フィリピンこぼれ話

      2019/11/07

 10年前妻と一緒にフィリピンに渡航し、ルソン島北部パンガシナン州のスワルでボランティア活動をして、スワルの他にダグパンとアラミノスにも住まいました。得難い体験でした。

 懐かしく思う二人の気持が高まって来て、今年1月に再び訪問しました。思い出を「フィリピンボランティア滞在記」・「フィリピン再訪記」として投稿させていただきましたが、「こんな事もあった。こんな事も感じた。」と思うことを書いてみます。これまでの投稿記事と重複する点があるかもしれません。ご容赦下さい。

[その1] どこかで聞いたような話:養殖池と禿げ山

 あちらの人達の日本に対する恨みごとの話です。フィリピンに限らず東南アジアの国々などでもある話かもしれません。

 ダグパンの郊外には大小多くの養殖池があってバンガス(一般的にミルクフィッシュと言われます。)がとれます。大きくて値も張るミルクフィッシュは、焼魚がとても美味しいです。醤油でもよいのですが、魚醤だと一段と味が引き立ちます。

◆左:ダグパン近郊の養殖池  右:バンガス料理 街中の屋台では焼き立てが約80ペソです。

 実は、これらの池は元々エビを養殖していたそうです。日本の商社などが話を持ちかけ、水田をつぶして養殖池にしたのです。とれたエビは日本に輸出されて、ここの人達は喜んで励んでいました。ところが、東南アジアなどのエビの方が安く日本に入るようになり、日本の商社などはここのエビを買わなくなりました。困ったのは養殖などを生業としていた人達です。水田はもう元に戻すことが出来ません。彼らは苦労してミルクフィッシュの養殖に辿り着き、息をつくことが出来たのですが、「日本には売ってやるものか。」との恨みの言葉が出たのでした。

 禿げ山の話ですが、私が初めて渡航して、スワルからダグパンやアラミノスに通うようになった時、途中の景色を眺めていたら「どうしてこんなに禿げ山ばかりなのだ?」と不思議に思うようになりました。初めは、樹木が育ちにくい岩山なのかなとも思いましたが、そうでもなさそうに見えました。

◆スワル近郊の禿げた山 

◆アラミノス近郊の禿げた山

 そのうちに、「植林されていないのだ。」ということを理解しました。木は売って金になります。日本の商社などが買いまくったに違いありません。そして、伐採後のケアまではしなかったのです。売って金を得たのは、小さな土地しか持たない庶民ではなく、おそらく大金持の地主(ファミリー)なのでしょう。禿げ山のままに長年放置されていることを痛ましく思いましたし、話題にしたら寂しそうな顔をされたので悲しさも覚えました。

[その2] フィリピンの人達は日本より高価なバナナを食べている⁉

 妻が買い物から帰宅し「バナナ(の房)を2つ100円で売っていたよ。」と驚いたように言いました。それ程でなくてもフィリピン産のバナナが安いのは皆さんもご存知の事です。だから、あちらでは「ただ同然だろう。」と思われるでしょう。私達もそう思っていました。ところが、あちらの街中で買うと1房が25ペソほどするのです。つまり約50円です。運賃や手間は日本への輸出と比べれば少額のはずです。ですから、フィリピンの人達は日本より高いバナナを食べていることになります。

◆八百屋の店先に置かれたバナナとマンゴー 小規模生産者(農家)の物と思われます。少量で小さく立派ではないです。バナナ屋ではバナナだけを多量に置いています。

 それは何故でしょうか。フィリピン産バナナの多くは大農園で作られているからだと思います。大金持の地主(ファミリー)が経営し、大量に生産し輸出しているのです。日本の商社などもこれに関わり利益を得ているのでしょう。ですが、産地の国内には安く流通していません。対抗する生産者(事業者)がいないからだと思います。私達がお世話になったアパートの大家さんのラモスさんは、小さなマンゴー畑を持っていて手入れをしていましたが、そのような中・小の生産者(農家)が殆どないようでした。つまり、大農園(大地主)が独占する構造になっているのだろうと思います。このような事は、他の色々な面でも感じられた事でした。

◆揚げバナナ 揚げたうえに砂糖をまぶして甘くしたものをおやつで食べます。庶民的スイーツの代表格と言えます。

 でも、私が不思議に思うことがありました。高いバナナを買って食べるのなら、バナナの木を1、2本でも植えればいいではないか、と思ったのです。散策する時もバスの中からも眺めましたが、植えている家は少ないのです。ちゃんと実はついて育っていました。難しいことではないと思うのですが、どうも理由が分かりません。また行った時にラモス夫妻にでも聞いてみたいと思います。失礼ながら、あちらの人達は欲がないと言うか工夫が足りないように感じました。

 いやいや、あちらの良い工夫を1つ思い出しました。幹線バスでのことです。長距離バスなのですが、定額の料金を取って定員外にいくらでも乗せます。日本の長距離バスでは定員は厳守です。鉄道の自由席では立ちますね。

 そこで、フィリピンの長距離バスですが、真ん中の通路に小さな椅子で座らせるのです。幼児用のような小さなプラスティックの椅子が重ねて後ろの方に置いてあります。満席時に乗って来たお客さんは、黙っていても椅子を取り出して座ります。当然の如く文句も何も言いません。

◆長距離バスの通路に腰掛ける乗客 アラミノスからマニラに向かうバスの車中です。

 勿論、高齢の人などには席を譲ります。「なるほど、これは良い。」と思いました。寒くてもエアコンは切らないのに(詳細は既報)、こちらの方は大変現実的対応です。共通点は乗客が文句を言わないことでした。(話が少し逸れました。)

 今回はこれで終わります。思い出しながらもう少し「こぼれ話」を捜します。

 

 

 

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