奈良の都に紅葉を愛でる

      2018/09/21

 

 

 koya tanaka 田中 功也

 

◆興福寺五重塔

 

 

 やまとは国のまほろばたたなずく青垣山ごもれるやまとしうるわし・日本武尊

 (2017年)11月28日、奈良の都は一点の雲もなく晴れ上がり、真っ青な空を背景に紅葉はその鮮やかさを際だたせる。訪れた人々は紅葉を愛でつつ鹿と戯れる。平日のこの日も興福寺、東大寺一帯はたくさんの人であふれる。西洋人も多いが、行き交う人々から聞こえてくるのは中国語、韓国語ばかり。たまに日本語が聞こえると懐かしい感じがする。

◆興福寺南円堂

◆奈良公園

◆奈良公園

 

 一の鳥居をくぐり春日大社表参道から少し南へそれた奈良公園に、明治40年創業の料理旅館「江戸三」がひっそりと佇む。草庵風の離れが点在し、その一庵で友人6人と昼の宴を張る。志賀直哉、小林秀雄、藤田嗣二、堂本印象、池波正太郎など多くの文人墨客が訪れた老舗料亭である。

 紅葉を愛でながら、りんごの食前酒、穴子の先付、お造り、きりたんぽ鍋、牛のステーキ、さわらの焼き物、ぎんなんのかき揚げ、サンマの酢の物‥‥と、老舗の懐石料理を堪能する。美酒に酔い、美食に舌鼓を打つ。時おり鹿が顔をのぞかせる。まさに至福のひととき‥‥

◆料理旅館「江戸三」

 

 ほろ酔いで歩を進めると、国立博物館を過ぎたあたり依水園のすぐ南に吉城園がある。古絵図によると興福寺の子院の摩尼珠院があったところとされる。大正8年に現在の建物と庭園が作られた。園内は、池の庭、苔の庭、茶花の庭からなり、苔の庭には離れ茶屋がある。明るい日の光を受けて紅葉が黄金色に輝いている。三つの庭巡りを楽しむ。65歳以上は入園料が無料なのも嬉しい。

◆吉城園

 

 入江泰吉旧居、戒壇堂から大仏殿の裏通りへ。この辺りまで来ると観光客の姿もまばらとなり、古都の静けさを心ゆくまで楽しむ。二月堂、三月堂を経て東大寺前の鏡池へ。所々に燃えるような紅葉が現れはっとする。

◆入江泰吉旧居

◆戒壇堂

◆東大寺大仏殿

◆二月堂

◆東大寺境内

◆東大寺鏡池

◆大仏殿と鏡池

 

 小春日和の一日だったが、近鉄奈良駅に戻る日暮れ時には、冷気が忍び寄っていた。思い思いに柿の葉ずしや奈良漬をお土産に求め、堺への帰途につく。

 

 

 

 

 

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