「その時、君は?」【006】1988 Apr.-1990 Mar. 住んで見て分かった アメリカの 自由と自己責任について。

      2020/02/14

 

家族で米国オレゴン州・ユージン市に留学しました。

 1988年4月から1990年3月までの2年間、中央大学・商学部教授(研究課題:グローバリゼーション)を務めていた夫がオレゴン大学に留学したのに同行し、オレゴン州ユージン市に家族4人で移り住みました。

 留学当時私たち夫婦は44歳、長男は高2、長女が中1、次女は5才で、それぞれ現地の高校、中学、小学校に編入しました。学校の編入など各種手続きに関しては、ホストファミリーにお世話になりました。

 夫婦ともにまだ若く、子供たちは受験の問題などありましたが、感受性豊かで学び盛りの年齢にまたとない経験をさせて上げられたことを、親として良かったなと思っています。

 

1988 Apr.―1990 Mar.

その時、君は? 【006】  徳重 洋子

 

オレゴン大学の学園都市――「ユージン」

 オレゴン州ユージン市はオレゴン大学の学園都市です。山、森、海、湖など美しい自然と温暖な気候に恵まれ、古き良きアメリカの地方都市ののんびりとした雰囲気が残っているところから、映画「スタンド・バイ・ミー」のロケ地に選ばれたことでも知られます。またスポーツ用品メーカーNIKE誕生の地でもあり、スポーツも盛んです。

◆オレゴン大学

◆ユージンのわが家

一家に一台、草刈り機が必需品

 ユージンでの住まいは借家でしたが、日米の住宅を比べて、外から見て分かる一番の違いは広い芝の庭ではないかと思います。皆さんも映画などでご覧になったことがあるのではないでしょうか。

 アメリカは国土が広大なので一軒家の敷地もゆとりがあります。そしてその広い敷地内で、建物以外のスペースはほぼ芝の庭で覆われているといっても過言ではありません。お隣同士、またお向かいの家の前にも広い芝の庭が広がっているので、道路は緑で挟まれているように見えます。

 道路を挟んで緑の庭がつづく風景はとても美しいのですが、その反面メンテナンスが大変です。西洋芝は成長が速く、一週間で10cm近く伸びることもあるため、毎週芝刈りが必要です。そんなわけで、芝刈り機は一家に一台欠かせないものなのです

 晴れた日は町のあちこちで芝刈りをする風景が見られ、青々とした草の香りが立ち込めます。芝刈りをちょっとでもサボると、街並みの美しさが台無しになるので、ご近所から苦情がくることもあるとのことでした。

子供を一人では出歩かせない

 留学中、夫はオレゴン大学の研究室に通い、私は語学学校に毎日通って、さまざまな国々の人と交流を楽しみました。
 また、アメリカにはナーサリー(nursery)スクールと言って、2~5歳までの幼児を預かってくれる公立の教育施設(日本の保育所・託児所に当たる)があるのですが、そのヘルパーをして子供たちとも仲良くなりました。

 アメリカに来て、一番驚いたのは子供たちの扱い方でした。アメリカでは、子供は13歳になって初めてティーンエイジャーとして、本人に行動の責任が認められるようになります。それまでは常に親が保護しなければなりません。その保護ぶりは徹底していて、学校の行き帰りはもちろん、お友達の家に遊びに行くのにも、親が必ず送り迎えをしなければならないので大変です。

 ショッピングモールに設けられたプレイルームなどでも、子供だけで遊んでいると警察に保護されてしまいます。日本のように子供が遊んでいる間に親が買い物をするというわけには行きません。

◆次女のバースデーパーティー

 ついでながら、ほんの短時間でも子供だけを車に残して親がその場を離れたり、子供だけで家の留守番をさせるのも禁止。見つかると通報され、親にはペナルティーが課せられます。

楽しかった家族旅行

 子供たちの学校が長期の休みに入ると、あちこちに家族旅行に出かけました。カナディアンロッキー、バンクーバー、サンフランシスコ、ロサンゼルス、サンディエゴetc…車に炊飯器、お米や食材を積んで、モーテルでおにぎりを作って食べました。雄大な自然のふところに抱かれるこんな旅は子供たちにとっても忘れられないらしく、日本に帰ってきた後も何度も思い出話をしていました。

◆レッドウッド国立公園の大木の前で

 カリフォルニア州にあるレッドウッド国立公園は、赤いレッドウッドの巨木がそびえ立つ神秘的な森林で、世界遺産にも登録されています。レッドウッドはセコイアの一種で、幹が堅く分厚い樹皮が赤いのが特徴。平均樹齢は約500~700年で、中には2000年超の巨木も現存しているそうです。

◆大自然の神秘――クレーターレイク

 オレゴン州南部にあるクレーターレイクは、アメリカで最も深い湖。湖の深さは592mあり、世界でも7番目の深さです。湖を満たす水面は、太古の火山活動により形成されたくぼみに長い年月をかけて雨や雪が降り注いだもので、川からの流入や流出は一切なく、その透明な美しさは奇跡とも謳われ、見る人の心をとらえて離しません。

◆カリフォルニアの夕日

◆イエローストーン国立公園の間欠泉

◆カナディアンロッキーの湖

どんな人も受け入れるアメリカの懐の深さに感激

 「大統領のように働き、王様のように遊ぶ!」どこで聞いた言葉かは定かではありませんが、アメリカの中流家庭のライフスタイルを見ていると、こんな言葉を思い出しました。ウィークデーはよく働きよく学んで、土日は思いっきり遊ぶ。テニス、ハイキング、映画やコンサート、美術館巡り、バーベキュー等、徹底的に楽しみつくす姿は、日本人の目からはとても新鮮に映りました。

 一家で留学したのは早30年前になりますが、アメリカは本当に豊かで自由な国で、どんな人も受けいれる寛容さがありました。YesかNoで何事も明快に自己表現できるので、生活しやすかったです。

 2年間の滞在でアメリカから学んだこと…それは自分の意見を持つこと、そしてそれを発信することの大切さです。このことは、子供たちもしっかり学んでくれたのではないかと思っています。

 

 

 

 - コラムの広場