フィリピン再訪記 Vol.3

      2019/07/22

◆ルカップ岬からハンドレッド・アイランドを望む

 

アラミノスでの穏やかな日々

 到着当初は身体も慣れてなく、連日のダグパン・スワル通いで疲れました。その後は、バギオ・ビガン行きを挟んで、アラミノスではのんびり過ごしました。早朝のウォーキングや町の散策を楽しみ、ラモス夫妻家族と公園に夕涼みに行くなど嬉しい日々でした。色々な変化を見つけ、時の流れも感じました。今回は、アラミノスでの生活の様々なことを書きます。

 天候・気象ですが、この時期のルソン島北部は、乾季で雨は降らず毎日晴れです。気温は30度未満で湿気はなく風があります。日中に出歩いても軽く汗ばむ程度ですが、強烈な日差しと町中の騒々しさが重なって疲れます。外出から戻ると、短い昼寝で休息しました。前回滞在間に自然と習慣になった生活のコツです。今回も妻の方が徹底していました。

 早朝のウォーキングは、私達が楽しみにしていた1つでした。薄明るくなる6時過ぎから8時頃まで、オレゴンビル前の真っ直ぐな道路をルカップ岬の近くまで往復しました。朝の清々しい空気を肌に感じ、野山や水牛を眺めながら歩いていると、徐々に朝日が昇り始めます。その心地良さは忘れられません。復路で7時半頃になると、通学の高校生達が乗るトライシクルで、車道は混雑してきます。静かな楽しみから賑やかなモードに変わり、若い人達の元気な姿を眺めながら帰りました。ウォーキングの終わりは、近くの雑貨店でアイスを買って帰り、部屋で味わいました。

◆ 早朝ウォーキングの途中で徐々に昇る朝日

◆白い水牛を眺めながらのウォーキング

 折り返し地点にしたルカップのゲートには「ルカップにようこそ。」と書いてありますが、BRGY:バランガイとは、自治体の基礎となる共同体(部落)です。例えば、スワル市は19のバランガイで構成されています。ゲートは、バランガイの入口となる道路などに立っています。あちこちで見かけます。

◆バランガイ・ルカップのゲートには「ルカップにようこそ。」の文字が

愉しいアパート暮らし

 アパート生活ですが、エアコンは長く続けて使わず、扇風機を多く使いました。シャワーは毎日2回~3回浴びました。電気給湯器も付いていましたが、一般的に性能は低いです。でも、強い日差しで建物内の水道管も温められ、水シャワーでも冷たくありません。普通の人達は水シャワーか水をかぶります。給湯器は大変な贅沢なのです。

 都市ガスのインフラはなく、プロパンガスが使われていますが、ガス給湯器や屋内配管を見たことはありません。裕福な所や新しい建物では設けているのかも知れません。短時間の停電や減水・断水が時たまあります。前回のスワル滞在時、朝から夕まで半日間の停電もありました。

 水道水は飲めません。炊事などに使う水は、水缶で買います。注文すれば空実交換してくれ、蛇口付なので直ぐ使えます。1缶40ペソほどします。私達は、湯冷ましを作って飲みました。レストランでもサービスウォーターが無ければ、ペットボトルの水を注文します。

 洗濯は手洗いでした。夏物ですから楽で、大きなバケツ・たらいに洗剤も入れて揉み洗いや踏み洗いをします。水遊びみたいでした。早く乾くので気分も上々です。強い日光を浴びて、4時間ほどで取り込めます。

◆左 洗濯物を干している私達の部屋(2階):西向きで日当たり良好  右上 最も使ったトイレ・シャワー室 右下 蛇口付きの「飲み水」の水缶:空実交換します

トイレはちょっと大変!?

 次に、トイレ使用法を紹介します。一般に水洗トイレの注水・排水が悪いのです。一流ホテルなどは別かもしれませんが、次の注意をします。あちらの人達には常識で身についています。

①トイレットペーパーは便器に流さない。②注水・排水が悪い場合は、水を汲んで流す。これらは、置かれた水や容器などで判断します。それと、小さな桶で水を流しながらお尻を洗うこと(手動ウォッシュレット?)もあります。紙がなくても用を足せ、意外と気持良いものです。オレゴンビルでは上々の流れでしたから、紙を別に捨てるだけでした。

