んぼがありました。刈り入れが終わった後の落ち穂を拾って持ち帰り、次の年の春に庭に蒔いたら稲が数本はえてきたのが記憶にありました。それは66年前のことでした。

 
 ベランダの稲/撮影:2012年10月

 10年前、お歳暮にもらった「米」の化粧箱に飾りとして添えられていた稲穂を見たとき、この記憶がにわかに蘇り、ベランダのプランターに植えてみたところ予想以上に立派な稲穂が育ってきました。このとき初めて稲の花を見ることができました。それ以来、稲が実る季節になると花のことが気になっていました。

 
 田んぼの稲/撮影:2015年9月

 7年前、ドライブ中に山間部の田んぼで花が満開の稲に遭遇しました。ベランダの稲とは違い本物は圧巻でした。しゃがみ込んで写真を撮っていると背後に人の気配。どうやら田んぼの持ち主らしいオジサンです。不審者を見る目に少々慌てながら、稲の花の写真を撮っていることをシドロモドロに説明しますが今一納得してもらえない様子でした。稲の花の花見なんて理解してもらえないのも仕方ないか。

 

 関連情報として、NHKのEテレ「ミクロワールド」で放送された「イネの花 実りのしくみ」という動画を見つけました(5分間)。興味があれば下記のURLをどうぞ。
 https://www2.nhk.or.jp/school/movie/bangumi.cgi?das_id=D0005100071_00000#in=0&out=300

 

 

 

 

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