信貴山断食道場の思い出 １４・１５

※毎月10日・20日・30日に原稿更新中です。

信貴山断食道場の思い出１４　　12㌔痩せたＡ子ちゃんの出発

皆さん、大変お世話になりましたぁ～。

ある朝、談話室に明るい声が響き、華やかなレースのワンピースを着た女の子
が退所の挨拶にやって来ました。

(._.？) ン？ 「誰？」 一瞬固まる道場生一同…。

「え～？Ａ子ちゃんなの？」「きゃ～～細い～！！」「可愛いワンピース、似合ってる!！」
と、駆け寄るダイエット仲間の女の子たち。
「おぉぉ～～！」と声にならない声を上げ、遠巻きに眺める男性陣。
それは、２週間の断食で12キロのダイエットに成功したA子ちゃんの晴れ姿でした。

皆が一瞬「誰？」となったのには理由があります。

彼女は、ぽっちゃり体型でうつむきがちな暗い印象の女の子。顔立ちは決して悪く
ないのに、ボサボサに伸ばした髪の毛で顔を覆い隠すようにして…。
「どこそこのスィーツが最高！」だとか、「道場を出たら、みんなであの店のコース料理
を食べに行こうね！」だとか、そんな女の子同士のおしゃべりにも加わらず、
ヨガの時間や散歩の時もいつも単独行動。何だか思いつめた目をして、神社の土手に
うずくまっている姿を見かけたこともあります。

なのに今は、髪をすっきりアップに結っておでこを見せ、綺麗にお化粧をして…。
いつも着ていたダボダボのジャージ姿からは想像もできない変身です。
自信に満ちあふれてるし、声まで1オクターブほど上ってるし。

｢こんなワンピースを着るのが夢だったの！部屋の壁にかけて、3週間ずっと
眺めて、これを着られる日を楽しみにしてたのよ！」と言いながら、くるくるっと
回ってみせるA子ちゃん。

うんうん、その気持ちよく分かるよ、良かったねA子ちゃん！
女の子は誰だって「可愛いね」と言われてチヤホヤされる権利があるし、生まれ
つきの容姿よりきっと、大切なのは自信なんだよね！！

何だか一同「じ～ん」と胸が熱くなり、A子ちゃんの新しい旅立ちを
拍手で見送ったのでした。

信貴山断食道場の思い出１５　　アルコール依存症を克服したシングルマザー

太ってしまうには訳があり、私の場合それはお菓子の食べ過ぎです。

たとえば手元にチョコレートがひと箱、お土産にいただいた和菓子がひと箱あるとします。
チョコレートなら1度に２～３粒、和菓子なら１個食べるくらいなら、太ることはありません。
でも太っていた頃の私はと言えば、目の前にあるお菓子は、ひと箱すべてを食べずに
いられませんでした。（笑）

絶え間なく手が動いて止まらず、途中からはもうそれほど美味しいとも思わないのに…。
それでも止められないのは、甘いものがさらに甘いものを求める一種の依存症なのだとか。
心に満たされない隙間があり、それを甘いもので埋めようとする、代替行為なのだそうです。
ダイエットは突き詰めると、根が深い心の問題なのかもしれません。

心に起因するさらに深刻な問題といえばアルコール依存で、道場にはその治療に来ている人
もいました。断食をして体内の毒素をすっかり出し切ることにより、毒性のあるものを
体が受け付けなくなり、無理なく「断酒」ができるというわけです。

その人は40代後半のシングルマザー。息子と娘を私立の大学に通わせ、最後の学費を払い
終えたばかりという頑張り屋さんです。
夫が他に女性をつくって家出。進まない離婚の話し合い、生活費を入れない夫、
家のローンのこと…。それまで何不自由なくおっとりと暮らしてきた彼女は、突然世間の
荒波に放り出され、子供を抱えて働かなければならなくなりました。
その頃からお酒なしには眠れなくなり、ひどい時は一晩で750mlのワインを2本半も
開けてしまうとのことでした。

何より辛かったのは、子供たちの反抗。どんなに不誠実な父親でも、子供にとっては大好き
なパパなわけで…。パパが家を出たのは｢ママのせい」みたいになり、娘は引きこもり
息子は軽いＤＶ状態になった時期もあったとか。

でも、ある時娘さんが、「パパのことはもう、切り捨てるしかないんだね！」と
電話で友人に話してるのを聞き、断酒を決意したのだそうです。。

道場に来て嬉しかったのは、体からお酒が抜けただけでなく、長年頭の中にあった
モヤモヤしたものが晴れ、不眠や肩こりも治ったこと。
そして道場長に、
「良く頑張りましたね、もう大丈夫ですよ。これからは自分の幸せを考えてね。子供さんたちもきっと、それを一番望んでるはずですよ」と励まされたことだそうです。

彼女はみごと2週間の「断酒」をやり遂げ、迎えに来た娘さんと肩を並べて、嬉しそうに
山を降りていきました。