清潔好きなフィリピン人

 ついでに、家庭ゴミの捨て方を紹介します。捨て場は方々にあります。面白いのは、電柱などの柱類とか家の壁の釘とかに袋を吊るし、地面には殆ど置きません。犬などに荒らされないためのようです。生ごみ類と燃える物の2つに分別します。缶やペットボトルは、お金になるので普通捨てません。捨てても、誰かが収集車の回収前に持って行きます。決して散らかしません。

 日本人はフィリピンの町を汚いと感じるようですが、あちらの人達は綺麗好き(清潔好き)だと、私は思っています。掃き掃除なども毎朝しています。シャワー(水浴び)もよくして清潔にします。上流の人達は、お客様を待たせてもシャワーしてから会う、と聞きました。満員のバス内で体臭などを感じたことはありません。衛生状況が悪い面は多くありますが、不潔と感じる感受性は私達と同じだと思います。

◆家庭ゴミは吊るして出します。

自炊では炊飯器が大活躍!

 次に食事のことです。朝食などは自炊しました。簡単な炊飯器ですが、十分に美味しくご飯が炊けます。電気店に日本製炊飯器はなく、携帯電話なども同じですが、高品質でも高価だから売れません。

 ガスは使わなかったので、炊飯器で茄子・オクラ・苦瓜などの温野菜やゆで卵を作り、レストランからテイクアウトした唐揚げやピザなどをトースターで温めました。パンや粉末スープは多種売っています。果物ですが、大変美味しいスイカ・マンゴーを堪能し満足でした。リンゴは「ふじ」で小さいのですが、味は日本の物と同じです。

◆大いに役立った電気炊飯器・トースター・湯沸かしポット

◆左 自炊:炊飯器で作った温野菜 右上 スイカ:エイミーさんからいただいた極上品 右下 マンゴー:こちらもエイミーさんからの極上品

フィリピンのレストラン事情

 外食は殆どレストランでした。家庭料理的な普通の食事は、多くあるトロトロと言われる大衆食堂で安価に直ぐ食べられます。魅力的なのですが、外見では衛生的判断が出来ません。前回の滞在では、見聞きした店で何回も食べましたが、今回はピザ店とかレストランにしました。A型肝炎の予防注射もしましたし、過剰な用心だったかもしれません。

 PURPLE PLATE PIZZAと言うピザ店には、Wi-Fiも使えて美味しいので2回行きました。母・娘で切り盛りし、とても親切にしてくれました。大きなチェーン店レストランのShakey’sには何回も行きました。鶏の唐揚げ・ピザ・スパゲッティ・スープなどが主なメニューでした。少し多めに注文し、残りをテイクアウトしておかずにしました。食べ残しは、全てしっかりと包装して持たせてくれます。シニア割もしてくれました。

◆レストランShakey’sでのある日の注文料理 

フィリピンではビールに氷を入れて飲む!?

 レストランでもアパートでも、サンミゲルのビールを飲みました。最も有名で美味しいです。前回滞在時は、小瓶24本ケースを買っていました。現在は殆どが缶になっていて、新製品のサンミゲルライトがすっきりして美味しいので、こればかり飲みました。価格は1/3ほど高くなったと思います。面白いことですが、フィリピンではビールに氷を入れて飲む人が多くいます。冷えていても入れます。レストランでも「氷は?」と聞かれます。強い度数のビールがありますが、それだけではないのです。美味しいからだろう、とは思いますが。

◆マキシン・バイ・ザ・シーでの食事 ビールはサンミゲルライト

 息抜きはカフェですが、地方都市では少ないです。前述のグローリアさんに聞いて、Wi-FiができるCRAVINGSと言うカフェに何回も行き、店の人とも馴染みになりました。ゆっくり家族と連絡し、コーヒーを味わいました。コーヒーは90ペソでしたが、アラミノス(田舎)でも100ペソ近いコーヒーを飲ませる店が出来たのか、という感じを覚えました。

 昼食時には若い学生が多く、スマホを片手に日本と変わりません。このような店に来れるのは、裕福な家庭の子供です。殆どの学生・生徒達はトロトロで食べます。或いは屋台で買って食べます。セブンイレブンで買って食べるのは、どちらかと言うと裕福な方と思います。

◆カフェCRAVINGSでの憩い

ルカップ岬の公園で夕涼み

 ゆっくり過ごした日の夕方に、ラモス夫妻から誘われて、ルカップ岬の公園での夕涼みに2回連れて行って貰いました。夫妻は、孫2人とロレンソさんの従兄弟の子を預かって育てています。頻繁に連れて行って遊ばせるとのことでした。

