新型コロナワクチン接種で、平穏な生活を取り戻そう!
2021/04/25
藤本 茂
「どうなる? 新型コロナウイルスとワクチン開発」として、昨年7月8日にワクチンの開発状況を報告してから、僅か半年しか経ってないのに、既に「全世界で1億5千万人以上の人がワクチンの接種を受けた」との報道があるほど、科学技術の極めて急速な進歩を受けて、驚異的な速度でワクチンの開発・実用化が進み、その恩恵を受けることが出来るようになった。
ここでは現時点での「ワクチン開発の技術的進歩」、「海外のワクチンの開発状況」、「日本のワクチンの開発状況」、「全世界での接種状況」、「日本での接種予定」、「ワクチン接種の副反応」として、報道等で既にご存知のこととも思うが、今一度ここに纏めて、同窓生諸兄に「ワクチン接種により平穏な生活を取り戻す!」判断の一助としたい。
今回のワクチン開発は、驚異的な速度でワクチンを実用化できたが、その根底には革命的ともいえる技術的な進歩がある。
不活化インフルエンザワクチンの製造方法の概要は右図の通りであり、孵化鶏卵(受精卵)1個から僅か0.05L(50ml)程度のウイルス原液しか取れないために、国民の接種希望に沿う大量の原液を得るためには、膨大な量の孵化鶏卵を準備することが必要となり、このステップに多大な時間と労力が必要で、そのために開発速度は極端に遅くなっていた。
一方、アストラゼネカ社の技術(ウイルスベクターワクチン)では、手間のかかる孵化鶏卵の準備は必要ないが、一度に大量の細胞を無菌的に培養する必要があるため、例えば、GEヘルスケア社で開発され、滅菌済みのために使い勝手が良い「ディスポーザブル培養バッグ」(0.3L~25L)や「シングルユース培養槽」(10L~2000L)などの使用により、簡単に大量の細胞を無菌的に培養することが出来るようになり、開発速度をあげることが出来るようになった。
その他の新規技術
その技術の詳細内容や、開発している会社等の名称は省略するが、次のような多種類の新規技術を駆使したワクチンが開発されている。
「DNAワクチン」、「組み換えたんぱく質ワクチン」、「組み換えウイルス様粒子(VLP)ワクチン」
最初に新型コロナウイルス感染症が発見されたのは2019年12月で、その原因ウイルスの遺伝子情報(ゲノム配列)が発表されたのが2020年1月10日であり、その4日後にはModerna社で、mRNAワクチンのGMP製造が開始され、2か月後に臨床試験のPhase1、半年後にPhase3が開始され、10か月後の11月には、Moderna社、Pfizer社のmRNAワクチンがPhase3で有効性が確認され、重篤な副作用も見られないという結果が発表され、12月には緊急使用承認で実用化が始まるという、驚異的なスピードでワクチンの実用化を達成できることとなった。
海外のワクチン開発状況
海外で開発中の新型コロナワクチンとして、表に示す6社が厚労省HPでは紹介されているが、恐らくこれら6社は、近々日本で承認され、接種が開始される可能性が高い会社だと考えられる。
このうちのファイザー社、アストラゼネカ社、モデルナ社は、各種報道等でご存知の通り、日本でも既に承認申請が出されており、ファイザー社は2月14に正式に「承認」され、2月17日から国公立病院の医療関係者等への接種が開始される予定である。
一方、アストラゼネカ社は4月頃、モデルナ社は5月以降に、「承認」がおりて接種が開始されそうである。
一方、ジョンソン&ジョンソン社、サノフィ社、ノババックス社は、上記3社より遅れて承認され、接種開始されそうなワクチンである。
先行三社の「ワクチンの特性のまとめ」は下表の通りである。
ファイザーのmRNAワクチンが、条件的には一番シビアで、長期の保管では、-75℃ (±15℃)の超低温冷凍庫が必須であり、輸送時は、10日間程度は、ドライアイスでの保管が可能であり、接種会場等では、2~8℃の冷蔵庫で、最大5日間程度は保管が可能であるとされている。
なお、ファイザーのワクチンは、mRNAの安定性を保証するために、「過度の振動を与えてはいけない」とも言われており、バイクや自転車での振動を与える輸送は避けるべきとされている。
