万葉集を読むようになったのは、大学入学後のこと。学徒動員の多くの大学生が万葉集を携えていたことによる。長年読んできた岩波文庫の「万葉集上・下」の二冊は、すっかり赤茶けてしまった。現在の同書は五分冊となり、4516首の全首に注釈があり、容易に理解できる。
好きな歌はくり返し読んでいるが、それまで読み飛ばしていた歌からの「発見」も少なくない。新年号「令和」の出典となった巻第五の「梅花の歌三十二首」は、くり返し読んでいる歌だ。
大伴旅人、山上憶良、山部赤人などのいわゆる「筑紫歌壇の歌」は、私たちになじみ深い地名が多く出ており、御一読をすすめたい。
さて、この企画は好きな歌や句を一つ紹介するということなので、天智天皇の子であり、桓武天皇の祖父である志貴皇子の歌を一首。