双ヶ丘の東の「花園」に、第95代天皇、花園法皇の勅願で、建武4年(1337年)に創建された妙心寺の40余りある塔頭の中でも、屈指の古刹が応永11年(1404年)に建立された「退蔵院」である。
「退蔵」という言葉には、「価値あるものをしまっておく」という意味があるように、陰徳(人に知られないようにして良い行いをする)を積み重ね、それを前面に打ち出すのではなく、内に秘めながら布教していくということを示しているとのことである。
日本最古の水墨画と言われる「瓢鮎図」(ひょうねん図)は、山水画の始祖で画僧であった如拙が1415年に描いた作品で、「瓢箪でどうすれば鯰が捕らえられるか?」という禅の問答「公案」を表すものであり、あまたの高僧の問答が併記してあり、退蔵院では模本が展示されている。
「元信の庭」は、室町期の画聖:狩野元信が作庭した枯山水庭園であり、白妙と石組で表現された禅庭の観念的な世界を表わしている。