これなんやろか (第5回)ニガナの周辺

      2023/02/20

正解は、ウスベニニガナでした。

 

「ニガナ」という名前の
ついた植物の周辺をさぐってみました。

 「◯◯ニガナ」という名の植物がいくつかあります。いずれもキク科の植物で、ほとんどが黄色の花をつけますが、ウスベニニガナの花は赤紫色をしています。

 小田 紘

 

 

 ウスベニニガナ1、2、3、4/撮影:2022年10月

 道ばたのいたるところで見られる、極めてありふれた植物ですが、なぜか手元の図鑑には見当たりません。長いあいだ名前が分からず気になっていましたが、例の Googleレンズの助けを借りて、やっと「ウスベニニガナ」という名前にたどり着きました。

 草丈は50 cmくらいありますが、茎は細くて弱々しく、いつもフラフラと風に揺れています。茎の先は2~5本に別れ、それぞれの先端に鉛筆の頭ほどの小さな花がついています。全体をパッと見たときにはそれほど綺麗だという印象は受けないのですが、クローズアップしてじっくり見ると実に美しく魅力的な花だと分かります。
 茎の先端についている花(頭花)は、直径 1 mm、長さ 9 mmくらいの細長い筒状の花(筒状花)が数十本束ねられた構造をしています。最終的には冠毛(いわゆる綿毛)が形成されて種子が舞い散ります。

 ところで、この花に何故「ニガナ」という名がついているのか分かりません。キク科という点だけは共通していますが、それ以外はどこをとっても他のニガナとは異質です。ひょっとして咬んだら苦いのかも・・・。ためしてみる熱意と勇気はありません。そのあたりが私の限界。

 

 ニガナ1/撮影:2022年4月

 キク科ニガナ属、本家本元のニガナです。花自体は直径1.5 cmくらいの小さなものですが、5枚の花弁(舌状花)とあざやかな黄色が結構目立ちます。茎を切ると苦い乳液が出てくるのが名前の由来だそうです。私はまだ苦味を確認したことがありません。

 

 イワニガナ1、2/撮影:2021年3月

 前述のニガナと違って、10~30枚の花弁からなっています。岩の上にも生えるところから岩ニガナの名前がついたとのことです。茎は横向きに広がりながら途中で根を出して、地面を縛り付けるように見えるところからジシバリという別名もあります。直径は 2~2.5 cm くらい。

 上から順にオニタビラコ1/撮影:2021年3月
      オニタビラコ2/撮影:2011年4月
      オニタビラコ3/撮影:2005年5月

 「ニガナ」という名前はついていませんが、花の形はイワニガナとそっくりです。しかし直径は 8 mmくらいとたいへん小さく、葉っぱの形がかなり違っていて、タンポポの葉に似たロゼットを形成しています。タビラコ(田平子)という名は、ロゼット状の葉っぱが田んぼに平らに張りつく様子からきているとのことです。オニタビラコの「鬼」は「大きい」の意で、タビラコの大柄バージョンというわけです。ちなみに「タビラコ」は春の七草の一つであるホトケノザのことだそうです。キク科の植物に特有の冠毛が綺麗です。

 「ニガナ」からの連想:ほどよい苦味は大人の味として好ましいものですが、「苦さ」は様々な感情表現に使われ、日本語に奥深さをもたらしているように思います。

 

 

 

 - コラムの広場