 ロレンソさんの立派な大型トライシクルで出掛けました。以前に所有していた乗用車は廃棄されたようでした。早朝ウォーキングの真っ直ぐな道を風を切って走りました。

◆公園でラモス夫妻家族と妻(私は撮影)

◆ルカップ岬に出来た新しい公園

快い風に吹かれて身の上話

 ルカップ岬は、沖のハンドレッドアイランドという有名な観光地への渡船が出る所で、景勝地です。ロレンソさんによれば、1つ沈んで99島だそうです。大きな公園が整備されていました。立派で素晴らしいと感じましたが、昔の素朴な風景を懐かしく思い出しました。子供達は、積んできた自転車や遊具などで遊んで嬉しそうでした。

◆ハンドレッド・アイランドは外国人には未知で、地元の人に愛される隠れリゾート  ※こちらは昼間の風景

 私達とラモス夫妻は、園内を散歩してからテーブルに向き合って座り、気持良い風の中で、飲み物とスナックをつまみながら、互いの若い頃の結婚生活や子供達の事などを色々と語り合いました。境遇に立ち入って話すことは、これまでは殆ど無かったので、とても親しみを深めることができました。

 ロレンソさんが船に乗っていて、エイミーさんが熱心に手紙を書いた話は、とても微笑ましいものでした。親の世話で大変なのはどこも同じです。陸軍士官に嫁した娘とバギオの農科大学に在学中の次男は国内ですが、カナダで働く長男が永住を目指しているとのことで、フィリピンの実情を反映するものだと思いました。お二人の人柄と心遣いを感じ、とても嬉しいひと時を過ごしました。

日常生活を愉しむフィリピン人

 アラミノスは、1Km×2Kmほどの小さな市街地を持つ地方都市ですが、大きなショッピングモールが2つと大きなスーパーなどが幾つかあります。市場を見物して野菜・果物などを買ったり、モールやスーパーを覗いたりしながら楽しく過ごしました。オレゴンビルは市庁舎の近くで、その一角には大きな教会と公園があります。公園には、運動やイベントが出来る施設が作られています。フィリピンでは、このような形式の公園(広場)を多く見かけます。アラミノスのこの公園では、昼間は球技などをやり、夕方から夜にかけては、ダンスなどをして楽しんでいます。照明だけでなく華やかな飾りやイルミネーションがあり、周囲には常に屋台が出て賑わっています。散歩しながら見物しましたが、いつも大変楽しい気分になれました。

◆ショッピングモールCSIで買い物・食事

◆道端で売る人もいます。 

◆アラミノスのメインストリート

◆賑やかな公園でダンスを楽しむ人達

変わりゆくフィリピン

 今回の滞在で気付いた変化の1つは、物価が上がったこととインフラ整備等の兆しです。飲食や買い物、それにバス・トライシクルでの移動などを通じて感じたのですが、大雑把に3割ほど物価が上がったのではないかと思います。

 また、道路の整備や横断歩道の設置などを見ましたし、新築や建設中の建物も多く目にして、インフラ整備が進んでいる感じを持ちました。交通整理の実施や地震対処掲示板と方々の禁煙警告表示を見て、ソフトな面の社会的環境整備も感じました。前回の滞在期間は1年にも満たないものでしたが、このような感じは持ちませんでした。変わりつつあることは間違いないと思います。

 壊れそうなボロバスは少なくなり、タバコの1本売りの屋台も見かけませんでした。フィリピンのためには良いことだ、と思わねばなりません。売るために伐採してしまった禿げ山が緑になるのも夢見たいと思います。

◆ルカップ岬への道路:路肩が整備されました。

◆地震対処掲示板:英語・タガログ語

 一度書きましたが、今回の費用は、ATMは使わず両替のみで賄いました。為替レートは10年前より約5%ペソ高で大差ありません。フィリピンでの両替の方が約18%も得で、どの両替店も信用できました。20年前にパリで見かけたようなひどい店はありません。

 両替店が多いのは、出稼ぎが多いフィリピンの事情によるものだと思います。保管していた旧札を持参しましたが、新札との交換期間を過ぎていて、使えずに苦笑しました。硬貨は旧も使えました。気の毒そうに同情してくれました。流通している札の殆どは綺麗です。頻繁に使う20ペソ札だけは、皺や汚れのものが多くあります。バスの車掌さんがその皺を素早く延ばして、指の間に次々と挟んで持ちますが、その技は見ものです。

◆両替した明細書:2009年と2019年

 

 次回は、2度目になるバギオと初めて行く世界遺産ビガンのことを主に書きたいと思います

 

 

 

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