春のフランス花紀行⑥new

   

 

かつての仏政治文化の中心で、豪華絢爛な古城が多数点在し、世界遺産にも登録

 百年戦争に勝利したシャルル7世がシノン城に宮廷を移してから約160年間、ロワール川流域はフランスの政治・文化の中心で、下図のように貴族たちもこぞって城を建て、華やかな宮廷絵巻を繰り広げるが、やがて歴史の舞台はパリ郊外へ移り、世界遺産に登録された古城が栄枯盛衰を物語る。(阪急交通社宣伝資料より)

代々の城主が女性で「6人の女の城」とも呼ばれる、気品あふれる古城

 まず、シェール川の水面に浮かぶ白鳥を思わせる優美なシュノンソー城を訪れる。気品あふれる姿はロワールの古城の中でも特に人気を集めている。前回訪れた冬の寒々しい時と違い、薔薇の花が咲き乱れる5月はまた格別の趣がある。16世紀の創建以来19世紀まで、代々の城主が女性だったことから「6人の女の城」とも呼ばれる。 10時50分から1時間で城内とカトリーヌ、ディアーヌの2つのフランス式庭園を巡る。

シュノンソー城へ続く道とシュノンソー城正面と内部(縦:3枚、横:5枚)

 武装した宮廷の護衛が控えていた「護衛兵の間」。壁には、城での生活、結婚の申し込みや狩の場面が織られた一連のタペストリーが掛けられている。護衛兵の間から聖母マリアの像の下の扉を通って「礼拝堂」に入る。右手に、カラーレ大理石に刻まれた聖母マリアと幼子キリストの彫刻がある。礼拝堂の身廊を見下ろすように置かれた高壇は、王妃がミサに参列するための席で、1521年の日付が記されている。壁には、「青いヴェールの聖母」や「聖母被昇天」、「パドヴァの聖アントニウス」などの宗教画が掛かっている。

◆護衛兵の間

 「ディアーヌ・ド・ポワティエの部屋」は、国王アンリ二世からシュノンソー城を譲り受けた愛妾ディアーヌ・ド・ポワティエの寝室。暖炉、格天井、天蓋ベッド、アンリ二世の肘掛け椅子、ルネサンス様式の寄せ木細工のテーブル、壁の肖像画やタペストリーなどが当時の生活を偲ばせる。

◆ディアーヌ・ド・ボワティエの部屋

 「緑の書斎」。夫のアンリ二世亡き後カトリーヌ・ド・メディシスがこの部屋からフランスを統治した。16世紀の天井は当時のまま残っている。アメリカ大陸発見がテーマのタペストリーには、ペルーの銀色の雉、パイナップル、蘭、柘榴など1492年までヨーロッパで知られていなかった動物や植物が題材になっている。
 「図書室」から眺めるシェール川、中洲、ディアーヌの庭園は素晴らしく、しばし見入ってしまう。

◆図書室から眺めるシェール川

 吊り要石付きオーク材の格天井は1552年に作成されたもの。イタリア様式でフランスに取り入れられた天井の様式としては初期のもの。
 全長60m、幅6m、18の窓があり、床には石灰岩とスレートを敷き詰め、天井の梁が見える「ギャラリー」は、壮麗な舞踏会場だった。1577年に完成。ギャラリーの両端に2つの美しいルネサンス様式の暖炉が据えられている。壁に掛かっているメダイヨンは18世紀に加えられ、著名な人物を表している。なお、メダイヨンとはメダルの大型のものをいい、円形ないし楕円形で、装飾的なもの。

◆(左)ギャラリー、(右)先生の説明を聞く子供たち

 「ホール」、「厨房」を抜けて、「フランソワ一世の居室」へ。部屋の暖炉は、ルネサンス様式の傑作の一つ。家具は、15世紀フランスの食器棚と16世紀イタリアのキャビネット。真珠貝の嵌め込み細工や象牙の羽ペン画が施された見事なもので、フランソワ二世の結婚祝いとして贈られた。壁には何枚もの肖像画や自画像が掛かっている。

ホールと厨房:スライドショー(横:10枚)

フランソワ一世の居室(横:6枚、縦:1枚)

 「ルイ14世のサロン」には、ルーベンスの「幼いキリストとバプテスマのヨハネ」や18世紀フランス絵画のコレクションが見られる。ジョルジュ・サンドの祖母にあたるルイーズ・デュパンは、16世紀にシュノンソー城の城主となり、百科全書派を支持し、ヴォルテール、ルソー、モンテスキュー、ディドロ、ダランベール、フォントネル、ベルナルダン・ド・サンピエールを城に迎えた。フランス革命の際、シュノンソー城は彼女の人徳により破壊を免れたとされている。

