野鳥の声と瀬音と文学の薫り 秋の上高地を歩く
2020/02/14
台風19号の難を免れた上高地へ。
10月に信州旅行を計画、予約も全部済んでいたのだが、東日本各地に甚大な被害をもたらした台風19号の影響で北陸新幹線が不通となり、最初の目的地をすべてキャンセルすることとなった。中で一か所だけ、電話で「大丈夫でした」と言われた上高地に予定を短縮して行ったのだが、あいにくの雨で目的としていた信州の山々の写真はまったく撮れず、心残りの多い旅になってしまった。
河童橋
槍が岳や穂高連峰を目指す登山者たちの中継地として知られる上高地。標高1500メートル=五千尺のこの梓川沿いの盆地はまた、脚力に自信がなくなった高齢者が手軽に山の雰囲気に浸れる絶好の土地でもある。
写真は、芥川龍之介の小説、「河童」の舞台となった河童橋。この橋の周辺が上高地で最も賑やかな地域である。
河童橋から梓川上流を望む
その河童橋の上から梓川上流方向に向けてシャッターを切ったのがこの写真。この日は厚い雲に遮られていたが、もし晴天ならば穂高連峰がその雄姿を現し、その中央付近に本邦第3位の標高を誇る奥穂高岳を見いだすことができる。
※標高3190ⅿの奥穂高岳(御嶽山)は、富士山の3776m、南アルプス・北岳の3192mに次ぐ日本第3位の高峰である。
梓川の清流
井上靖はその代表作「氷壁」の中で、登場人物の一人に梓川は「日本で一番美しい川です」と語らせている。日本一かどうかは知らないが、ぼくが今までに見た川の中でもっとも美しい川であることは断言できる。
河童橋から穂高橋・田代橋まで続くカラマツ林の散策路
上高地でもっとも楽しく歩けるのは河童橋から穂高橋・田代橋までの左岸道と右岸道、いずれものんびり歩いて30分の散策路であろう。その右岸道から、梓川を挟んだ左岸道とその背後のカラマツ林を撮ったのが上2枚の写真である。
上高地の黄葉は例年10月上旬~下旬に見ごろを迎えるが、今年上高地を訪れた10月半ば(写真左)は、残念ながら見頃とまではいかなかった。写真右はほぼ同じ場所の3年前、すなわち2016年11月1日の撮影である。
ウォルター・ウェストンの碑
イギリスの宣教師であり、日本アルプス・上高地を世界に紹介した登山家でもあるウォルター・ウェストンの碑は右岸道にある。
この時期黄色に染まるのはカラマツの木だけではない。カラマツのあるところ大地も黄色に染まる。
梓川沿いの白樺並木
上高地の樹木はもちろんカラマツに尽きるものではない。梓川沿いの道でカラマツに次いで目立つのは白樺の木立。これは今回の旅の写真。
明神池
河童橋から梓川右岸道を一時間強上流に進むと明神池。ウェストンの案内人としてともに上高地の発展に貢献した嘉門次の小屋もその近くにある。なお、明神池は穂高神社の神域のため拝観料が必要。