カメラとともに Vol.11 ブルーベリー物語絵巻

      2019/09/16

◆色づきはじめたブルーベリーの実

 

今回はブルーベリーの生長過程を追ってみました。

 鹿児島市のはずれに「都市農業センター」という広大な施設があります。この中にブルーベリーの果樹園があり、昨年の春ここでブルーベリーの花と初めて出会ったのがきっかけで、その後足繁く通い詰める羽目になりました。これは1年半にわたる観察のドキュメントです。

 

2018 Apr.

 そもそもの、お付き合いのもとになったブルーベリーの花です。初めて見たのですが、真っ白く清楚で可憐な姿に魅せられました。
 実はこのとき、私は既にブルーベリーの巧妙な術中にはまっていたのです(後述)。接写しているので大きく見えますが、花径10 mmたらずの小さな花です。

 

Apr.

 4月中旬、開花した花が多くなるとともにたくさんのミツバチがやって来て活発に受粉作業が行われます。

 

May

 5月になると真っ白だった花冠(花びら部分)が朽ち始め、やがて花冠は完全に脱落してしまいました。

 

May

 花冠が全て落ちてしまうと、萼(がく)の部分が次第に赤味を帯びて目立つようになり、真っ白だった花の時期とは打って変わって赤系の鮮やかな色彩で賑わい始めます。一年をとおして最もあでやかな時期だと感じます。
 とはいえ、多少チャラチャラしすぎているという気はしますが…。やっぱり清楚な白い花の方がいいのかな。

 

May-Jun.

 5月から6月にかけて子房が丸くふくらみ初め、淡いピンクに色づいてきます。この頃から萼であった部分の赤味はいっそう鮮やかになってきました。

 

Jun.

 6月半ばになると子房は益々大きくなり、濃い青紫の“ブルーベリー色”の果実が見られるようになりました。この時点では様々な色の実が混在しています。

 

Jul.

 7月になると完熟状態の実が数を増し、いよいよ収穫の時を迎えます。

 

Jul.

 摘み取られたブルーベリーをじっくり眺めてみました。1個の実を地球に例えると、北極には萼の痕跡でふちどられた5角形の大きなヘソがあり、南極には枝につながる柄がついていた小さなへこみがあります。
 ブドウの実には北極側のヘソがなくツルンとしていますよネ。ちなみに、ビワやリンゴにも小さいながら北極側のヘソがあり、サクランボやカキなどにはそれがないことに気づいて、すごい新発見をしたような気になりました。ただ、どこか間違っているような気もするので宿題にします。

 

2019 Mar.

 ところで、白い花と初めて出会ったのは昨年の4月上旬でした。こうなると開花前の蕾(つぼみ)も見ておきたいと思い、1年待って今年の3月に確認したのがこの写真です。赤味の強さが印象的でした。蕾の部分だけでなく、枝も葉っぱも赤味を帯びています。

 

2019 Jul.

 これまで見てきた生長過程を水彩絵具でボタニカルアート風に描いてみました。
なんとも残念なのは、蕾を確認するために1年間も待ったのに、2月に「花芽」を撮りもらしていたことです。こうなったら来年の2月まで待って「花芽」をねらうことにします。したがって、この物語の完成は来年までお預けです。

 

一連の成長過程を追ってきて一つの疑問がわいてきました・・・

 色の変化に注目すると、3月の赤いつぼみから4月の純白の花びら、そして花が散ったあと再び訪れる鮮やかな赤系の彩り…、これらのめまぐるしい色彩の変化は一体何なのでしょうか。
 ブルーベリーに見られる赤系~青紫の色は主にアントシアニンによるものですが、成長過程を追っていくと樹全体にアントシアニンが満ちあふれているかのように感じられます。純白の花の時期を唯一の例外として、萼にも葉っぱにも枝にも常に赤系の色が見られます。純白の花の時期でさえ、花びら以外のところには淡いピンク色が散見されるのです。

 たどり着いた仮説は、「ブルーベリーは花の時期だけ赤色の存在を必死に隠そうとしているのではないだろうか」ということです。もともとブルーベリーは樹の中にあふれんばかりのアントシアニンを持っているのに、花の時期だけはそれをひた隠しにして、純白の花をよそおいミツバチなどの昆虫をおびき寄せて、効率よく受粉を進めているのではないでしょうか。あたかも入念なお化粧によって虫たちをだましているかのように思えます。だとすればなんと巧妙な戦略でしょうか。私もまんまとワナにはめられたのです。

 受粉のあとは色を気にする必要がなくなり、アントシアニンを心置きなく前面に出して全体が赤く色づき、最終的には濃い青紫の完熟果実のできあがりというわけです。

でも・・・だまされたと気づいても、いまだに悪い気がしないのはなぜでしょう。

 

 

 

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