これなんやろか 第1回 道ばたの草むらで その1
2022/10/02
新シリーズ「これ なんやろか」始めました。
私は花が好きですが名前はあまり知りません。ただ,足もとに小さな花をみつけてハッとすることがあります。「これ なんやろか?」と。そんな時、まずは写真を撮り、それから名前や生態、エピソードなどを調べにかかります。それが私流です。
このシリーズではそんな体験をいくつか紹介したいと思います。順不同です。
小田 紘
その昔、大学の研究室に居たころ、山菜に詳しい同僚が小さなラッキョウのようなものをタッパに詰めて持ってきました。味噌をつけて食べるとおつな味わい。これが「ノビル」との初めての出会いでした。山に行って採ってきたとのことです。以来、ノビルというものは山に行って採ってくるものだと思っていました。
それから15年、今年の5月に近所を散歩中、道ばたの草むらで上図のようなものを見かけました。図鑑などを調べてみると、なんとこれはノビルの花と果実であることが判明。このとき、ノビルは山だけではなく、しばしば田んぼのあぜ道などに自生していることを知ったのですが、こんな街中にもあったのかと驚きました。なにせそこは大通リのバス停脇、歩道の端の小さな草むらだったのです。その後、気をつけてみていると身近に結構たくさん見つかることが分かり、なぜか嬉しい気分になりました。
ところでタイトル画面の写真は意外にも2009年5月に撮影していたものでした。その時はきっと「これなんやろか?」と思って撮ったのでしょうが、その後は取り調べをすることもなく放置したままになっていたものです。今回の企画で再発見され、やっと正体が明らかになりました。
これまでに何度も目にしてきたはずなのに、なぜかその存在を意識したことのなかった花。それがこの「マンテマ」という小さな植物です。ほかの草に紛れてひっそりと咲いています。初めてその存在に気づいたとき、花の形や細長い楕円状の萼部分、それに太くて長い毛がたくさんあることに興味を惹かれました。近寄ってじっくり観察すると実に可憐な花です。
これまで気づかなかったのは花が小さく、あざやかな色を放つ期間が短いためかもしれません。花径は7~10mmくらいです。江戸時代末期に観賞用としてヨーロッパから渡来し、のちに野生化した植物とのことです。
それにしても「マンテマ」とは聞き慣れない語感です。名前の由来を知りたいと思ったのですが納得できる説明が見つかりません。この花が渡来した当時,ヨーロッパでの呼び名が「マンテマン」であったからという説が有力のようです。
星形の花びらがピッとうしろに向かって反り返っている姿に惹かれました。花径が7mm程度の小さな花です。この花も道ばたの草むらに紛れ込んで目立つことなく咲いています。あまり気づかれることがないのが不思議なくらい格好良くて美しい花だと思います。花のサイズに比べると大きめの真っ黒な果実をつけます。この写真では美しい光沢がありますが、これはむしろ例外のようで、つやのないものの方が多いとのことです。
このように見た目には美しい植物ですが、花や葉っぱや果実など、全体に強力な毒を持っているというから驚きです。
道ばたの草むらにはまだまだいろいろな発見がありそうです・・・
※編集部注:小田博士の近影をいろいろ想像するメールを差し上げたところ、講義の配布資料などに使用されている自画像をご提供いただきました。真ん中わけのヘアスタイルがきまってますね! ありがとうございました。