アナザーストーリー ◎王子製紙回顧録 最後の任地-思い出の鹿児島
馬渡さんは1968年に王子製紙に入社。以来39年間、激動する日本経済の基幹にあって、製紙産業の内外原料の調達業務一筋に活躍され、2007年6月にグループ企業社長をもって退社。『王子製紙回顧録』はその間の激闘の記録を、寿禄会ホームページに連載いただいたものです。
本文横にあるタグ「馬渡和夫」で検索いただければ、バックナンバーを読むことができます。最後の勤務地・鹿児島での4年間の回顧録はこちらを参照ください。
最終章 王子製紙グループ 協栄木材(株)回顧録
※編集部
私が、サラリーマン人生にピリオドを打った年は、2007年7月で、既に17年前になる。最後の任地が鹿児島市であった。在任期間の4年間で社長として働いた。4年後に退任することは分かっていたので、4年間の大まかな仕事の内容を、1年目、業務の実態把握、2年目、問題点の把握、3年目、改善対策、4年目残された課題の解決を目標に仕事を進めた。王子製紙およびグループ企業での記録は回顧録に書いたので、今回は仕事以外の鹿児島の楽しい思い出について記述したい。
鹿児島での住居は、鹿児島中央駅から歩いて10分ほどの甲突川沿いの13階建てのマンションの11階に決めた。マンションからの眺めはすばらしく、目の前に桜島が悠々と 聳えており、目を下に移すと、ゆったりと甲突川が流れている最高のロケーションである。
川の左手は、明治の世で活躍する西郷隆盛、大久保利通らの人材を輩出した鍛治屋町である。この景色を眺めていると、明治の元勲達もこの素晴らしい景色を眺めながら育ち、あの大偉業を成し遂げられたのも納得がいく様な気がする。
甲突川沿いには600本のソメイヨシノが植栽されており、春先にはサクラの花が咲き乱れ、サクラ見物の人達が場所取りに余念がない。毎晩10時ころまで花を見ながらの宴会が続いている。
花といえば鹿児島でいかにも南国的な花は、カイコウズ(別名アメリカデイゴ)だろう。南米原産で強烈な緑の葉と赤い花弁が鮮やかなコントラストを見せている。
6月頃から花が咲くが、花が咲き乱れる年は台風が多く、花弁が少ない年は台風が少ないという言い伝えがある。確かに2004年の花は沢山咲いて鮮やかだった記憶があるが、その年は4回も台風に直撃された。
また、南国で忘れてならない樹種がクスノキである。クスノキは常緑広葉樹だが、3月には古い葉を落として、いっきに赤みを帯びた華やいだ色の若葉に変る。その後ぐんぐんと緑が増していくが、何と言っても晴天の日に燃えるような黄緑の新緑は格別な光景である。
年1回の健康診断では、コレステロール、糖尿病等の数値が、基準値をオーバーし始めたので、勤務時間中の12時からの1時間を食事と散歩に使うことにした。
私の事務所は、鹿児島市の中心部天文館、いずろ通から海側に5~6分歩いた所にある。昼食は近くの食堂で食べるが、行きつけの食堂は、海の近くのドルフィンポートがその時新しくオープンした。20軒以上のレストランが集合しており、よく利用した。
ドルフィンポートの食堂で食事した後は、桜島行きのフェリーターミナルに行ったり、水族館の外周を歩いたり、水族館の前の水路に5~6匹のマンボウの放し飼いを眺めたりして、事務所に戻ると1時になっていた。
鹿児島では昼食にラーメンもよく食べた。山形屋デパートの1号館と2号館の間にラーメン屋があり美味しかった。当時のラーメン屋では、ラーメンが出される前にお通しが置いてあり、それを食べながらラーメンを待つことになる。食後の散歩は中央公園が多かった。事務所からは1時間県内では、一番遠い位置にあるので、散歩も急ぎ足になる。
年1回の健康診断では、コレステロール、糖尿病等の数値が、基準値をオーバーし始めたので、勤務時間中の12時からの1時間を食事と散歩に使うことにした。
こうして食後の散歩が習慣になり、土日は、平日より長距離の城山観光ホテル、鶴丸城、南州翁終焉の地、南州神社等を歩いた。
おかげ様で、食後の散歩と、土日の散歩の効果があり、翌年の健康診断では基準値オーバーがなくなっていた。散歩の習慣は、この鹿児島勤務の時から始まり、福岡に戻ってからは、散歩するのに好条件のマンションを終の棲家と決めて現在に至っている。
散歩以外にも鹿児島市内は見るべき箇所が多く、桜島、仙厳園、城山展望台等沢山あるが、何と言っても桜島が一番だと思う。鹿児島フェリーターミナルから連絡船が1時間に3本でており、鹿児島市と桜島をわずか15分で結んでいる。
桜島観光で印象に残った場所は、フェリー乗り場の反対側にある黒神埋没鳥居である。1914年の大噴火で、3mあった鳥居が上部だけを残して埋没している。当時の村長はこの災害の痕跡を掘り起こすことなく、後世に残そうとして、今でも埋没したままだ。
桜島の噴火は、転勤者にとって大変迷惑な問題である。降灰によって、掃除に苦しい思いをする。しかし、私の在任中の4年間はほとんど降灰による影響が少なかった。噴火も回数が少なかったのか、噴火しても風向きで助けられたケースがあったと思う。
鹿児島市内から県内に地域を広げると、霧島温泉卿、砂蒸し温泉で有名な指宿温泉、南九州市の知覧特攻会館、同じく南九州市の吹上浜砂の祭典等が有名である。
「吹上浜砂の祭典」は日本で最も長い歴史を持つ「砂のイベント」である。5月3日~5日に開催され、ピークには15万人の入場者が来場し賑わった。
大隅半島の方での人気NO1は鹿屋バラ園。大隅屈指のアミューズメントスポット、約8haの敷地にバラが咲き、日本最大級のバラ園である。春、秋のシーズンには期間中4万人の来園者で賑わっている。
鹿児島での最後の4年間は、時間的にも余裕ができて、県内の観光地をゆっくり回る事が出来て、楽しく思い出される。