さらに、ファイザーのワクチンは、1バイアルに6回接種可能なワクチンが入っているとのことであるが、一般に使用されている普通の注射筒では5回分しか取れないとのことで、6回接種可能とするには、注射筒にワクチン液が残らない特注の注射筒が必要とのことであり、1億4400万回分供給する契約であるが、最悪1億2千万回分になってしまう可能性があるとのことであり、契約を増やす必要が有る可能性がある。
モデルナのワクチンは、-20℃の冷凍庫で、アストラゼネカのワクチンは、2~8℃の冷蔵庫での保管が可能とされている。
「海外からの供給」は下表の通りである。
また、海外開発品の内、アストラゼネカのワクチンは、21年初頭から供給される1億2000万回分のうち、3000万回分は海外生産品を輸入するが、残りの9000万回分は、日本で製造する予定であり、芦屋市にある「JCRファーマ」が国内で原液を製造、製剤化などは、「第一三共」、「第一三共バイオテック」、「MeijiSeikaファルマ」、「KMバイオロジクス」などの日本のメーカーが実施し、これに対して162.3億円の国の補助金の支出が決定している。
<参考YouTube動画>MBSが取材したJCRファーマの現場(下線部をクリックし、CMはスキップして下さい)
【独自】アストラゼネカから"ワクチン原液製造"委託された『JCRファーマ』安定供給に貢献するために決意「やるしかない」(2021年1月26日) (2021/02/19 13:00 現在、このURLの動画は、「非公開動画」となっており、視聴はできません。同じ報道の有無をインターネット上で検索したところ、MBSの番組「ミント」の中の報道として、同じタイトルで文章として見ることが出来るようになっておりますので、興味がある方はこちらをご覧ください。)
国内のワクチン開発状況
厚労省が掲載している国内の開発状況は、下表に示すとおりであるが、海外の開発と比較すると、一周遅れの感が否めない。
「国内での生産(生産体制緊急整備事業の国庫補助額)」は下表の通りである。
生産体制等緊急整備事業として支出予定の金額は下表に示すとおりであり、スパイクたんぱく質を抗原とする組み換えたんぱく質ワクチンを開発中の「ノババックス社」ワクチンの年2.5億回分の生産能力を構築するとして、武田薬品への300億円以上の支出が予定されている。
<参考:YouTube動画>(塩野義製薬の【news23】による取材)(下線部をクリックし、CMはスキップして下さい)。
「初公開!国産ワクチンの臨床試験[新型コロナ]【news23】」
海外での接種状況
(2月12日現在)
国・地域 | 累計接種回数 | 100人あたりの接種回数 |
世界全体 | 151,654,985 | - |
米国 | 44,753,166 | 13.5 |
中国 | 40,520,000 | 2.9 |
英国 | 13,656,112 | 20.3 |
インド | 7,017,114 | 0.5 |
イスラエル | 6,012,294 | 66.4 |
UAE | 4,684,658 | 47.9 |
ブラジル | 4,120,332 | 2 |
ドイツ | 3,669,148 | 4.4 |
トルコ | 2,795,116 | 3.4 |
日本経済新聞&フィナンシャルタイムスが調べた、2月12日現在の世界全体でのワクチンの総接種回数は、1億5千万回以上であり、米国が4,475万回、中国が4,052万回、英国が1,366万回で、これら3か国で計1億回近くを占めているが、これらの国は、いずれも自国でワクチンを開発した国であり、自国で開発することにより、安定的なワクチン供給を図ることが如何に重要かを物語っている。
また、100人あたりのワクチン接種回数(回)でダントツに多いのは、人口900万人強のイスラエルの66.4%であり、次いで人口980万人強のUAEの47.9%で、報道によると、Pfizer社とネタニヤフ首相との、「接種データのPfizerへの提供」と「高額な代金の支払い」により、イスラエルに優先的に提供されることとなり、2020年12月19日の夜、ネタニヤフ首相が接種を受ける様子を映し出したテレビ生中継で、イスラエルでのワクチン接種は開始された。
