さて、今回はこの歴史的な名器「ニコンF」が重要な小道具として使われた映画を紹介しよう。日活の往年の青春映画『あじさいの歌』、石原裕次郎演じる主人公と、頑迷な父親によって屋敷内に閉じ込められた旧家の娘との通い合う心を描いた物語。彼の爽やかな行動が温かい春風となって、古い因習にとらわれた人々の心を解かしていく。
芦川いづみ演ずる旧家の娘の清楚な美しさに心奪われた主人公は、邸内に咲くあじさいをバックに彼女の写真を撮るのだが…。そのカメラがニコンFである(ポスターで裕次郎が手にしているカメラ)。裕次郎が切ったシャッター音を、私は今も鮮やかに覚えている。60/1秒だった。
石原裕次郎が映画の中で手にした「ニコンF」は、今も現役で東京の収集家が所有しているとのことだ。