 2階の「カトリーヌ・ブリソネのホール」の床には、短剣に貫かれた百合の花の紋章が押され、テラコッタの小さなタイルが敷き詰められている。扉の上にはイタリアから取り寄せた大理石のメダイヨンが飾られている。ホールから続くバルコニーからは、マルク家の塔と前庭を望むことができる。
 「五人の王妃の居室」は、カトリーヌ・ド・メディシスの2人の娘と3人の義理の娘を記念して名付けられた。壁には、トロイの包囲、ヘレナの略奪、コロセウムでの競技、ダビデ王の戴冠を描いた一連の16世紀のフランドルタペストリーが掛かっている。家具は、大きな天蓋ベッド、極彩色の棚2つ、鋲が打たれた旅行用の箱。壁には、ルーベンスの「東方の三博士の訪問」(プラド美術館の絵画の習作)などが掛けられている。

五人の王妃の居室:スライドショー(横8枚)

 「カトリーヌ・ド・メディシスの居室」、「セザール・ド・ヴァンドームの居室」、「版画展示室」、「ガブリエル・デストレの居室」と続く。
 「カトリーヌ・ド・メディシスの庭園」と「ディアーヌ・ド・ポワティエの庭園」は、手入れが行き届き、毎年春と秋に植物の植え替えが行われ、城の敷地で13万本の花が栽培されている。蔦バラやバラの花が美しい。

2階からの眺めと庭園:スライドショー(横5枚)

 12時、魚料理の昼食。メインのキッシュ、デザートのチョコレートケーキともに中々の味。ワインも美味しい。

昼食のレストランとレストラン周辺:スライドショー(横5枚)

ベルサイユ宮殿にも匹敵するロワール最大の城。

シャンボール城への道で見えた古城:スライドショー(横4枚)

 2時半から4時まで、ロワール地方最大で華麗な世界遺産「シャンボール城」を巡る。イタリア・ルネサンス文化に憧れたフランソワ一世によって狩猟用の離宮として1519年に建設に着手されたが、完成した時には幅156m、高さ56m、77の階段、282の暖炉、426の部屋を持つ桁外れの規模となっていた。中世の要塞としての外観に、ロッジア、テラス、垂直のつけ柱、正面壁にリズムを与える水平の刳形などイタリア・ルネサンスの革新的建築様式を取り入れた斬新な姿にまとまっている。敷地面積は5440haで、パリ市の大きさに匹敵し、ヨーロッパ最大の森林公園となっている。
 大きさだけではなく、バランスが整った優美な姿には現在も多くの人が魅了される。

◆(左)シャンボール城付近、(右)シャンボール城正面

多くの塔を持つシャンボール城:スライドショー(横4枚)

◆主塔と階段(レオナルド・ダ・ヴィンチが考案?)

 主塔の中心部に、城館の3つの階をつなぐ有名な二重螺旋階段がある。

主塔の二重螺旋階段(横:4枚、縦:3枚)

 階段部分の上方にはユリの花を戴いた頂塔がある。一方の階段からは他方の階段を通る人の姿を中心の空間部から垣間見ることができるが、決してすれ違うことはない。彫刻装飾は、フランス・ルネサンスの傑作のひとつに数えられる。各階では、この階段を中心に十字型の放射状に4部屋が広がり、4つの均等な居住空間を形成している。革新的な設計、傑出した技巧などからレオナルド・ダ・ヴィンチが関わっていたのではないかといわれている。
 社会科見学の小学生の一団が、真剣な表情で先生の説明を聞く姿がほほえましい。

2階外廊下からの眺めと社会見学の小中学生?の一団(縦:2枚、横:2枚)

 2階では、「礼拝堂」や「フランソワ一世の住居」、「王の居室」、「王妃の居室」「18世紀の続きの間」など16世紀から19世紀にかけての様々な居住形態を見ることができる。「シャンボール伯爵の記念館」には戦争の玩具コレクション、食器、銀製品、豪華寝台、母親が所有していた彫刻品、肖像画の数々が展示されている。

 3階の格天井はシャンボール城の見ものの一つ。「狩猟と自然の博物館」では、16世紀の様々な狩猟形態や狩猟にまつわる古代神話を題材にしたタペストリーのコレクションが見られる。「テラス」からは、フランス・ゴシックとイタリア・ルネサンスの奇妙な融合が織りなす屋根のスペクタクル、シャンボール城の敷地の大パノラマを楽しむことができる。

シャンボール城内部(横:8枚、縦:2枚)

シャンボール城(横:6枚、縦:4枚)

シャンボール城全景(横:4枚)

◆咲き乱れる花々

車窓に見る古城(横:3枚)

◆古城

◆チセーの古城ホテル

 夕方5時半、ロワール地方チセーの古城ホテルへ。古城ホテルというとロマンチックな感じがして憧れる人が多いが、実際に宿泊してみると、城の構造上各部屋が孤立して、夜になると古びた石造りの部屋の隅々には暗闇ができ、何とも不気味な感じがして落ち着かない。暗闇から騎士の幽霊が現れそうで、安眠できなかった。

チセーの古城ホテル(横:4枚)

古城ホテル内部(横:4枚)

夕食(横:5枚)

- 春のフランス花紀行⑦へ続く -

 

 

 

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