日本でのワクチンの接種予定
接種用のワクチン第1便が到着
日本で最初に接種されるワクチンは、ファイザー社のワクチンとなることは確実で、約40万回分のワクチンを載せたANAの貨物機が、2月12日午前10時20分に、ベルギーのブリュッセルから成田空港に到着した。
輸送した国際物流大手のDHLの責任者によると、ワクチンはドライアイスが詰められた専用の箱でおよそ―70℃に保たれた状態でベルギー国内の工場からDHLの配送拠点に届き、中に入った特別なセンサーで箱の中の温度を監視できるようになっており、「日本には毎週輸送する計画がある」とのことで、今後ともファイザーの工場からワクチンが届き次第、順次日本に輸送する」とのこと。
2月12日に厚労省専門家部会が承認を了承し、2月14日午後に正式に承認された。
16歳以上が対象で、原則3週間の間隔を開けて、2回接種する。
今後、下記スケジュールで、各対象者の詳細は下記の通りで、ワクチンの接種が進められる予定である。
2月17日頃~:国公立医療機関の医療従事者(1~2万人:副反応等の状況確認のため)
→(3月頃~?)その他の医療従事者(約400万人)
→(4月頃~?)65歳以上の高齢者(約3600万人)
→(5月頃~?)基礎疾患を有する者(約820万人)
→(5月頃~?)高齢者施設等の従事者(約200万人)
→(6月頃~?)それ以外の一般の人
21年前半までにすべての国民に提供できる数量のワクチンの確保を目指す。
「厚労省の新型コロナワクチンの接種順位のまとめ」は下表の通りである。
ワクチンの効果
ワクチンの期待される効果
感染予防:接種した人が感染しない
発症予防:発症者が減少する
重症化予防:(死亡・入院等の)重症患者が減少
集団免疫効果:接種していない人にも波及する予防効果
ワクチン接種の副反応
ワクチンの副反応(首相官邸:河野大臣:YouTube動画:2021.02.02)
接種部位の痛みは、インフルエンザワクチンよりも強いと感じる人が多く、今回のワクチンは免疫反応により、接種部位に炎症が起こりやすいのだと思われる。接種1回目よりも2回目の接種後の方がこうした副反応が出やすい。
アナフィラキシーの発症頻度は、ファイザー社ワクチンで189万回中21件(10万回で1人)、モデルナ社ワクチンで約400万回中10人(100万回で2.5回)と報告されており、この数値は、米国のデータベースでの従来のワクチン接種約2500万回を検討した報告、ワクチン 100 万回あたり 1.31回と比較すると、やや高い頻度であると思われる。
ノルウェーで、高齢者向け介護施設入所者に、ファイザー社のワクチンの投与をしたところ約4万2000人のうち33人が亡くなったと1月半ばに報告された。0.08%という高い死亡率であるが、いずれも75歳以上で、基礎疾患を持つ、余命僅かであった人も含まれ、これら高齢者向け介護施設では、週平均400名が死亡しているところから、重い基礎疾患を持つ患者にはワクチンの一般的な副反応である発熱や吐き気が致命的になった可能性を排除できないとしている。
【下記の内【YouTube】(動画:アナウンサーが原稿を読んでいる分)は、昨日15日の朝6時過ぎには、某テレビ局がYouTubeにアップしていたのですが、今日16日の朝10時頃に再確認したところ、見ることが出来なくなっていました。
一方【インターネット】(文字情報の分)は、16日15時現在でも、まだ見ることができます。(藤本)】
【YouTube】[新型コロナウイルス] ワクチン接種後に死亡 0.003% 米国内で1170件
【インターネット】ワクチン接種後に死亡 0.003% 米国内で1170件 CDC「関連があるとは認められないが、引き続き調査」
ワクチン接種との因果関係は不明であるが、0.003%で1170件の死亡と言うことは、3900万人で1170件と言うことであり、CDCが「死亡原因が接種によるものかどうか、詳しく調べている」とのことであるが、早急な因果関係の解明が待たれる。
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