頑張れ~、新庄新監督!
2021/12/31
心の奥の奥にしまって、やすらかな眠りにつく寸前だった私の「野球愛」をはげしく揺り起こす事件が起こった。
えっ? あの新庄が日本ハムファイターズの監督に?
一部のファンが望んでるって話でしょ、そんな夢のようなことが現実に起こるわけがな…
えっ違う? 新庄が本当に日本ハムの新監督に就任したの?!
やったあぁぁぁ~~!!
思えばこんな風に心が高鳴る感じを味わうのは、いつ以来のことだろうか?
1979年の日本シリーズ、近鉄バッファローズ3勝・広島東洋カープ3勝で迎えた第7戦の9回裏。3対4の1点ビハインドからコツコツと塁を埋めた近鉄は、ノーアウト満塁というまたとないチャンスをつかんだ。このときゲームを観戦していたほとんどの野球ファンは、近鉄の優勝を信じて疑わなかったのではないだろうか。
えっ? ところがここで代打に出てきた佐々木が三振、1死ののち石渡のスクイズを広島の江夏に外されて、三塁走者藤瀬が本塁前で憤死。その後石渡も空振り三振に倒れ、近鉄は99%手中にしていた日本一を逃した。このとき近鉄バッファローズを率いていたのが闘将と呼ばれた西本幸雄監督。監督の大ファンだった私は呆然として涙も出ないほどだった。
◆千載一遇のチャンスを逃しグランドを去る西本監督
◆絶不調を忘れさせる渾身の一打は、美しい弧を描いてセンター前に転がった。
時は流れて2009年、WBC最終日の対韓国戦。流れをつかめず、苦しい戦いを続けていた侍ジャパンはこの日も1点のリードを守り切れず、9回に追いつかれてしまう。
そして迎えた10回、内川のヒットに続き、稲葉の犠牲フライ、岩村の左前打などで2死一、三塁。またとない好機で出番を迎えたのが、当大会絶不調にあえぐイチローであった。カウント0-2から4球をファウルで粘ったのち、5球目はカット、7球目を見送ってフルカウントからの8球目、諦め半分だった日本中のファンに火をつけた歓喜の瞬間はやってきた。
最後はやっぱりイチローだった。韓国のイム・チャンヨン投手がこの打席で初めて投げたチェンジアップを、見事に中前へはじき返し勝利を呼び込んだのだ。このシーンはニュース映像で何度も何度も見返し、私も幸せに浸った。
不振とは言え世界のイチローを敬遠することもできたのだが、真っ向勝負を挑んだイム・チャンヨン投手の男気を称賛する人も多かった。
野球っていいなぁ~って思う。ゲームが攻撃と守備のパートに分かれているので、勝っているときは守備を、負けているときは攻撃を重点的に応援し、その隙にちょっとトイレに立ったりできるのもいい。幼いころ遊んだ缶ケリみたいに、玉(缶)を遠くに運び、その間に生還するという、他のスポーツでは見られない超シンプルなルールが潔い。女性の野球ファンの多くが気に入っているのは、この点ではないだろうか。
新庄新監督の誕生は、鬱々と停滞した社会状況の中で、久々にスカッとする出来事であった。私はこの人の現役時代を、実はほとんど知らないのだけれど、それでも数十年ぶりに湧き上がってくるこのわくわく感が嬉しくてたまらない。
今回の英断を下したのはオーナーなのかな、球団社長なのかな? 両方なのかも。とにかくその勇気に敬意を表します。お二人の偉いさん、頭を柔らかくしてくれてありがとね~。
頑張れ新庄新監督!きっと何かをやってくれるよね。来年の4月からが楽しみで仕方がない。
左:阪神時代の1999年、巨人の槇原投手の敬遠球をサヨナラヒット。 中:新庄選手涙の現役最終打席。(2006年・日本ハム日本一)。 右:監督より先に胴上げされる新庄選手、コラコラ(笑)。
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